この記事は2023年1月1日に「CAR and DRIVER」で公開された「ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感」を一部編集し、転載したものです。

マセラティMC20チェロ 価格/3385万円 試乗記

ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感
MC20チェロは、3リッターV6ツインターボ(630ps/730Nm)を搭載したミッドシップモデル。将来の電動化を見越した設計が盛り込まれ、ボディは強靭&軽量なカーボンモノコックを採用

すべての道が揃ったイタリア・シシリー島でMC20チェロの実力を全開チェック

なぜマセラティは、MC20チェロの国際試乗会をシシリー島で開くことにしたのか? マセラティ広報のダヴィデ・クルーザーさんに尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「まず、マセラティはシシリー島で開催されたタルガフローリオというレースで1937年から歴史的な4連覇を成し遂げたことが挙げられます」
クルーザーさんはさらに2つの理由を挙げた。

「2番目の理由は、シシリー島にはうっとりするようなワインディングロードからひどい悪路までが揃っていることにあります。そうしたさまざまな道路で、MC20チェロのハンドリングと乗り心地をご堪能いただきたいと考えました」

そして最後に彼が語ってくれたのが、まさにこのモデルにぴったりの理由だった。
「この季節、イタリア北部ではそろそろ冬の足音が聞こえてきます。今年はまださほど寒さが厳しくありませんが、いずれにしても、イタリアの最南端に近いシシリー島であれば青空が存分に楽しめるはず。そう期待して、ここで国際試乗会を開くことにしました」

なるほど、そういうことか。ちなみに、「チェロ(Cielo)」は、イタリア語で「空」を意味する。「ときにはルーフを開け放って頭上の青空を存分に味わってほしい」 そんな期待が込められたネーミングであることは間違いない。

だとすれば、クルーザーさんがいうとおり、シシリー島以上にMC20チェロ国際試乗会にふさわしい場所はほかにないことになる。予想どおりの好天に恵まれたこの日、私は期待に胸を膨らませながら、そのコクピットに乗り込んだ。

試乗の前にMC20について簡単に説明しておこう。MC20は将来の電動化も見据えて設計された新世代MRスポーツだ。現在のパワーユニットは新開発の3リッターV6ターボ(630ps/730Nm)。8速DCTとのコンビでトップスピードは320km/hに達する。

ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感
ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感

情熱と洗練の融合。ハンドリングと、オープンエアの爽快感は絶品!

最初に驚いたのは、聞きしに勝るシシリー島の悪路だった。それは場所によってはアスファルトが完全に剝がれ、深さ10cm以上の穴が空いているところも珍しくないほど。正直いって、スーパースポーツカーのテストに好ましい環境とはいえない。

さすがに、そこまで深い穴は避けて通ったが、激しくうねっている路面でも、また鋭い段差があっても、MC20チェロの足回りは巧みに衝撃を吸収し、乗員に不快なショックを感じさせなかった。これは、スーパースポーツカーにしては長めのサスペンションストロークと、カーボンモノコックを中心とする強固なボディ構造の恩恵だろう。

MC20チェロは悪路で乗り心地がいいというだけのスーパースポーツカーではなかった。ワインディングロードでは、痛快なハンドリングでドライバーを魅了する術も備えていた。

サスペンションストロークがスーパースポーツカーとして長めであることはすでに説明した。このため、ドライビングモードを乗り心地重視のGTとしたとき、「おっとりしたハンドリング」と感じる腕利きドライバーがいたとしても不思議ではない。

そんなときには、ぜひともスポルトモードを試してほしい。ダンピングレートが適度に高まってボディの動きが抑制され、それまで以上にシャープなハンドリングが楽しめる。事実、初めて走るシシリーの狭いワインディングロードでも、不安や不満をいっさい抱くことなく、思い切ったペースでコーナーを駆け抜けていけた。そのときに感じた心地いいステアリングの感触は、いまでも私の手のひらにしっかりと留まっている。

ルーフを開け放ったときの爽快感も実に印象的だった。
コンバーチブルタイプのスーパースポーツカーの中には、オープンにしてもルーフがドライバーの頭上まで長く残るため、開放感の点でやや物足りないケースがある。しかし、MC20チェロは違う。「ルーフの切れ目」が十分前方に設定されている。だから青空を存分に楽しめる。また、高速道路で120km/hまで速度を上げても風の巻き込みは決して過大ではなく、開放感と風の巻き込み防止がうまくバランスされているように思えた。

閉じても開放感が高い点も印象的。ガラスルーフは液晶を応用した技術を採り入れ、スイッチひとつで透明にもすりガラス状にも切り替えられる。熱線を遮断する効果もあり、キャビンが暑くなりすぎることがない点も特筆しておく。

マセラティの伝統を感じさせるダイナミックな走りと、開放感あふれる洗練された快適性。このふたつが、MC20チェロの真骨頂といっていいだろう。

ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感
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マセラティMC20チェロ 主要諸元

ダイナミックな走りと開放感。マセラティMC20チェロの真価をかつてのタルガフローリオの舞台で体感

グレード=MC20チェロ
価格=8DCT 3385万円
全長×全幅×全高=4669×1965×1224mm
ホイールベース=2700mm
車重=1540kg
エンジン=3リッター・V6DOHC24Vツインターボ
最高出力=463kW(630hp)/7500rpm
最大トルク=730Nm(74.4kgm)/5500rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/35R20/リア:305/30ZR20
駆動方式=RWD
乗車定員=2名
0→100km/h加速=3.0秒
最高速度=320km/h
※性能スペックは欧州仕様

フォトギャラリー

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Writer:大谷達也、Photo:MASERATI

(提供:CAR and DRIVER