まさに、レオパレスの経営状況は土俵際でした。サブリース契約のトラブルや施工不良の問題で社会的信用を失ったレオパレスは、3期連続で赤字を計上するに至りました。
「倒産秒読み」の声も聞かれましたが、2022年3月期には一転、最終黒字を達成したのです。レオパレスの最終黒字の原動力は何か、この復活は本物かを考えます。
適切な判断ができていないことかもしれません。知識をいくら増やしても、判断を誤れば成果は出せません。ここでは投資の判断力を高めるのに役立つ5つの法則をご紹介します。
倒産秒読みと言われたレオパレスが一転、最終黒字に
レオパレス問題の発端は、テレビ東京『ガイアの夜明け』による告発でした。2017年〜2019年の間に計4回の放映でサブリース契約のトラブルや施工不良を指摘したのです。
その後、膨大な数の施工不良物件が発覚しました。2022年5月末時点で「明らかな不備棟数」は1万2,381棟に達します。この施工不良が明らかになる中、80%台、90%台だったレオパレスの管理物件の平均入居率は70%台まで大きく低下し、膨大な修繕費用を計上しました。
その結果、レオパレスは3期連続で赤字に陥り、2023年3月期までに経営が改善しなければ、東証の上場廃止基準にふれてしまう状況にまで追い込まれました。そして、タイムリミットの約1年前である2022年3月、レオパレスの厳しい経営状況が報じられたのです。
(出典:日本経済新聞 電子版2022年3月29日付)
しかし、この約2ヶ月後、一転して最終黒字となることが報じられました。
(出典:日本経済新聞 電子版2022年5月16日付)
これをサプライズと感じた投資家も多かったのでしょう。レオパレスの株価は噴きました。下記がその時のチャートです。
経常利益で赤字だった2022年3月期が最終黒字で着地した理由
ここまでの内容を見て「あれ?レオパレスの2022年3月期の経常利益は赤字だったのでは?」と感じた人もいるかもしれません。実は、レオパレスの2022年3月期の決算を見ると、経常利益で21億5,100万円の赤字と報告されています。
それが最終黒字になった理由は、親会社株主に帰属する当期純利益で見ると118億5,400万円の最終黒字となるからです。レオパレスは「工事単価の低減および不備判定の見直し、解体による改修対象の減少に伴い」親会社株主に帰属する当期純利益で黒字を果たすことができたと解説しています。
この条件付黒字が真の復活かどうかについては賛否両論あるかもしれませんが、レオパレスの倒産リスクが軽減したことは確かでしょう。
これを踏まえて本稿の後半では、次の2つのテーマについて考察していきたいと思います。
・レオパレスの復活は本物か?倒産を本当に回避できるか?
レオパレスの倒産リスク軽減の原動力はなにか?
レオパレスの2022年3月期決算が最終黒字となった理由は、コスト削減を限られた期間で実現できたからでしょう。
まず、売上を見てみると、前年に比べて約106億円減少しました。その中身を見てみると、建築請負売上の減少が大きく響いていることが分かります。
一方、コストに注目してみると、前年に4,381億円だった原価・販管費を3,965億円まで圧縮、415億円を削減しています。この大幅なコスト削減は「業務セントラル化」と「コールセンター外注化」の2本柱で進められました。
取組テーマ | 施策 |
---|---|
業務セントラル化 | ・契約事務処理を各支店から首都圏の拠点に集約 ・人員配置と業務の効率化を図る ・非正規雇用の割合を高める など |
コールセンター外注化 | ・24時間365日体制を維持しつつ最小人員で運営 ・一部時間帯で外注化を実施 など |
レオパレスの復活は本物か?倒産を本当に回避できるか?
