スマートシティと聞いて一体何を思い浮かべるだろうか。自動運転の車が走る町?防犯レベルの高いセキュリティーの整った町?再生可能エネルギーで電力を賄えるエコな町?まぁどれも間違っていない、正解である。
スマートシティってなに?
国交省の資料曰く、スマートシティとは「都市の抱える諸課題に対してICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」である。
つまり、スマートシティとは、都市の課題…満員電車や渋滞などの交通問題、単身者・共働き世帯増加による配送物到着時誰も家にいない等の物流問題、原発の稼働が難しい現在、火力によって賄われている電力問題、監視の薄いエリアで行われる犯罪問題…などなど挙げればきりがない問題にICT(InformationandCommunicationTechnology-情報通信技術、今でいうIOT、昔でいうユビキタス社会)技術を使って対抗していく、便利で快適な街である。
このスマートシティと関係が深いのが、第5期科学技術基本計画において目指すべき未来社会の形…Society5.0である。
Society5.0ってなに?
Society5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)by内閣府」である。
ちょっとわかりにくいので、最初から説明すると、科学技術の振興に関する施策の基本となる事項を定めるために制定されている科学技術基本法という法律がある。
この法律は5年ごとに改定されているのだがその第5期、第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会として定義されたのがこのSociety5.0である。
Society5.0はこれから目指す社会が5回目の大きな社会変化であることを表している。
Society1.0:狩猟社会(食べ物を狩猟・採集し生きる社会)
Society2.0:農耕社会(狩猟・採集のような不安定な供給ではなく、農耕で安定的な食糧供給を実現した社会)
Society3.0:工業社会(産業革命により工業製品が生まれ、人々の生活が豊かになった社会)
Society4.0:情報社会(インターネットの出現により、便利なサービスを受けられるようになった社会)
と世界は変革を遂げてきた。
今回の「Society5.0:新たな社会は情報化社会に加え、情報や知識の共有が円滑に行われることで、より高度な連携を実現し、人が行える限界を超えて、様々な社会問題を解決できる社会となる。」平たく言うとスマートシティの中身みたいなもので、言っていることはほぼ同じである。
技術革新によって来る未来のカタチである、Society5.0が実現する街。それがスマートシティとなる。
Society5.0何がそんなに違う?
IOTなんて今でもあるじゃん、いったい何がそんなに変わるの?と思われた方もいると思う。「Society4.0:情報社会とSociety5.0…スマートシティ化になんの違いがあるのか」と。
我らが内閣府的には人工知能(AI)とセンサー情報から収集されるビッグデータによって新たな価値が提供されるとのことだ。だがこれではちょっと説明不足なのでは?と個人的には思う。AIもセンサーも今もある話である。これだけだとあまり変わらない…。
ここに新通信規格「5G」、そしてそれを支える「MEC」が最低でも必要だと思う。どんなにセンサーやカメラが優秀で高度・高彩度な情報を届けられたとしても、どんなに優秀なAIが的確な判断を下せたとしても、それを「素早く」、「確実に」対象に伝えられなくては意味がない。
例えば自動運転において、ぶつかりそうな車がいたとして、センサーが前の車との距離や自車位置などを高度に認識したとする、この情報をAIで処理するためにサーバーに送り、じゃあブレーキをかけようと判断した情報を車に戻す、この一連の流れが3秒でもかかったら、クルマはもう事故を起こした後である。
またこのような場合において、通信が立て込んでいたから指示を出すのが遅れました!なんてふざけたことも言えない。またそのような膨大なデータは大容量になる、だから「大量に」伝えなくてはならない。そこで出てくるのが、大容量、低遅延、高信頼、多数同時接続の5Gである。
5G…第5世代移動通信システムがなぜこれを達成できるのか、技術的な根拠はほかのサイトを見てほしい。5Gによって高速に、高信頼度で、大量に通信できることにより、自動運転をはじめとするあらゆる遠隔制御が実現するのだ。
ただいくら高速で通信したからといって、CPU(従来のクラウドコンピューティング)には処理能力に限界がある。そこでその肩代わりをするのが「MEC」という技術だ。
MEC…モバイルエッジコンピューティングは、利用者のすぐ近く、街中のあらゆる場所に、CPU
従来のスマートフォンなどの通信機器は、クラウドコンピューティングにより処理された情報を表示している。ただこのクラウドコンピューティングにも当然処理能力に限界がある。
さっきの事例で出した自動運転の事例のように、通信で判断が遅れては元も子もないが、処理能力の限界で判断が遅れるのはもっと元も子もない。
Society5.0で実現するレベルのビッグデータ処理では、現在のクラウドコンピューティングでは限界があるのは目に見えている。
そこで、利用者のすぐ近くにCPUを置き、情報を処理利用者に返す。まさにエッジ(端っこ)で打ち返す処理システムである。
具体的に言うと、先の見えない交差点で、自転車などの障害物が高速で接近していたとしよう。それを交差点に設置されているセンサーが判断し、交差点に設置されているMECで処理、近くの車両に警告を促す。こんな感じだ。
このセンサーからの情報をいちいちクラウドコンピューティングに伝えていたのでは、車両に警告するまでにラグがある、だからエッジで処理するのだ。
ちょっと長くなってしまったが、人工知能(AI)とセンサー情報から収集されるビッグデータそして、次世代通信規格5G、MEC…ここまでそろえば何か大きく社会が変わる…そんな予感がしませんか?
