ウイスキー投資は、株式などの金融投資とは別の新たな投資対象として注目されています。ウイスキーの中には価値が数倍~数十倍に伸びる銘柄もあり、イギリスで「ザ・マッカラン(60年モノ)」が150万ポンド(2億円以上)で落札されたことが、2019年に話題となりました。

では、ウイスキー投資市場は今後も順調に伸びていくのでしょうか。今回は過去の市場データも参考にして、ウイスキー投資の今後について解説します。

目次

  1. ウイスキー投資ではなぜ銘柄が値上がりするのか?
  2. ウイスキー市場は今後どうなる?利回りや成長率から予測
  3. ジャパニーズウイスキーも投資対象として魅力
  4. ウイスキー投資の環境変化
  5. ウイスキーはどの国の銘柄がおすすめ?
  6. ウイスキー投資は手軽に始められる資産運用

ウイスキー投資ではなぜ銘柄が値上がりするのか?

ウイスキー投資は今後どうなるのか? 過去・現在の市場から分析
(画像=blende11.photo/stock.adobe.com)

ウイスキー投資とは、購入したウイスキーを数年~数十年かけて保管し、価値が高騰してから売却する投資手法です。基本的には希少価値のあるヴィンテージウイスキーが投資対象であり、なかには価値が数十倍に伸びるような銘柄もあります。

ヴィンテージウイスキーが値上がりする理由は、世界中の愛好家から需要がある点や製造にかかる時間の長さが挙げられます。特に「シングルカスク(※)」と呼ばれるウイスキーは、需要に対して流通量が極端に少ないため、高値で取引されている銘柄が多い傾向にあります。

(※)ひとつの樽で熟成された原酒のみをボトリングしたもの。

ウイスキー市場は今後どうなる?利回りや成長率から予測

ウイスキー投資が注目されている中で、世界のウイスキー市場がどのように変化しているのか、ここからは利回りや成長率を見ていきましょう。

上のグラフは、「RARE WHISKY 101」が公表しているシングルモルトウイスキーの相場動向です(※世界で人気のある1,000本を対象にした指数)。シングルモルトウイスキー市場は、直近10年では右肩上がりに市場が拡大しており、2012~2022年にかけて6倍以上になっています。

次に紹介するのは、「AMR(Art Market Research)」による他の金融資産との比較データです。

ワインや自動車の成長率(10年間)も100%を超えていますが、その中でもウイスキー(Rare Whisky)は428%の成長率を記録しました。これらのデータから、ウイスキーは嗜好品としてだけではなく、世界中から投資対象として注目されていることが分かります。

シングルモルトウイスキーの実質利回りは8%程度

上記で紹介したシングルモルトウイスキーとは、ひとつの蒸留所で大麦麦芽からつくられた銘柄のことです。各蒸留所のこだわりが色濃く見られることから、シングルモルトウイスキーは個性を楽しめるお酒として人気があります。

では、投資対象としてはどのような魅力があるのか、利回りに関するデータを見てみましょう。

上のグラフは、「WHISKY INVEST DIRECT」によるデータです。シングルモルトウイスキーは熟成期間が長いほど高騰しやすく、6年を過ぎると価値の伸び幅も大きくなることが分かります。

また、同調査では8年間熟成させたウイスキーの利回りも公開されています(2006年〜2015年)。実際には保管コストやインフレの影響を受けますが、その実質的な利回りは年間8.4%ほど。もし1本100万円のウイスキーを保管した場合、10年後には2倍以上の価値(約224万円)になる計算です。

国内株の配当利回りが2.0%程度(※)であることを考えると、シングルモルトウイスキーは十分に魅力的な投資対象といえるでしょう。

(※)2021年6月末時点での東証一部全体のデータ。

スコッチウイスキーの蒸留所は年間10%以上の平均成長率

世界的なウイスキーとしては、スコットランドで製造・熟成されるスコッチウイスキーも有名です。次は、国内最大級のウイスキー情報総合サイト「Dear WHISKY」による各蒸留所の平均成長率のデータ(※リターン率を数値化したもの)を紹介しましょう。

最近では世界的にスコッチウイスキーが注目されており、スコットランド全域における蒸留所の平均成長率は12%を超えています(2019年~2020年)。これはあくまで平均値なので、希少価値の高い人気銘柄ではさらに高いリターン率を期待できるでしょう。

ジャパニーズウイスキーも投資対象として魅力

ウイスキーと聞くと、多くの方は海外の蒸留所をイメージするかもしれません。しかし、近年では日本産のジャパニーズウイスキーも投資対象として注目されています。

上のグラフは、「RARE WHISKY 101」によるジャパニーズウイスキーの相場動向を表したものです(※日本を代表する100銘柄を対象にした指数)。2015年頃から徐々に価値が伸びており、直近5年間(2017年~2022年)では約3.5倍に上昇しています。

ウイスキー投資ではどのような銘柄が注目されているのか、ここからはいくつかの事例を紹介します。

サントリー「山崎」

シングルモルトウイスキー 山崎

シングルモルトウイスキーの山崎は、サントリーが山崎蒸留所(大阪府)で製造している銘柄です。「山崎12年」や「山崎25年」などさまざまな年代物があり、特に熟成期間が長いものは数十倍の値がつくこともあります。

