カーリースの利用を検討中の個人事業主の方向けに、カーリースのメリット・デメリット、車の購入よりもおすすめしたい理由を紹介。個人事業主が受けるカーリース審査とその対策などについても解説します。
個人事業主がカーリースを使った際のメリット、デメリット
個人事業主がカーリースを検討する際は、メリットだけでなくデメリットもしっかり理解しておくのが賢明です。主なメリット、デメリットを3つずつ紹介します。
■メリットリース料金を全額経費にしやすい
カーリースには、「リース料金を全額経費にしやすい」という個人事業主にとって大きなメリットがあります。車にかかるコストをうまく経費計上することで利益が圧縮され、節税効果が期待できます。
注意したいのは、個人事業主としてカーリース会社と契約する場合、リース料金を全額経費にできるケース、できないケースがあることです。
まずはリース料金を全額経費にできるケースですが、リース車を仕事だけで利用するならリース料金を全額経費にできます。一方、リース車を仕事とプライベートの両方で使うケースを見てみましょう。この場合、それぞれで使った分を区分けし、たとえば「仕事7:プライベート3」のように割合を決める必要があります(家事按分という)。そのうえで、事業で使った分だけを経費計上する流れになります。
■メリット車に関する手続きが楽になる
個人事業主の方は、多忙で時間がないというケースも多いでしょう。こういった方にとっては、カーリースの「車に関する手続きが楽になる」というメリットも魅力です。カーリースを利用すれば、車に関する税金の支払いや車検手続きなどをしなくて済みます。
なぜなら、カーリースの月額料金には、車の利用料に加えて、以下の諸費用が含まれているからです。
・自賠責保険料
・自動車税(種別割)、自動車重量税
・車検費用
ただし、月額料金にどこまでの諸費用が含まれているかは、カーリース会社やプランによって違います。契約前にその内容をしっかり確認するのがおすすめです。
■メリット初期費用0円、月々定額で車が使える
個人事業主であれば、限られた資金で開業したり、事業を継続したりといったケースもあるでしょう。こういった方にとっては、初期費用0円で車を使えるカーリースが経営資金の助けになるはずです。
また、車検やメンテナンスつきのプランなら利用料金は月々定額なので、車検のある月にまとまったお金が必要となるといった大きな変動もありません。これも経営資金の助けになります。
■デメリット中途解約できない
個人事業主の方であれば、「事業環境が厳しくなった」などの事情で廃業することもあるでしょう。しかし、カーリースは廃業したからといって中途解約できないのが原則です。また、中途解約が認められたとしても、中途解約金を一括で支払わなければなりません。
ただし、中途解約金の規約はカーリース会社によって違います。規約の一例は、「残りのリース料の残額を支払う」といった内容です。中途解約について不安な人は、契約前に規約を細かくチェックするのがよいでしょう。
なお、個人事業主が個人名でリース会社と契約し、廃業後もそのままリース車を利用する場合は、中途解約をしなくても大丈夫です。
■デメリット所有権がない
個人事業主が車を現金一括で購入した場合(あるいは、ローンを完済した場合)、手元資金が足りなくなってきたときに車を売却して、当座の資金を得ることも可能です。しかし、カーリースの場合、車の所有者はカーリース会社のため売却することができません。
ただ、個人事業主の方がはじめから車の売却代金をあてにしていなければ、カーリースの所有権がないことはデメリットにならないでしょう。
■デメリット追加費用が必要になることもある
個人事業主にとって、「月々定額で使えること」もカーリース利用のメリットです。ただし、下記の状況にあてはまると、追加の費用が発生する可能性もあります。
・契約していた走行距離の上限を超えた
・壊れていたリース車をそのまま返却した
・リース車の返却時に改造していることが発覚した
走行距離の上限を超えていた場合は、超過料金を支払わなくてはなりません。また、返却時に車が壊れている、あるいは、改造していることが発覚した場合は、原状回復費が発生します。
ただし、契約の範囲内の走行距離を守り、注意を払ってリース車を利用していれば追加費用が発生するリスクを抑えることは可能です。
個人事業主に「車の購入」ではなく「カーリース」をおすすめする理由
たとえカーリース利用のデメリットを考えても、個人事業主には車の購入よりもカーリースがおすすめです。その理由は下記の2つです。
■車の購入の場合、減価償却しなくてはならない
