この記事は2022年9月5日に「月刊暗号資産」で公開された「BIS、「暗号資産の技術を活用した通貨システムの構築が必要」と言及」を一部編集し、転載したものです。
国際通貨基金(IMF)は3日、季刊誌「Finance & Development」において「信頼の基盤(A FOUNDATION OF TRUST)」と題したレポートを公表した。
その中で、中央銀行が今後「暗号資産(仮想通貨)の技術を活用した通貨システムを構築する必要がある」との主張が示された。
このレポートは国際決済銀行(BIS)のゼネラル・マネージャーであるアグスティン・カルステンス(Agustín Carstens)氏のほか、同行の要職2名が参加し執筆した。
レポートでは、暗号資産の成長が目覚ましいものであると触れた上で、自動決済を行うスマートコントラクトやトークン化などの機能に着目した。
一方で、これらの技術を評価したものの、暗号資産そのものについては「構造に欠陥がある」と述べている。
カルステンス氏は社会に貢献する通貨システムの要件として、「安全かつ安定」であることや、「効率的で包括的である点」、そして「国際的な経済統合を支えるために国境を越えて開かれたシステム」などを挙げているが、暗号資産については通貨でないことに加え、ステーブルコインに依存していると指摘する。ステーブルコインについて同氏は、「銀行から信用を『借りよう』としているもの」と説明し、中央銀行が発行する貨幣が必要不可欠であることを示していると述べた。
また、暗号資産は「断片化をもたらす」とも主張した。暗号資産の非中央集権的な性質は、取引を検証する匿名の検証者へのインセンティブに依存しているとし、これが輻輳を引き起こしてネットワークのスケーラビリティを阻害していると述べる。例としてイーサリアムを挙げ、ユーザーは他のブロックチェーンに移動するため、DeFi(分散型金融)は断片的なものになりつつあると指摘した。
さらに、暗号資産は規制が進んでいない分野だとし、「参加者は社会に対して説明責任を負っていない」と説明。その上で、「詐欺や盗難は市場の整合性に対して深刻な懸念を提起している」と続けている。
こうした現状を踏まえ、カルステンス氏らは暗号資産の技術を活用し、中央銀行が信頼性を担保するべきだと主張した。具体的には、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が公益のための革新技術として支える豊かで多様な通貨エコシステムになるだろうと述べている。
カルステンス氏は「暗号資産は我々にイノベーションの可能性を示した」と評価しており、その上でCBDCの有用性、そして「デジタル技術は通貨制度に明るい未来を約束するものだ」と語った。(提供:月刊暗号資産)