地図に載っていない「キタ」と「ミナミ」って?

一般的に大阪梅田・北新地駅周辺を「キタ」、難波駅・道頓堀周辺を「ミナミ」と呼んでいます。

キタとミナミ
(画像=キタとミナミ、「RENOSY マガジン」より引用)

エリアは人によって、また時と場合によって、より広範囲なエリアを「キタ」「ミナミ」に含める場合もあります。この呼び名は江戸時代に始まったそうで、時代によっても範囲が変化しています。大阪に親しみのない人に向けて、まずは大阪の「キタ」と「ミナミ」を簡単に紹介します。

大阪の中心、ターミナル的存在のキタ

グランフロント大阪
(画像=グランフロント大阪、「RENOSY マガジン」より引用)

「キタ」は、大阪梅田駅を中心に複数の路線が地下でつながっています。大阪市内はもちろん、兵庫、神戸、そして広域「キタ」に位置する新幹線の新大阪駅を含めると、東京や名古屋などとも行き来ができ、大阪の陸の玄関口となっています。オフィスと商業施設がひしめき合っています。

大阪らしい文化発祥の地、ミナミ

道頓堀
(画像=道頓堀、「RENOSY マガジン」より引用)

「ミナミ」は、道頓堀川沿いの「グリコの看板」といえば見聞きしたことがあるかもしれない道頓堀(戎橋 えびすばし)周辺や難波駅周辺、北に位置する心斎橋などが含まれます。

脚が動く「かに道楽」の看板など、大阪らしい飲食店が発展した街で、国内外からの観光客でもにぎわいます。また「アメリカ村」など若者文化発祥の地も含まれています。

大阪市の大規模再開発

開発は「キタ」が中心となっています。しかしキタにとどまらず、新たに「ニシ」とも呼ばれるエリア開発にも注目が集まっています。日本のみならず世界からも注目される街として今後も発展が期待されている中、大小さまざまな再開発をご紹介します。

キタの開発

グランフロントの東側で工事が始まったうめきた2期開発事業の様子(2021年5月26日編集部撮影)
(画像=グランフロントの西側で工事が始まったうめきた2期開発事業の様子(2021年5月26日編集部撮影)、「RENOSY マガジン」より引用)

大阪市で進められている再開発で規模が大きいのは、2002年から開発が始動した「うめきたプロジェクト」です。JR大阪駅北に位置する約24haで、一区画は2013年に「グランフロント大阪」として開業しました。現在、うめきた2期プロジェクト「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」が進められています(約17ha)。

うめきた2期地区開発プロジェクト「グラングリーン大阪」

うめきた2期開発事業は、2020年12月から南街区賃貸棟、2021年2月から北街区賃貸棟の工事がスタートしています。

大阪に少ないといわれている大型オフィス(基準階面積約 4,100m2)をはじめ、高級ホテル・MICE施設・都市型スパを含む商業施設のほか、北街区と南街区の間に都市公園が誕生します(2024年4月に北街区、11月に南街区が竣工予定)。

うめきた2期地区全景(完成予想イメージ)
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:うめきた2期地区全景(完成予想イメージ)|「(仮称)うめきた 2 期地区開発事業」工事着手 大阪駅前に約 45,0002の都市公園を含む新たな街が誕生(PDF)
うめきた2期開発事業 配置図
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:うめきた2期開発事業 配置図|「(仮称)うめきた 2 期地区開発事業」工事着手(PDF)

賃貸棟完成の後に南北の分譲棟が完成すると、うめきたプロジェクト全体が完了となります。

南街区賃貸棟(左:東棟 右:西棟)外観(完成予想イメージ)
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:南街区賃貸棟(左:東棟 右:西棟)外観(完成予想イメージ)||「(仮称)うめきた 2 期地区開発事業」工事着手(PDF)

関空へのアクセスも向上する、大阪駅地下の新しい改札

うめきたプロジェクトと連動して、JR大阪駅に新しい地下ホーム(大阪駅21~24番線ホーム)が2023年3月18日に誕生しました。どのような列車にも対応可能なフルスクリーンのホームドアが設置されたり、顔認証で通ることができる改札など、新しい技術が導入されています。

新しいホームには、特急「くろしお」「はるか」が停車、おおさか東線の列車が乗り入れます。

大阪駅の新駅ビル「イノゲート大阪」が2024年秋に開業すると、地下ホームとの移動はさらにスムーズになりそうです。

(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:大阪駅(うめきたエリア)開業に伴うアクセス(PDF)|JR西日本

鉄道の地下化によって、線路で分断されていたまちが一体化します。そしてこの地下駅によって関西国際空港へアクセスしやすくなり、また大阪以外の広域アクセスの強化にもつながることが期待されています。

東海道線支線地下化・新駅設置
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:東海道線支線地下化・新駅設置:JR西日本

なにわ筋線の誕生

大阪都心のみならず、京阪神の広域鉄道ネットワークの拡充、関西国際空港とのアクセス強化を目指し、新しい路線「なにわ筋線」が2031年開業を目標に計画が進んでいます。