具体的にはどんなサービスが?Society5.0が実現するスマートシティ
1.建機やトラックなど、遠隔操作による人員不足改善
トラックドライバー不足、建機のオペレーター不足、いわゆる3K現場での人員不足が顕著な問題になってきた現代。これも遠隔操作、自動制御により改善される。
基本的な処理(一定の作業をする状態、トラックであれば高速道路の走行のような)であれば自動的に操作し、いざ、人間でなくてはならない高度な作業において人間による操作を行う。ただその操縦席に座っている必要はない、遠隔で操作すればいい。そうすれば同時に複数の車両を管理できる。
しかも、オフィスから出る必要はない、トラックドライバーや建機オペレーターもオフィスワーカーの時代がやってくるのだ。
2.介護士、医師不足の改善、どこでも最高の医療を
地方に特に離島など、医者さんや介護士のいない地域がある。でもそこに住み続けたいそこを終の棲家としたい方々もいる。そんな時に活躍するのが医療・介護ロボットによる遠隔治療である。東京にいながら医療ロボットを遠隔操作することにより地方の方々にも最新の医療を受けてもらうことができる。
3.現金ってなんだっけ?超キャッシュレス社会
今でもクレジットカードやLINEPAYなどのキャッシュレス決済でほとんど済ませちゃうから、現金持ってないよっていう意識高い系の皆様。もっと便利になります。無人決済である。
コンビニで商品をピックアップしてそのまま外に出る、それだけで決済ができちゃうといったイメージの代物だ。カメラで個人を認証し、カメラでその人が何の商品を持ち出したかを認識し、その代金を個人に紐づく請求先に請求する。
この形でほとんどの決済を無人化できる。コインパーキングも電車もガソリン給油も…財布ってなんだっけ、そもそも何を入れておくものだっけ、なんていう人が現れかねない。
4.配送にも人員輸送にも無視界自動ドローン
現代でいうドローンは制御が自動、つまり安定して空中にとどまることは可能だが、どこかに行きたいという制御は自分でする。また自動であっても監視が必要である。つまり長距離飛ばしたければ、その下にずっとくっついて、走らなくてはならない。意味がない。
これを無人で、無監視で行えれば、荷物の配送も、人の輸送も、楽々である。
未来はすぐそこ、スマートシティ!
今回紹介した事例外にも、川の水質検査や高所作業、エネルギー問題や工場の自動化なども実現可能である。あなたの仕事も自動化でちょっと楽になったり、わざわざ現地に赴く必要がなくなるかも…
こんなことを言うとあれ、自動化で俺の仕事なくなるんじゃね?て、思う人がいると思う。今までの人類の変遷を見れば明らかであるが、人間は空いた時間で必ず何かを行う。今の仕事ではなく近しい別の仕事をするようになるだけである。
社会全体を見れば人員不足にもなる、人間の仕事が限られたとしても、慢性的な人員不足が完全な終焉を迎える日は、かなり遠い話になるだろう。それよりももっと便利になる社会を創造していただきたい。SF映画もあながち間違っていない。
空飛ぶ車もドローンに形を変えただけである。SFな世界が実現するのはもうすぐ先の世界である。