米バイデン大統領が今週、早ければ水曜日にでも暗号資産(仮想通貨)に関する大統領令に署名する見込みであることがわかった。8日、AP通信など複数のメディアが報じた。暗号資産取引を規制するための歴史的第一歩となる。

米バイデン大統領、今週中にも暗号資産に関する大統領令に署名へ
(画像=月刊暗号資産)

米政府関係者によれば、暗号資産に関する大統領令は今週中に出される見込みだ。ホワイトハウスは昨年、ランサムウェアやその他のサイバー犯罪の増大に対処するために、大統領令を含んだ暗号資産市場の広範な監視を検討していると発表していた。

現在、米国をはじめ各国政府は、ロシアがウクライナ侵攻に対する経済制裁措置の影響を回避するために、暗号資産を使用している可能性があるとして、懸念を示していた。

日欧米などによる一連の制裁措置により、ルーブルの価格は急落。さらにロシア株式市場は未だ閉鎖状態だ。関係者筋の話によれば、ロシアの官僚エリートはこうした状況を受け、暗号資産を利用している可能性があるという。

バイデン大統領による大統領令の発表は、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化以前からの動きだ。しかし、ロシアに対する経済制裁を強める狙いから、大統領令の発表を急ぐ形となる。

同大統領令には、財務省を含む各政府機関が暗号資産に関する政策、規制を策定するために必要なことが記されている。国務省については米国の暗号資産に関する法律が、同盟各国の法律に違反をしていないか確認するよう要請し、米国の金融システムの安定性を監視している金融安定監視評議会には、不正金融取引に関する調査を依頼することが含まれている。

バイデン大統領の大統領令は、「中央銀行デジタル通貨(CBDC=デジタルドル)の創設に向けた一歩となる可能性が高い」と関係者は述べているという。バイデン政権では暗号資産が持つ大きな勢い、時代の流れを重要と見ている。そのためには新しい法律が必要かどうかを検討する必要がある。また、連邦取引委員会や消費者金融保護委員会などの機関が、消費者への影響はどれくらいあるのかを調査することになっている。

その他、暗号資産が企業間、国際間の競争力に与える影響や、そのために必要とされる市場やテクノロジー、インフラ、ビットコインのマイニング(採掘)による環境などへの影響など、広範な調査も令に含まれるだろうと関係者は述べているという。

昨年、イエレン財務長官は、暗号資産の悪用など、デジタル市場によるリスクの増加について警告した。一方で、新しい金融テクノロジーは、犯罪対策などにも役立つだろうとも述べた。

長引くロシア・ウクライナ紛争のなかで、暗号資産に関する調査は急を要している。その上で、今回の大統領令では、暗号資産に関する懸念を示す記述が含まれる可能性も十分考えられる。(提供:月刊暗号資産