この記事は2022年11月18日に「月刊暗号資産」で公開された「FTX新CEO「企業統制の完全な失敗」と言及 保有暗号資産の価値も約9,200万円と判明」を一部編集し、転載したものです。


FTX
(画像=VeNN/stock.adobe.com)

暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの新CEOに就任したジョン・レイ(John Ray)氏は17日、米デラウェア州の裁判所に米連邦破産法11条(Chapter11)の関連書類を提出した。

その中で、レイ氏はFTXの現状を「40年に以上にわたる法務および事業再生のキャリアの中で、これほど『企業統制の完全な失敗』、『信頼できる財務情報の完全なる欠如』を見たことがない」と指摘している。

さらに、FTXが保有する暗号資産の価値は今年9月時点で65万9,000ドル(約9,200万円)であったと記している。前CEOのサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏はFTXの破綻前には流動性の低いものも含め55億ドル(約7,686億円)を保有していると主張していた。

レイ氏は、FTXの経営状況について苦言を呈している。再生にあたっては、「会計、監査、資金管理、サイバーセキュリティ、人事、リスク管理、データ保護を導入する。資産の保護と回収を行う。サム氏や他の共同設立者に対し包括的かつ透明性のある慎重な調査を行う」としている。レイ氏によると、FTXのバランスシートはサム氏が独断で作成しており、信用できるものではないという。

また、書類の中では新たにアラメダ・リサーチ(Alameda Research)社を通じてサム氏に10億ドル(約1,397億円)、エンジニアリングディレクターのニシャッド・シン(Nishad Singh)氏に5億4,300万ドル(約758億円)、共同CEOのライアン・サラメ(Ryan Salame)氏に5億500万ドル(約705億円)の個人融資を行っていたことが発覚した。これにより、資金の不正流用の可能性が高まった。

レイ氏は、「バハマではFTXの企業資金が、従業員や顧問の自宅、その他の個人的なものを購入するために使用されていた。これらの一部についてはローンなどの文書もない。特定の不動産はバハマで従業員と顧問の個人名で登録されている」と指摘している。

さらに、書類によればFTXグループの多くの会社は適切なコーポレート・ガバナンスを有しておらず、多くの事業体は取締役会さえ開催していなかったという。こうした背景から、サム氏および側近数人のみが主体となり事業を展開していたと思われると説明した。

個人融資についても全てを秘密裏に行うため、サム氏や従業員は側近に対し、時間が経過すると文章が削除されるチャットプラットフォームを用いて、請求していたと記載している。融資はFTXが破産申請をする直前にも行われたという。

現在、サム氏はバハマに滞在しているとされ、Twitterを通じて情報発信を行なっている。これについて、「不規則で誤解を招くような声明を出し続けており、『規制当局は全てを悪化させる』『デラウェア州との管轄権争いに勝つ』などと述べているが、最後に極めて重要なこととして、サム氏は債務者に雇用されておらず、債務者の代弁者ではない」と言及。サム氏の言動は現在のFTXとは何ら関係のないとし、注意喚起を行なった。(提供:月刊暗号資産