この記事は2022年5月12日に「月刊暗号資産」で公開された「ビットコインやアルトコイン急落 LUNAは前週比99%のマイナスに」を一部編集し、転載したものです。
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)は11日、前日比約12%下落。2万7,000ドル(約348万円)を割り、2021年1月以来の安値となった。
アルトコインにおいても、イーサリアム(ETH)の前日比約23%のマイナスをはじめ、主要銘柄が軒並み20〜40%の暴落を見せるなど、暗号資産市場ではパニック売りがみられている。
11日には米株式市場も大幅下落。S&P500種株価指数は前日比1.7%安の3,935.18で終わり、ダウ工業30種平均は1.0%安の3,1834.11ドルで終え、ナスダック総合指数は3.2%の下落となった。
同日発表された米消費者物価指数(CPI)において、インフレが止まらない可能性が出てきたことで、投資家心理が悪化した。金融当局が今後、引き締めを強化することで、リセッション(景気後退)リスクが高まるという懸念も高まった格好だ。
連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は0.5%からの利上げを「現段階では検討していない」としているが、インフレ動向によっては次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が大きくなるとの懸念が浮上している。
こうした情勢を踏まえ、多くの機関投資家、個人投資家はリスクを回避するために株式市場、先物市場、暗号資産市場から一旦退く可能性も考えられる。
暗号資産市場における急落は金融引き締めも影響していると考えられるが、ステーブルコイン・Terra USD(UST)の急落が引き金となったとの見方もある。
USTは記事執筆時点においても0.60ドル(約78円)を推移しており、11日には一時0.3ドル(約38円)台まで下落するなど、激しい価格変動が続いている。また、USTの価格維持に必要不可欠なテラ(LUNA)の価格も連日90%以上の下落を見せており、記事執筆時点でも前日比95%マイナスの25円まで暴落している。
LUNAは今月5日には1万1,000円台を推移しており、時価総額においても8位に位置していた。それだけに、これほどまでの下落は暗号資産市場に大きな衝撃を与えたと言える。
USTの急落はすでに米国の議会をも動かしている。ジャネット・イエレン(Janet Yellen)米財務長官は10日、USTの下落を念頭にステーブルコイン関連規制を2022年末までに法制化するべきとの認識を示した。今後、規制当局を中心に、ステーブルコインを巡る議論が急速に進む可能性がある。
なお、記事執筆時点では時価総額3位に位置するステーブルコイン・テザー(USDT)においても価格の乖離が見られた。現時点で原因は判明していないものの、0.95ドル(約122円)で推移している。
世界的なインフレ動向や金融引き締め、さらには中国の景気後退やロシア・ウクライナ問題など、現状の金融市場は多くのネガティブ要因を抱えている。暗号資産市場においても当面の間非常に不安定な価格推移を見せることが予想されるため、動向を注視しながら取引等をする必要があるだろう。(提供:月刊暗号資産)