世の中には、数多くの美しい家具があり、そしてそれらを生み出してきたデザイナーがいます。今回はそのなかから「シャルロット・ペリアン」を取り上げ、その生い立ちや代表作品、現在の市場価値などについて解説します。
※本稿は2023年1月末日に執筆したものです。実際の取引状況については、最新の情報をご確認ください。
(TOP画像引用元:Cassina IXC.)
シャルロット・ペリアンとは
シャルロット・ペリアンは、20世紀になったばかりの1903年にフランスのパリで生を受けた女性デザイナーです。彼女は20世紀を代表するデザイナーとして非常に有名で、数多くの名作を生み出した人物でもあります。
ここではシャルロット・ペリアンの半生やその製品を売り出している店舗などについて解説していきます。
シャルロット・ペリアンの半生
服飾職人であった両親の元に誕生したシャルロット・ペリアンは、パリの装飾美術連合学校を卒業後、わずか24歳の若さで自分自身のアトリエを築き上げました。このアトリエは非常に多くの耳目を集め、ル・コルビュジエやジャン・プルーヴェとの縁をつなぐきっかけとなります。
日本にも滞在してその技術を伝える「先生」としての役割を担うことになった彼女は、「折り紙」をモチーフにした「オンブルチェア」などを生み出し、その名前を20世紀のデザイン史に刻み付けます。
彼女は1999年に亡くなりましたが、その前年には、新宿パークタワーホールにて「シャルロット・ペリアン展」などの展覧会も開かれました。
シャルロット・ペリアン作品を販売している店舗
シャルロット・ペリアンが手掛けた家具は、彼女が亡くなった後もその人気が衰えることがありません。彼女はイタリアの有名なファニチャーブランドである「カッシーナ」と頻繁に仕事したことでも知られていますが、現在でもYAECA、GALLERY-SIGN、MOTO FURNITUREなどでその作品を見ることができます。
※実際に取り扱われているラインナップは、時期によって異なります。実際に家具の購入を検討している、あるいは売却を検討している場合は、必ず各店舗にご確認ください。
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シャルロット・ペリアンの代表作品
シャルロット・ペリアンの作り出す家具は、常にモダンで、革新的で、挑戦的です。しかし、彼女のデザインによって生み出された作品は、モダンな家具においてしばしば問題とされる「冷淡さ」がなく、柔らかく、優しい雰囲気をまとっています。
彼女のデザインは、私たちが触れる家具やインテリアの「スタンダード」として、今に通じる家具・インテリアの基礎となったともいわれています。
LC4 Chaise Longue
「LC4 Chaise Longue」は、シャルロット・ペリアンがル・コルビュジエなどのデザイナーと共同で作り上げた「休息のためのイス」です。彼らが活躍した時代、休息のためのイスといえば、いわゆる「背もたれのついた揺りイス」を指していました。
しかし、彼らはLC4 Chaise Longueという作品で新たな価値観を休息のためのイスの世界に持ち込みました。この作品は今なお「世界最高峰」と称されていて、アメリカのニューヨーク近代美術館にも収容されています。
Les Arcs Arc 1600、Arc 1800を設計
愛らしく、素朴で、柔らかい。人によっては飾り気がないとさえ見えてしまうほどに「スタンダードな」作りをしている「Les Arcs Arc 1600」は、1人用のスツールです。
しかし、シャルロット・ペリアンの作品をよく知る人から見れば、一見単純で明快に見えるLes Arcs Arc 1600というイスが、どれほど繊細で、どれほど緻密な計算によって成り立っているかが分かるでしょう。上部分と下部分で太さが違う脚や座面のラインなど、彼女らしいこだわりが随所に見てとれます。素朴さのなかに、現代に生きるモダニズムを掛け合わせることは、シャルロット・ペリアンならではの考え方だといえます。
また、壁に沿わせての使うことを想定したテーブル「Les Arcs Arc 1800」も高い評価を集めています。
LC2 Grand Confort Armchair
「LC2 Grand Confort Armchair」は、ル・コルビュジエの代表作としてよく知られていますが、これは正しくもあり、間違ってもいます。正確には、ル・コルジュジエとピエール・ジャンヌレ、そしてシャルロット・ペリアンの協働作品です。
この作品は、「家具のデザイン史のなかで、もっとも有名で、もっとも世界的なアイコンである」と評される作品であり、カッシーナの代表作としても知られています。
名前通り、「すばらしい快適さ」を提供するものであり、座る人の心地よさを最大限に考慮した美しいソファです。
シャルロット・ペリアン作品のオークションにおける価値は?