前項でお伝えしたように、コストの大幅削減によって、レオパレスは4期ぶりの最終黒字を達成。倒産リスクは軽減したかのように見えます。このレオパレスの復活は本物なのでしょうか。
レオパレスの売上や利益の源泉は、賃貸事業です。同社の売上約4,090億円 (2022年3月期)のうち、3,920億円を賃貸事業が占めています。この賃貸事業は、単身者向けアパートのサブリース事業、それに伴う物件管理、物件建築請負などから構成されます。
そして、この賃貸事業を判断する分かりやすい指標が管理物件の平均入居率です。では、具体的にどれくらいの平均入居率になれば、倒産リスクが軽減されるのでしょうか。この点について、宮尾文也社長は日本経済新聞の取材に対し、「自力で債務超過を解消するための平均入居率は85%」と述べています。
これに対して、2022年3月期のレオパレスの平均入居率は 81.24%でした。債務超過を解消するための目安である85%には3.76%足りなかったことになります。つまり、平均入居率で見ると、レオパレスの倒産リスクは完全に払拭されたとは言い切れないことになります。
ただ次期の目標として、2023年3月期の平均入居率85.05%が掲げられています。この目標を達成できれば、レオパレスの倒産リスクは遠のいたと言えるのかもしれません。
レオパレスの平均入居率アップの3つの秘策
とはいえ、いったん低下した入居率を回復させるのは容易ではありません。レオパレスがどのような戦略で平均入居率85%超を達成しようとしているのかを確認しましょう。
1.法人契約(社宅)の営業強化
レオパレスはもともと法人契約(単身者の社宅)に強みを持つ会社です。上場企業の約80%がレオパレスを利用し、契約戸数の半分以上を法人契約が占めています。この稼ぎ頭の法人契約を伸ばすことで、平均入居率を上げるという戦略を描いています。
レオパレスでは、2023年3月期に法人契約の増加を実現するため、以下の施策を進めるとしています。
・営業本部を増やして行動量を増やす
・特定5業種を中心に営業をかける
・特定技能人材の利用増加を図る
上記に補足すると、特定5業種とは、派遣・建設・運輸・飲食・流通の業種のことです。また、特定技能人材とは人手不足が深刻な分野で、外国人労働者を受け入れていくものです。
2.外国人契約の営業強化
レオパレスの平均入居率アップのための戦略には、留学生の利用増加を狙うものもあります。
レオパレスには、外国人契約の比率が高いという特徴もあります。同社の外国籍の契約戸数は約 3 万3000戸(個人契約と法人契約の合計)で、契約戸数全体の約7%を占めています。
先ほどの法人契約と合わせて考えると、強みのある分野に営業力を集中させるのがレオパレス復活のシナリオだということが見えてきます。
上記のグラフを見るとわかるように、コロナ感染が国内で本格的に広まった2020年春以降、レオパレスの外国人契約者は減少傾向です。今後、入国制限が緩和されていけば、増加に転じることも考えられます。
レオパレスでは、2023年3月期に外国人契約の増加を実現するため、以下の施策を進めるとしています。
・仲介業者や留学センターとの関係を強化
上記に補足すると、IFCとはInternational front centerの略で、外国人向けのレオパレスの店舗のことです。外国籍のスタッフが多数在籍し、外国人が相談・契約しやすい特徴があります。
3.契約のDX化、管理物件のスマート化
ここまで紹介してきたレオパレスの入居率アップの2つの施策は、いずれも得意分野を強化する内容でした。これに加えて同社では、入居率アップにつながりそうな新たな取り組みも進めています 。
例えば、部屋探しから(内見や面談含む)契約手続きまでをネット上で完結できるWeb契約に力を入れたり、スマホやICカードなどで部屋の鍵の施錠・解錠ができるスマートロックを取り入れたりすることを発表しています。
Web契約では累計40,000契約を突破(2023年5月時点)、スマートロックは2022年6月以降に管理物件の約8割にあたる約44万戸に導入予定とのことです。
レオパレスの倒産回避を阻むリスクとは?
レオパレスの入居率アップの施策は、実現の可能性を感じさせるものでした。一方で、レオパレス復活を阻むリスクも考えられます。
1つ目は新たなパンデミックのリスクです。パンデミックを引き起こすウイルスの一例として、コロナウイルスの新種、ニパウイルス、サル痘ウイルスなどが挙げられます。ウイルスの驚異が世界中に広がり、外国人入国者を再び制限することになれば、外国人労働者や留学生の契約増を狙うレオパレスには逆風となります。
2つ目のリスク要因は、未だ完了することのない施工不良問題です。2022年3月期の決算資料では、今後改修を必要とする戸数は38,000戸と見込むと報告しています。この改修が遅々として進まなかったり、新たな不備が発生したりすると、再び信用毀損が起こりかねません。
レオパレスの株や物件への投資を検討している人は、このリスクを意識しつつ、慎重に判断することをおすすめします。
(提供:Dear Reicious Online)
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