AWL(東京都千代田区)はエッジAI(人工知能を搭載したデバイス上で情報を処理する)カメラソリューションベンチャー。2016年6月にエーアイ・トウキョウ・ラボとして発足した。2015年に同大大学院情報科学研究院情報理工学専攻の川村秀憲教授との共同研究に取り組み、北海道大学発のベンチャーとしてディープラーニング技術の社会実装を目指している。
カメラの画像をエッジAIで的確に分析
2017年、北大内に開発拠点となる「AI HOKKAIDO LAB」を開設。2019年2月、現社名に変更した。現在は札幌市にも本社を構える。
同社が開発した「AWL Lite」は、簡単に装着できるデジタルサイネージ(電子看板)用AIカメラ。「どのような人物が通りかかるのか」「サイネージを見ているのか」などを、AIが画像データから分析している。
例えば子供が通りかかる時間帯には菓子や玩具の広告を優先的に表示するなど、広告効果の高い運用ができるのが強み。
デジタルサイネージがなくても、タブレット端末などにアプリをインストールすれば同様のサービスを受けられる。収集した画像データは分析後に消去され、プライバシーは保護されるという。このAIデジタルサイネージはエレベーターにも搭載され、全国で1万台の設置が決まっている。
研究開発拠点ではスタッフの8割が外国人
一方、「AWL BOX」は店舗に設置した既存の防犯カメラの画像をAI解析するソリューション。画像データから来店人数や性別・年齢を判断するほか、どの棚の前で立ち止まっているのか、どのような商品を手にとっているのかなどを分析。さらには不審者や商品棚の欠品などの警告も出せる。
同社は北大の留学生を中心に外国人従業員の雇用にも積極的で、約20カ国の出身者が働いている。研究開発機能がある札幌本社では、8割以上が外国人社員だ。
北海道のスキーリゾートでは、円安もあって欧米や豪州などからの外国人旅行者が多く、外国人相手のショップやレストランも多い。そのためスタッフの多国籍化は、同社のAI店舗運営支援システム開発にも有利に働く。
今後は店舗以外のオフィスや工場、倉庫、病院、学校などに設置された防犯カメラをAI化し、事業の改善や効率化に役立てるサービスに取り組む。
既存のカメラをAI化することで、「防犯カメラ」を「事業分析・改善カメラ」に低コストでグレードアップさせる試みだ。防犯カメラは街の至るところに設置されており、今後の利用拡大が期待できる。
2020年2月にはアスカネットや共同通信デジタル、サイバーエージェント、凸版印刷などから、シリーズAラウンドで総額8億1000万円の資金調達に成功するなど、注目度の高いベンチャーだ。
文:M&A Online