最近、三井住友銀行がSBI証券と提携をしたというニュースが流れた。別に大々的に取り上げられたわけではないので、知らない方も多いだろう。

そして2023年3月にさらなる発表があった。 内容は三井住友グループが提供する「Olive(オリーブ)」というアプリからSBI証券に簡単にアクセスできるようになるというものだ。

これは一体何を意味しているのだろうか。現役メガバンク行員の視点から説明するので参考にしてほしい。

ネット証券とメガバンクの運用商品のスペックは圧倒的に違う

メガバンクに勤めている人間からみても一般の人が資産運用を行うのであれば圧倒的にネット証券のほうが良いと思う。ネット証券は手数料も低く、使い勝手も取扱商品数も多い。わざわざ一般的な資産運用を行うのにメガバンクを使う必要はないだろう。

ではなぜ三井住友銀行は自社の顧客をネット証券にわざわざ流すような施策を打つのだろうか。

理由はさまざまあるが、「富裕層以外の資産運用業務は儲からないから」 が最も大きな理由だろう。

一般の人の投資金額は数百万円のケースが多い。また最近の積立投資のブームで少額の積立が流行っている。少額の積立は長い目でみれば銀行の収益になるが、管理が大変で決して割の良いものではない。なので正直、投資金額が小さい一般層をメガバンクで受付をするメリットはないのだ。

もしネット証券に顧客を移すことができれば、メガバンクで資産運用に従事している数千人の人件費を削減できることになる。メガバンクの上層部はこの点に注目をしているかもしれない。

ただし富裕層については別だ。時間と人員をかけても対応をする価値がある。なぜなら銀行がもらえる収益が大きいからだ。

資産運用の金額が大きいのでその分、受け取る手数料が大きいのはもちろんだが、遺言信託など相続絡みの収益も大きい。特に遺言信託については莫大な手数料が入るリテール部門の中で最も割のいい商品になる。

このように富裕層についてはメガバンクにとってメリットが多いので今後も継続して業務を行うだろう。

まとめ

今回はメガバンクの資産運用部門が富裕層に特化する可能性について紹介した。正直、一般層の資産運用は手間の割に儲からない。

三井住友銀行がSBI証券と提携しアプリに誘導しているのは良い例だろう。今後、三菱UFJ銀行やみずほ銀行でもこうした動きが起こるかもしれない。 今後の対面型の銀行の資産運用業務がどうなるかに注目したい。

文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)