個人事業主にカーリースをおすすめする1つ目の理由は、経費計上の仕組みがシンプルで経費管理や青色申告書の作成時に扱いやすいからです。車を購入した場合とカーリースを利用した場合では、下記のように経費計上の仕組みが変わってきます。
選択肢 | 経費計上の仕組み |
---|---|
カーリース | 毎月のリース料金を全額経費計上 ※按分なし、仕事専用の車の場合 |
ローンで車を購入 | 利息のみ経費計上 |
一括支払いで車を購入 | 使用可能年数に分けて経費計上 (減価償却) |
上記を踏まえると、個人事業主には車の購入よりもカーリースがおすすめです。
まず、ローンで車を購入した場合、経費計上できるのは利息だけなので、「リース料金を全額経費計上しやすい」カーリースに比べて明らかに不利です。
また、一括支払いで車を購入した場合、取得価格を複数の年に分けて経費計上しなければなりません。これは、車や建物などの取得価格は、使用可能年数(法定耐用年数と呼ばれる)に分けて経費計上していく「減価償却」と呼ばれる会計上の決まりがあるからです。車の法定耐用年数は国税庁で次のように定められています。
一般用の自動車の耐用年数
車のタイプ | 耐用年数 |
---|---|
小型車 (総排気量0.66リットル以下) |
4年 |
貨物自動車 | ダンプ式 4年 その他 5年 |
報道通信用 | 5年 |
その他 | 6年 |
引用:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
一括支払いで車を購入したときとカーリースを比べたとき、どちらが多く経費を計上できるかはケースバイケースですが、カーリースのほうが仕組みがシンプルです。とくにご自身で経費管理や青色申告書を作成している個人事業主は、カーリースのほうが扱いやすいでしょう。
■車の購入の場合、煩雑な手続きが発生する
個人事業主にカーリースをおすすめしたい2つ目の理由は、車に関連する煩雑な手続きをしなくて済むからです。カーリースの月額料金には、自賠責保険料や自動車関連の税金の支払い、車検の手続きなどが含まれます(プランなどによる)。
車を購入すると、これらの手続きを本人がしなければなりません。とくに業務が集中しているときや繁忙期にこれらの手続きが発生すると負担が大きくなります。仕事に集中できる環境をつくるため、個人事業主はカーリースを選択するのが賢明です。
個人事業主のカーリース審査の主な項目や対策は?
個人事業主がカーリースを利用するとき、選べるプランはカーリース会社ごとに違います。大きくは「法人・個人事業主向けプラン」「個人向けプラン」を利用するケースがあります。これを前提に、個人事業主がカーリースを利用した場合の審査の項目例や対策を解説します。
■審査の項目例個人の信用情報
クレジット支払いやローン返済で過去に遅延があった個人事業主は、カーリースの審査が厳しくなる可能性があります。とくにカーリースの契約直前の遅延は避けましょう。合わせて、所有している資産や収入に対してローンの借入額が多い個人事業主も、審査のハードルが上がる可能性があります。
■審査の項目例直近の経営状況・収入
「法人・個人事業主向けプラン」の利用時には直近の経営状況、「個人向けプラン」の利用時には直近の収入が審査の対象になる可能性があります。たとえば、個人事業主で収入がほぼない、あるいは赤字といった状況だと審査で不利になりやすいと考えられます。
■審査の項目例開業してからの年数
「法人・個人事業主向けプラン」を利用する個人事業主は、開業・設立してからの年数がチェックされることもあります。開業・設立から間もないと、審査がより慎重に行われる可能性があります。
■審査の対策他の支払い漏れをなくす
審査の項目例の「個人の信用情報」でお話したように、クレジット支払いやローン返済の遅延はカーリース審査のハードルを上げてしまいます。クレジットでお買い物をしているなら、少額のものでも支払い忘れを避けましょう。
■審査の対策手頃の価格の車種を選ぶ
リース車が高額になるほど審査が厳しくなると考えられます。たとえば、「ローンの借入額が多い」「直近の収入が少ない」などの個人事業主の方は、手頃な価格の車種を選んで審査を通りやすくするといった考え方もできます。
逆にいうと、「一定の収入がある」「ローンの借入額がない(少ない)」といった条件の個人事業主は、審査に神経質になる必要はありません。
■審査の対策連帯保証人を付ける
契約者である個人事業主本人の収入が少なかったり、ローンの借入額が多かったりする場合、「連帯保証人」を設定することで審査が通りやすくなることもあります。カーリースの審査が厳しくなると予測される個人事業主の方は、あらかじめ連帯保証人の候補者を考えておいたほうがよいかもしれません。