数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの一冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「PMIを成功させるグローバルグループ経営」前田絵理編著 中央経済社刊


タイトルにある通り、「グローバル(企業の)グループ経営」に携わる層をターゲットにした一冊。2014年に中央経済社より刊行された『企業買収後の統合プロセス すらすら読めるPMI入門』の続編としてクロスボーダーM&Aに注目し、M&AやPMI成功の勘所を整理しまとめた。

前書では日本本社と買収対象会社との1対1の買収場面におけるプレデューデリジェンスからPMIに至るまでをプロセスに沿って解説していたが、今回はさらに進んで買収対象企業を他の子会社(以前に買収した企業を含む)、すなわち1対多の関係性でどのようにグループ経営すべきかというグループ統合における留意点をまとめている。

筆者らによると、「海外企業の買収が増える一方で、統合効果の発現には必ずしも成功していない事例が多くみられる」が、「M&AやPMIの成功事例にはそれなりのパターンがあり、それらのパターンから学ぶことで、成功に導くキーエッセンスを見出すことが可能である」と説く。

本書は経営戦略、HR(Human Resource)、ガバナンス、ファイナンス、デューデリジェンス、事例など全7章で構成されている。時間がない方は、事業軸と地域軸の視点から統治モデルを3つに分類した第1章と、いずれも実在する子会社数100社超を持つグローバル企業4社の事例紹介から先に目を通しても良いだろう。どちらの章も類書にはない内容である。

大学教授、日米資格を持つ弁護士から民間企業の人事部長らの共著だが、執筆陣の間で活発な議論が交わされたこともあってか、主張や内容に統一感がある。

対象がグローバルに展開する大企業の経営層とその社員、金融機関やコンサルタントを含むM&A実務家に限定されるが、クロスボーダーM&Aの勘所を押さえたい者におすすめしたい(2023年10月)。

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online編集部