シャルロット・ペリアンの作品は、その没後20年を経た今も、まったく色あせることがありません。彼女の作り出す家具は今なお多くの人に愛されていて、ザザビーズのサイトなどのオークションサイトでも頻繁に取り上げられています。
今回は数々の作品から、「ペルジェ スツール」と「ウォールランプ」を取り上げましょう。
ベルジェ スツール
ペルジェ スツールの「ペルジェ」は「羊飼い」の意味です。シャルロット・ペリアンは羊飼いの使うイスを元に、この作品を作り上げたとされています。
この作品が製作されたのはちょうど半世紀前で、その2年後に日本で行われた展覧会で取り上げられることとなりました。素朴な優しさを持つこの作品は、無垢のオーク材やアメリカンウォールナット材を使っており、木の暖かさをも私たちに伝えてくれます。
海外のオークションサイト・サザビーズでは、約150万円での落札実績があります。
※なお、カッシーナでは復刻版も取り扱っています。
ウォールランプ
壁掛け照明の名作として知られているシャルロット・ペリアンの「ウォールランプ(とくに「CP1ウォールランプ」と記されることもあります)」は、高いデザイン性と高い実用性を両立。傾きを自由に変えられる仕様であるため、使う人の好みや使用用途によって自在に光の強さを変えられるように工夫されているのです。
なお、先にご紹介した「Les Arcs Arc 1600」はスキーリゾートで使われていたイスですが、このウォールランプもまた、同じスキーリゾートの居住部分に利用されていました。
サザビーズでは、12セットで約505万円での落札実績があります。
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シャルロット・ペリアン家具のうち最高級品にあたるもの
シャルロット・ペリアンの作り出した家具は、今も多くの人の注目を集めています。彼女はテーブルやベンチなどを数多く手掛けてきましたが、ここからはとくに価値の高い作品を取り上げて紹介していきます。
BRAZIL RIO TABLE
シャルロット・ペリアンが、夫のために作った家具……それが、「BRAZIL RIO TABLE」です。BRAZIL RIO TABLEは、彼女の夫が住まうブラジルの自宅のために作られたものです。ただその後に、同じかたちのテープルがフランス・パリにある日本大使館でも採用されています。
一度見ると忘れられないほどに印象的なデザインのBRAZIL RIO TABLEは、時に「非常に音楽的である」と評されます。まるで、バームクーヘンを6分割にしてずらしたかのような斬新なデザインで、非常に個性的です。
シャルロット・ペリアン作品を数多く扱うECサイトでは、受注輸入品として販売されており、価格は230万円となっています。
BENCH DAYBED WITH UPHOLSTERY
「BENCH DAYBED WITH UPHOLSTERY」は、アフリカ・モーリタニアにあるカンサドという町のために作られた丈の低いベンチです。
非常に直線的で、ラインがはっきりしていて、シンプルで。実にモダンなデザインに仕上がっています。「ベンチ」とされていますが、その使い方は多岐におよんでおり、コーヒーテーブルとして利用することも可能。現在では、このBENCH DAYBED WITH UPHOLSTERYにマットレスを組み合わせて、ベッドとして使用している人もいるそうです。
値段はサイトによって異なるため一概には言いきれませんが、販売価格160万円の値をつけるECストアもあります。海外オークションのサザビーズでは、同タイプのヴィンテージが約685万円で落札されました。
514 REFOLO
「514 REFOLO」(「レフォロ ソファ」とも呼ばれる)もまた、今から半世紀前にそのデザインが完成した作品です。シャルロット・ペリアンは、東京で、自分自身のためにこの作品を作ったといわれています。
「生活をするための家具」としてデザインされた514 REFOLOは。オーク材を格子状に配して作られていて、「クッションを置いたときにちょうど良い高さになるように」と考えて構成されました。また、ソファとしてだけではなく、コーヒーテーブルあるいはテレビ台としても使えるようになっています。
シャルロット・ペリアンの作品を数多く取り扱うECサイトでの販売価格は90万円から。オプションでクッションと組み合わせることも可能です。また、同タイプのヴィンテージは海外オークションのサザビーズにて、約170万円で落札されました。
526 NUAGE
シャルロット・ペリアンが日本に滞在していた経験のある人物であり、そしてそこで多くの技術者の「先生」をしていた経験があることは、すでにご紹介した通りです。
しかし、彼女は日本で人を教え導く立場を経験すると同時に、日本の伝統や考えをインプットしてデザインに生かすというデザイナーとしての才覚も見せます。そのプロセスにて生まれたのが、「526 NUAGE(「ニューアージュ ブックシェルフ」とも呼ばれる)です。
これは、桂離宮の「違い棚」から発想を得て作られた作品で、機能性とデザイン性を高いレベルで融合させたブックシェルフの名品として知られています。存在自体がひとつの強烈な個性を持つため、インテリアの中心として存在感を発揮するでしょう。カスタマイズの自由さもきわめて高く、買い手の好みを最大限反映させられる優れた家具といえます。販売価格はECサイトで250万円から。
また、同家具と近いタイプのブックシェルフは、ヴィンテージが海外オークションのサザビーズで約4,059万円と、かなりの高額で落札されました。
まとめ
20世紀を駆け抜けた女性デザイナーの一人であるシャルロット・ペリアンは、カッシーナを始めとする家具ブランドでよく活躍した人物です。彼女を語るときにはル・コルビュジエとの協働が必ず取り上げられますが、彼女の実力は、決して彼の影に隠れることはありません。
照明家具やソファ、テーブル……彼女が遺した魅力的な作品の数々は年月を経て価値を高め、今もなお多くの人に愛されています。
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