暗号資産業界最大規模の経営破綻となる見込み
ついに米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手や女子テニスの大坂なおみ選手まで訴えられた──。
2022年11月16日、世界的な日本人スポーツ選手の2人がアメリカ・フロリダ州の連邦地裁に提訴された。プレー中に問題を起こしたり、違法なことを行ったりといった理由ではない。ある企業のブランドアドザイザー、つまり“広告塔”になっていたことで投資家たちに巨額の損害を与えたとして、投資家たちから「賠償責任がある」と訴えられたのだ。
ある企業とは、アメリカのFTXトレーディング。サム・バンクマン・フリード氏は、暗号取引会社アラメダ・リサーチを立ち上げた後、2019年に暗号資産(仮想通貨)のプラットフォームFTXを立ち上げた。安い取引手数料を武器に自己資本の20倍ものレバレッジをかけた取引の他、株式をトークン(電子証票)化した株式トークンや暗号資産オプションといったデリバティブ(金融派生商品)など、幅広い商品を取りそろえていることで人気を集めた。
そんなFTXが一躍有名になったのは、大谷選手や大坂選手などを始め、アメリカのナショナル・フットボールリーグ(NFL)でスーパーボウル7回制覇に貢献したトム・ブレイディ選手や、米プロバスケットボールNBAのステフィン・カリー選手、シャキール・オニール氏など世界的な有名スポーツ選手とアドバイザー契約を結んだこと。こうした選手たちは皆、大谷選手らとともに訴えられている。
ではなぜ大谷選手らは訴えられたのか。その理由は11月11日、FTXトレーディングが日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請したからだ。原告たちは「著名人たちを使って経験の浅い投資家たちをFTXに呼び込み、説明を省略したり不正確な説明をしたりしてFTXが扱っている暗号資産が安全だという印象を投資家に与えた」と主張しているわけだ。
11日にFTXトレーディングが裁判所に提出した資料によると、資産額と負債額はともに100億ドルから500億ドルの範囲内とされている。FTXと同時に破産申請したアラメダ・リサーチについても、負債総額は100億~500億ドルだったという。未確定ながらも負債総額は数兆円規模に達し、暗号資産業界最大規模の経営破綻となる見込みで、「暗号資産界のリーマンショック」とも言われている。