競争が激化しているスマートフォン事業からの撤退が相次いでる。電子部品を主力とする京セラ<6971>は2023年5月15日に、買い替えの期間が長期化し採算が悪化している個人向けのスマートフォンの販売を取り止めると発表した。

調理家電などを手がけるバルミューダ<6612>は、原材料価格の高騰や円安などで新機種の開発が困難になったためスマートフォン事業から撤退することを2023年5月12日に決めた。

日本では米アップルのスマートフォン「アイフォン」が半分ほどのシェアを持っており、他社製品は厳しい状況に置かれている。原材料価格の高騰が続き事業環境が一段と悪化すれば、さらなる撤退もありそうだ。

法人向けスマホは強化

京セラは2025年3月期に個人向けスマホの販売を終了する。すでに2023年3月期に新機種の開発は終了しており、これまで開発にかかわってきた技術者などの経営資源は5G通信向けインフラ機器の開発などに振り向ける。

またスマホ関連事業の主力である法人向けのカスタム機器開発や通信サービスについては今後も力を入れていく計画で、合わせてICT(情報通信技術)サービスやエンジニアリング事業の拡大にも取り組む。

こうした施策で2023年3月期に2078億円だったスマホ関連事業の売上高を2026年3月期には2700億円に高める計画だ。

新分野の商品開発に注力

一方、2021年11月に「バミューダフォン」を投入し、スマホ事業に参入したバルミューダはわずか2年ほどでの撤退となった。同社では第2弾製品となる後継機の開発に取り組んできたが、原材料価格の高騰と急激な円安で、2022年後半には開発続行が困難になっていた。

その後、別モデル開発の協議や検討を続けていたが、為替をはじめさまざまな条件が整わなかったため開発を中止することにした。

スマホ事業の売上高は2021年12月期が28億4700万円で、2022年12月期は8億6800万円に縮小していた。また同社はスマホ事業の終了に伴い、5億3600万円を特別損失に計上した。今後は既存の家電事業の強化と、新しい分野の商品開発に経営資源を集中する。

文:M&A Online