2023年のM&A戦線は早くも第1コーナーを過ぎた。1~3月の上場企業によるM&A件数(適時開示ベース)は275件と前年を38件上回る好ダッシュを見せた。そんな中、最も多くのM&Aに取り組んだ企業はどこだったのか?

電通、ミンカブ、ワキタが3件で並ぶ

1~3月中にM&Aを手がけた上場企業は245社(275件)。このうち1社で複数のM&Aを手がけた企業は27社を数えた。件数トップは電通グループ、ミンカブ・ジ・インフォノイド、ワキタの3社の各3件で、ENEOSホールディングス、三井物産、森永乳業など24社は各2件だった。

電通グループによる3件のM&Aはいずれも海外での買収案件。ターゲットはスペインのオメガ、米国シフトセブン、英国タグで、そろって顧客体験マネジメント領域の強化を狙いとする。取得金額はすべて非公表。電通グループは2022年に合計4件のM&A(うち3件は海外案件)を手がけたが、今年は早くも前年に迫る勢いだ。

「みんなの株式」「株探」など投資家向けメディアを運営するミンカブ・ジ・インフォノイドは前年の3件にすでに並んだ。このうちの2件は子会社のライブドア(東京都新宿区)を通じて実施した。ライブドアはニュースサイト「Livedoorニュース」などで知られる総合情報サービス企業で、昨年12月に72億円を投じて買収して間もない。

ライブドアは、サッカー専門メディア「超WORLDサッカー」を運営するCWS Brains(東京都千代田区)を傘下に収めるとともに、GINKAN(東京都千代田区)が運営するグルメアプリ事業「シンクロライフ」を取得した。

機械商社のワキタもM&Aにアクセルを踏み込んだ。年間件数はコロナ前の2019年3件で、以降、20年0件、21年1件、22年1件で推移していたが、年明けの3カ月で3件に上った。建機レンタル・中古建機販売の大喜産業(滋賀県守山市)、建設用機械製造の大裕(大阪府寝屋川市)、福祉用具レンタルのニチイケアネット(東京都千代田区)を子会社化した。

前年首位のヨシムラ・フードはゼロ

2022年の年間件数トップはヨシムラ・フード・ホールディングスとケア21の各6件で、すべて買収案件だった。では、この両社の今年の動静はどうか。ヨシムラ・フードはゼロ件とここまで音なし。一方、ケア21は1件で、1月に事業の買収を発表した。

◎2023年1~3月M&A:企業別の件数ランキング(適時開示ベース)

3件 電通グループ、ミンカブ・ジ・インフォノイド、ワキタ
2件 ENEOSホールディングス、ITbookホールディングス、JMホールディングス、LIFULL
SHIFT、TIS、アイドマ・ホールディングス、イオレ、稲畑産業、インパクトホールディングス
キムラタン、ソラスト、ダイキアクシス、トランスジェニック、日創プロニティ、バルテス
芙蓉総合リース、プロジェクトカンパニー、プロパティエージェント、プロルート丸光
三井化学、三井物産、森永乳業、リビングプラットフォーム

文:M&A Online