M&A活性化へ経産省が新指針

経済産業省の公正な買収の在り方に関する研究会は4月28日、企業価値を高めるM&Aの活性化を促進するための新たな買収指針案を取りまとめた。近年は対象会社の同意を得ずに市場外で株式を取得する敵対的買収が増加している中、株主利益を置き去りにした買収防衛策の濫用にどこまでブレーキをかけられるかが注目される。

市場の公正性を高めて望ましい買収を

とりわけ敵対的買収は対象会社の経営陣が頑なに拒んだり、対抗措置を発動されたりするリスクがある中、買収者が買収の撤回・中止を余儀なくされてしまうことも多かった。一方で、2017年以降は敵対的買収への対抗措置に対する機関投資家の反対票が目立ち、対抗措置の発動や差し止めを巡る司法判断も増えている。

マネジメント・バイアウト(MBO)、支配株主による従属会社の買収では2019年に策定された公正なM&Aの在り方に関する指針に基づく公平性担保措置が積極的に用いられ、公平性の確保が意識されてきている。新たな指針はこうした潮流を踏まえ、公正なM&A市場の市場機能の健全な発揮により望ましい買収が生じやすくすることを目指した。

例えば、指針案の「望ましい買収の原則」には株主利益の確保も盛り込んだ。企業価値は株主以外のステークホルダーの利益も含む概念として捉えられることから、「企業価値の概念を曖昧にして経営陣の保身や従業員を守るための道具とすべきではない」と釘を刺している。

敵対的TOBについては、経営陣が受け取った提案を取締役会に付議しないまま拒否するケースも見受けられる。このため、経営支配権を取得する買収提案が記された提案書を受領した場合は速やかに取締役会に付議・報告することを原則とした。

新指針案では買収提案が具体的で一定の信用力があれば、望ましい買収が顕在化する機会を失わせるべきではないとしている。その上で、「対抗措置の発動の必要性は一般的には乏しいと考えられ、対抗措置の発動は抑制的に考える(もしくは発動の余地を排した設計とする)ことが、望ましい買収を阻害しないためには有益」との姿勢を示した。

指針案の英語版も準備

経産省はこれまでも企業買収に関する公正なルール形成を目的とした指針や報告書を定めてきたが、日本企業による海外企業の買収と比べ、日本企業を買収対象とした動きは鈍いのが実情だ。経営の効率化や開発リソースの適正配分を図る事業再編などが停滞すれば、国際的な競争力が低下するのは避けられない。

同研究会は2022年11月に発足し、これまでに計8回の論議を重ねてきた。今後は指針案の英語版も準備し、改めて意見を募った上で最終版を公表する予定。

関連リンク:第8回 公正な買収の在り方に関する研究会(METI/経済産業省)

文:M&A Online