銘柄定価現在の価値
山崎12年1万円2~3万円
山崎18年3万2,000円13~17万円
山崎25年16万円150~200万円
(※現在の価値は、2022年9月時点でのネットショップにおける相場)

熟成期間の長い「山崎55年」は、香港のオークションで620万香港ドル(約8,500万円)で落札されたことが話題となりました。

ニッカ「竹鶴」

ウイスキー投資

ニッカウヰスキーが製造する竹鶴も、海外から注目されているジャパニーズウイスキーです。複数の原酒を混ぜて製造されているピュアモルトウイスキーであり、「竹鶴12年」や「竹鶴17年」などの年代物があります。

銘柄定価現在の価値
竹鶴12年2,000円2~3万円
竹鶴17年7,000円4~6万円
竹鶴25年7万円30~35万円
(※現在の価値は、2022年9月時点でのネットショップにおける相場)

特に評価が高いのは、熟成によって濃厚さが増した「竹鶴25年」です。味と香りのバランスに優れた年代物なので、お酒好きの人は趣味としても堪能できるでしょう。

ウイスキー投資の環境変化

ウイスキー投資は市場規模が拡大しているだけでなく、投資環境も変化してきています。効率的に投資を始めるためにも、近年のウイスキー投資についての基礎知識を押さえておきましょう。

投資用のプラットフォームが整備されている

ウイスキーを購入して長期熟成させる場合、個人では設備費や光熱費、人件費などのコストが投資の障害になります。管理面でも手間がかかるため、ウイスキー投資は難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。

そのような人には、ウイスキー投資用のプラットフォーム利用がおすすめです。最近ではウイスキーの仕入れから管理までを一任できる、便利なプラットフォームがいくつか誕生しています。

手数料はかかりますが、ウイスキー投資の手間を大きく削減できるサービスなので、これを機に情報収集をしてみましょう。

カスク投資のサービスが増えてきている

カスク投資専用のサービスが増えている点も、ウイスキー投資初心者が押さえておきたいポイントです。

カスク投資とは、すでに瓶詰めされたボトルウイスキーではなく、樽(カスク)から購入する手法のことです。熟成が浅いうちに購入する手法なので、長期間保管することで大きなリターンを狙えます。

主な違いカスク投資ボトル投資
購入単位カスク(樽)ボトル(瓶)
対象銘柄主にスコッチウイスキーほぼ全てのウイスキー
管理自身で管理(※サービスを利用する場合は一任できる)イギリスの倉庫に一任できる
換金しやすさ銘柄によっては難しい容易
リターン

投資対象は限られますが、カスク投資の対象になるスコッチウイスキーは市場規模が拡大しています。手軽に投資できる環境が整ってきているので、効率的なリターンを求めている人はカスク投資から検討してみましょう。

ウイスキーファンドへの投資も選択肢

ウイスキーファンドは、ウイスキーを対象にした投資信託のことです。簡単に言えば、資産運用のプロが代わりに投資を行ってくれる商品なので、銘柄選定や現物保管などのさまざまな手間を省いてウイスキー投資を始められます。

○ウイスキーファンドに投資をするメリット
・投資先を自分で選ぶ必要がない
・個別銘柄の情報収集や分析が不要になる
・過去のパフォーマンスを見ながら投資判断ができる

例えば、イギリスで設立された「WHISKY INVEST DIRECT」は、スコッチウイスキーを対象にしたファンドを運営しています。最短保管期間はなく、24時間取引や即時決済にも対応しているため、目的や状況に合わせて投資スタイルを変えられます。

ファンドの種類は多くありませんが、手間をかけたくない人はウイスキーファンドへの投資も考えてみましょう。

ウイスキーはどの国の銘柄がおすすめ?

ウイスキー投資を手軽に始めたい人には、ジャパニーズウイスキーがおすすめです。ジャパニーズウイスキーは少額から購入できる銘柄が多く、国内のネットショップやオークションによく出品されるので情報収集も難しくありません。

本格的なウイスキー投資に興味がある人は、海外のスコッチウイスキーを検討してみましょう。スコッチウイスキーは有名な銘柄が多く、カスク投資やウイスキーファンドの対象にも含まれています。

○スコッチウイスキーの有名銘柄
・MACALLAN(ザ・マッカラン)
・BOWMORE(ボウモア)
・Ardbeg(アードベック)
・Highland Park(ハイランドパーク)
・Glenfarclas(グレンファークラス)

ウイスキーには他にもさまざまな銘柄があるので、自分の投資目的やスタイルに合うものを見つけてみましょう。

ウイスキー投資は手軽に始められる資産運用

ウイスキー投資の市場は、金融資産などと比べても順調に成長しています。また、ジャパニーズウイスキーが世界的に評価されたり、専用のプラットフォームやサービスが増えたりなど、手軽に投資できる環境も整ってきています。

ウイスキー投資は、お酒が好きな人は趣味としても楽しめるので、興味をもった人はぜひチャレンジしてみてください。

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