トヨタ・ノアHV・S-Z(7名乗り・FF) 価格:THS 367万円 試乗記
新型はプラットフォームから一新。ノアヴォク2台で月販基準1万3,500台を誇る
新型はすべてを一新した新世代である。まず、車種体系が整理された、ノアはエアロ系と標準系、ヴォクシーはエアロ系のみとされ、エスクァイアは廃止となった。これは2020年5月からディーラーごとの専売制から全車種併売とされた販売システムに対応した変更である。ノアとヴォクシーは、従来以上に個別のキャラクターを鮮明にしている。
これまで歴代の販売台数は、一貫してヴォクシーのほうが多かった。しかし、新型の月販基準台数は、ノアが8,100台、ヴォクシーは5,400台。今後はノアが主力モデルとなる。
車体にはトヨタ最新モデルらしく、TNGAの要素を取り入れたGA-Cプラットフォームが採用された。パワートレーンは、1.8リッターのハイブリッドと2リッターガソリンの 2本立て。ハイブリッドは新世代に進化しており、大幅にパワー&効率を改善。待望の4WD(E-Four)が設定されたのも注目点だ。
走りもさることながら、新型で印象的なのは、使い勝手の大幅な進化である。知れば知るほど、「ここまで手を加えたのか」と感心せずにいられない。
新型のボディサイズは全長×全幅×全高4,695×1,730×1,895mm(FF)。全車3ナンバーに拡大された。パッケージングは見直され、ボディ骨格の最適化により、左右のCピラー間距離が従来型比で75mmも拡大したというから相当なレベルだ。1,400mmを超える室内高と相まって室内空間は開放感たっぷり。確かに従来型より広く感じる。
レポート車は、ハイブリッドの7名乗り2WD。2列目のキャプテンシートには、クラス初となるオットマン機構とシートヒーターが採用されていた。
シートアレンジは多彩。持ち前の2列目超ロングスライド機構は、旧型ではいったんシートを横にスライドしなければならなかったが、その必要がなくなった。
3列目シートがワンタッチで跳ね上げられるようになった点も本当に便利だ。シート自体の作りも優秀。これほど薄く軽く仕上げていながら、大きな不満を感じない座り心地が確保されている出来栄えに感心した。
収容性も優秀である。荷室の床下に容量104リッターのスペースを用意。高さのある荷物やスーツケースなどを積みたいときに重宝しそうだ。さらに、バックドアを任意の角度で保持できたり、パワーバックドア装着車はスイッチを車体後端の使いやすい位置に配するなど、ユーザーの立場に立った、使いやすさへの工夫は万全である。
後席の乗降性についても、アシストグリップを長くしたほか、パワースライドドア開閉と連動してステップが展開~格納される機構をオプション設定するなど、子供から高齢者まで誰もが乗り降りしやすいよう配慮されている。
運転席に座ると、まず視界のよさが印象的。ピラーやダッシュ回りの形状にもこだわったことがうかがえる。インテリア全体の質感は大幅に引き上げられている。
際立つハイブリッドの完成度。足回りはしっかりとした印象
走りはスムーズで、なかなか力強い。従来型で見受けられた「エンジン回転が先行して加速がなかなかついてこない」感覚がかなり低減されていた。ここまでできるのかと驚くほどの自然な感覚に仕上げられている。
右足の動きに合わせてリニアに応答し、踏み増すとそのとおり遅れなく加速してくれて、街中から気持ちよく走れる。
足回りは適度に引き締まっている。路面への感度がやや高く、乗り心地は意外と硬めで、多少ドラミングが出がちな傾向が見受けられた。そのぶんハンドリングは軽快で、箱型ミニバンにありがちな重心の高い感覚は薄められている。
ステアリングの操舵力は軽く、扱いやすい。適度な手応えがあるので、切りすぎて修正舵が増えるような傾向もない。
今回は車両側の都合で、新型の目玉装備のひとつ、一定条件下でのハンズオフを可能とした「アドバンストドライブ」は試せなかった。ACCの印象は強力なモーターを持つ強みもあって、追従性能はまずまず。ただし、最も車間距離を詰めた設定にしても、やや車間が開きぎみなのと、車線維持機能が「車線上に車輪が乗るところまでいってしまう」ことがたびたびあるのが少し気になった。
注目の新機能では、全操作をクルマ側が行い、さらにスマートフォンでも操作できる駐車および出庫機能が採用(ハイブリッド車)されたことが挙げられる。
価格はずいぶん高くなった印象を受けるが、中身もそれだけ充実している。装備内容やリセールバリューを含めて検討すると、お買い得感は高水準。多少は高くてもいいものがほしい、というユーザーに最適だと思う。間もなくデビューする競合車と比べても割高ではない。
