この記事は2023年1月24日に「月刊暗号資産」で公開された「 米暗号資産銀行が米連邦住宅貸付銀行から巨額借り入れか」を一部編集し、転載したものです。
米大手の暗号資産(仮想通貨)銀行2行が、増加が見込まれる顧客の資産引き出しに対応するため、米国連邦住宅貸付銀行(FHLB)から巨額融資を受けていることがわかった。21日、Wall Street Journal(WSJ)などが報じた。
報道によると、ブロックチェーン基盤のデジタル決済プラットフォーム等を提供する商業銀行のシグネチャーバンク(Signature Bank)は2022年期第4半期(10月-12月)に100億ドル(約1兆3,025億円)の融資を受けたようだ。また、暗号資産関連サービスを手がけるシルバーゲート銀行(Silvergate Bank)を傘下に持つシルバーゲート・キャピタル(Silvergate Capital) は43億ドル(約5,600億円)の融資を受けたとしている。
シルバーゲートは1300以上のフィンテック企業を含む暗号資産企業を主な顧客としている。暗号資産取引所FTXが昨年11月に破綻した後、顧客の資産引き出しは加速。その結果、預かり資産は昨年9月30日の119億ドル(約1兆5,500億円)から、12月31日には38億ドル(約4,950億円)まで減少したと発表している。
暗号資産業界に融資を行っている2行が融資を受けた米国連邦住宅貸付銀行は、1932年に連邦住宅貸付銀行制度が成立した際、住宅ローンを利用しやすくすることを目的として発足された。現在は住宅ローンや中小企業、農村、農業、経済開発の融資を行う米国の金融機関に対し、低コストでの融資を行なっている。
米国連邦住宅貸付銀行の使命の1つとしては銀行の流動性を支えることだが、一部では暗号資産領域の活用に疑問の声が挙がっている。
暗号資産に対し懐疑的なことで知られるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、「どのような状況においても、詐欺、マネーロンダリング、違法金融に満ちた暗号資産業界の崩壊を現状のまま放置することはできない。私は以前から暗号資産が従来型の銀行システムに入り込むことの危険性を警告してきた」と述べ、米国連邦住宅貸付銀行の対応を批判した。
一方、シグネチャーバンクは23日、Wall Street Journalの報道について「記事が不正確だ」とし、反論を述べた。
シグネチャーバンクは発表で、同行が「暗号資産の貸手」というのは誤りであると主張。暗号資産領域での融資しておらず、暗号資産を担保とした融資も行なっていないとしている。
シグネチャーは現在も他世帯向け融資を主にしており、住宅ローンを提供することをメインに取り組んでいると述べた。(提供:月刊暗号資産)