この記事は2022年8月18日に「月刊暗号資産」で公開された「米内国歳入庁、暗号資産の課税強化に対する姿勢鮮明 職員8万7000人増員へ 」を一部編集し、転載したものです。
米国の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)は15日、カリフォルニア州中部地区オーティス・D・ライト(Otis D. Write II)判事が暗号資産プライムディーラーSFOXに「ジョン・ドゥ(John Doe)召喚状」を送達することを許可する命令を下したと発表した。
ジョン・ドゥ召喚状とは、米国政府が脱税者を捕まえるために発動する執行手段だ。IRSはこの判断を受けるために訴訟を起こしていた。
発表によると、ライト判事はSFOXに顧客の身元と2016年から2021年の間に行われた最低2万ドル(約270万円)相当の暗号資産取引に関する文書を明らかにするよう指示した。IRSはニューヨーク南部地区でもSFOXに対して訴訟を起こし、ジョン・ドゥ召喚状が送達されている。
司法省税務局のデビッド・A・ハバート(David A Hubbert)副司法長官はIRSの公表した声明で「暗号資産取引の投資家は、取引による収入と利益が課税対象であることを理解しなければならない」と述べている。
IRSは暗号資産取引の脱税問題を重要視し、課税を強化すると共に取り締まりを強化する。Wall Street Journal(WSJ)が16日に報じたところによると、この問題を解決するため、同日に成立した「インフレ抑制法」により今後10年間で800億ドル(約10兆8,000億円)の追加予算が割り当てられることになるという。追加予算は現在の年間予算126億ドル(約1兆7,000億円)の6倍以上になる。
IRSは追加された予算を、税務執行の強化、業務改善、納税者向けサービス、システムの最新化に充てるという。報道によれば、IRSは職員を8万7,000人増員する予定とのことだ。
暗号資産の課税強化のため、新法には「デジタル資産の監視をコンプライアンス活動」を進めるという記述がある。監視や徴収に加え、さらに厳しい措置が取られる可能性がある。暗号資産投資家の実態を把握するまで追跡し続けることに注力する。
Bloombergはバークレイズが5月に発表した分析を引用し、暗号資産取引について、徴収する税額が全体の半分が未払いだと報じている。IRSは脱税者を発見することに全力を尽くす方針を示している。
また、IRS確定申告の書式を変更する予定のようだ。2021年版の書式においても暗号資産に関する質問事項はあったが、簡易的なものであった。2022年版の草案では、「2022年内にデジタル資産(あるいはデジタル資産に対する利権)を、(a)報酬、賞金、対価として受け取る、(b)売却、交換、贈与、あるいは処分したか」という質問に強化した。
この変更で対象者は拡大し、IRSは今後、暗号資産に関する監査、取引や保有者の監視を強化するほか、コンプライアンス全体に対してより大きな予算を割く可能性がある。(提供:月刊暗号資産)