スタイリングについては、「いかつい顔」に賛否が分かれているようだ。個人的にはよくまとまっていると思う。
周到なマーケティングの末に導き出された、「売れる」デザインであることには違いない。
通知表/トヨタ・ノアHV・S-Z(7名乗り・FF) 価格:THS 367万円
総合評価:73点
Final Comment
すべてに進化を実感
抜群の使い勝手。走りも高水準。完成度に感銘
全体においてそつがない。とくに使い勝手は、このクラスのミニバン・ユーザーが望むニーズを細かいところまで考え尽くした印象を受けた。走りについては、ミニバンの弱点をできるだけ感じさせないように仕上げられている。新世代ハイブリッドのリニアなレスポンスも好印象。インフォテインメント系や先進運転支援装備系もトヨタの最新モデルらしく非常に充実している。この内容なら、少々高くなった価格も十分納得できる。
トヨタ・ノア 主要諸元と主要装備
グレード=ハイブリッドS-Z(7名乗り・FF)
価格=THS 367万円
全長×全幅×全高=4,695×1,730×1,895mm
ホイールベース=2,850mm
トレッド=フロント:1,500/リア:1,515mm
車重=1,670kg
エンジン=1,797cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=72kW(98ps)/5,200rpm
最大トルク=142Nm(14.5kgm)/3,600rpm
モーター最高出力=70kW(95ps)
モーター最大トルク=185Nm(18.9kgm)
WLTCモード燃費=23.0km/リッター(燃料タンク容量52リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:22.2/25.0/22.1km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=205/55R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=7名
最小回転半径=5.5m
主要燃費向上対策:ハイブリッドシステム/アイドリングストップ/電気式無段変速機/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング/充電制御
主要装備:トヨタセーフティセンス(プリクラッシュセーフティ+レーントレーシングアシスト+全車速追従レーダークルーズコントロール+オートマチックハイビーム+ロードサインアシスト+ドライバー異常時対応システム+プロアクティブドライビングアシスト+発進遅れ告知機能など)/パーキングサポートブレーキ/バックガイドモニター/リフレクター式LEDヘッドライト/スーパーUVカット機能付きフロントドアグリーンガラス/電動パーキングブレーキ/エアロ専用パーツ/スモークメッキフロントグリル/ステンレスドアベルトモールディング/合成皮革&ファブリックシート/運転席電動調節/本革巻きステアリング/前席快適温熱機能/2列目キャプテンシート(ストレート超ロングスライド+リクライニング+両側アームレスト付き)/オプティトロンメーター+7㌅TFTディスプレイ/スマートエントリーシステム/左右独立温度調節式フロントオートAC+リアオートAC/コネクティッドナビ対応8㌅ディスプレイオーディオ/17インチアルミ/ワンタッチスイッチ付き両側パワースライドドア/ドライブモードセレクト
装着メーカーop:快適利便パッケージ(ハンズフリーデュアルパワースライドドア+パワーバックドア+ナノイーX+ステアリングヒーター+キャプテンシート追加機能)14万8,500円/ドライビングサポートパッケージ(ヘッドアップディスプレイ+デジタルインナーミラー)9万9,000円/10.5インチディスプレイオーディオPlus(ETC2.0ユニット付き)19万300円/トヨタセーフティセンス緊急時操舵支援+フロントクロストラフィックアラート+レーンチェンジアシスト+ブラインドスポットモニター+安心降車アシスト+パーキングサポートブレーキ(後方接近車両)+トヨタチームメイト・アドバンストドライブ(渋滞時支援)13万4,200円/トヨタチームメイト・アドバンストパーク+パーキングサポートブレーキ(周囲静止物&後方歩行者)+パノラミックビューモニター12万6,500円/プロジェクター式LEDヘッドライト+アダプティブハイビーム6万2,700円/デジタルキー1万6,500円
ボディカラー:レッドマイカメタリック
(提供:CAR and DRIVER)