なにわ筋線は南北に伸びる路線です。2023年3月に開業した大阪駅(うめきたエリア)と、南に位置する南海電鉄・南海本線の新今宮駅までがつながります。

なにわ筋線路線拡大 MAP引用:なにわ筋線路線拡大 MAP|関西高速鉄道株式会社│なにわ筋線
中之島駅 ・西本町駅・南海新難波駅が誕生する予定

なにわ筋線開業によって、例えば、大阪梅田と関西国際空港間の所要時間が現在は最速でJRで64分・南海線では乗り換え1回で54分かかるのが、JRで44分・南海線は乗り換えなしで45分となる予想です。

大阪市内を走る既存路線の混雑緩和も予想されています。

さらに、大阪駅と新大阪駅を結ぶ「新大阪連絡線」計画が実現することとなれば、ますますアクセスしやすくなることが予想されています。

2025年の大阪・関西万博

大阪・関西万博は、大阪市の西側、此花区(このはなく)の人工島「 夢洲(ゆめしま)」で半年間にわたって開催されます(2025年4月13日〜10月13日)。

来場者数は約2,820万人、経済波及効果は約2兆円(消費支出約1.1兆円・建設費約0.4兆円・運営費約0.5兆円 )と試算されています。

比較のために、2005年愛知県で開催された愛知万博(愛・地球博)での経済効果は、中部国際空港などを含めた広域交通網の整備等を含めた場合で約3兆5千億円、会場までに必要なアクセスに限定したケースでも1兆1千億円を超える効果だった結果が出ています(建設・運営・来場者の消費した支出の総額)。

愛知万博の開催によって、全国で約45万人、少なくとも約16万人の雇用が生まれた結果も出ています(参照:愛・地球博の経済効果に関する評価報告書 2005 年11月|財団法人 2005 年日本国際博覧会協会 株式会社UFJ総合研究所[PDF])。

2005年の愛知万博では海外からの入場者は約4.6%でしたが、世界は20年間でよりグローバル化が進んでおり、海外からの来場者は増えるかもしれません。

夢洲の隣の島「咲洲(さきしま)」では、大阪・関西万博開催を見込んで15階建て330戸のマンションも2021年に完成しています。

大阪・関西万博会場イメージ図 (提供:2025年日本国際博覧会協会)
(画像=大阪・関西万博会場イメージ図 (提供:2025年日本国際博覧会協会)、「RENOSY マガジン」より引用)

大阪IR基本構想

大阪万博会場横の夢洲内に、新たなリゾート地(統合型リゾート:Integrated Resort)を作る「大阪IR基本構想」も、大阪府と大阪市では検討しています。

計画では、MICE施設を充実させ、世界中から人が集まるビジネスや商業イベントなどの開催が可能となるような場の構想となっているようです。

ミナミの開発

南海電鉄なんば駅前
(画像=南海電鉄なんば駅前、「RENOSY マガジン」より引用)

キタの開発よりも先に、2003年開業「なんばパークス」や2014年開業の「あべのハルカス」などミナミの再開発は先行して行われました。

また「大丸心斎橋本店本館」の建て替え・大丸心斎橋店北館の全面リノベーションで9年ぶりに再開した「心斎橋パルコ」が2020年11月開業するなど、開発状況はキタよりも落ち着きを見せています。

現在ミナミで計画されているプロジェクトには次のようなものがあります。

なんば駅前広場再編計画

歴史ある建物「南海ビルディング」がなんば駅になっている
(画像=歴史ある建物「南海ビルディング」がなんば駅(右)(2021年5月26日編集部撮影)、「RENOSY マガジン」より引用)

南海電鉄・南海本線のなんば駅前に、駅前広場を作ろうという構想です。人々がくつろげる空間に再編し、繁華街ミナミの新たなシンボル空間を生み出すという構想です(参照:なんばひろば改造計画)。

なんば駅南に33階建てホテル・商業ビル

LABI横の工事中の様子(2021年5月26日編集部撮影)
(画像=LABI横の工事中の様子(2021年5月26日編集部撮影)、「RENOSY マガジン」より引用)

なんばパークスの南側に、タイの高級ホテル「センタラ・ホテル&リゾート」が日本初進出のホテル「センタラグランドホテル大阪」として計画されています。

2020年に工事が始まっており、2023年7月に開業予定となっています。そのホテルの南側には、2023年1月に14階建てのオフィスビル「パークス サウス スクエア」が竣工しました。

オフィスビルの建て替え

大阪市内では、同時期に既存ビルの建て替え計画が相次いだことなどにより、2017年からオフィスの空室率が3%台となり、特に大型オフィスが足りないという現象が起きていました(参照:大阪ビジネス地区/2017年12月時点| オフィスマーケット情報 | 三鬼商事株式会社)。その後、次のようなオフィスビルおよび商業施設が完成または予定されています。

  • 本町サンケイビル(2021年8月竣工)
  • 大阪梅田ツインタワーズ・サウス(2022年2月竣工)
  • 日本生命淀屋橋ビル(2022年8月竣工)
  • アーバンネット御堂筋ビル(2024年1月竣工予定)
  • (仮称)心斎橋プロジェクト(2026年2月竣工予定)
  • 御堂筋ダイビル(2024年頃竣工予定)
  • JPタワー大阪(2024年3月竣工予定)
  • 淀屋橋駅東地区都市再生事業(2025年5月竣工予定)
  • 淀屋橋駅西地区第一種市街地再開発事業(2025年12月竣工予定)

新規施設の誕生

新たに誕生する施設は次の通りです。

  • 大阪中之島美術館(2022年2月開業)
  • 中之島4丁目用地における未来医療国際拠点整備・運営事業(2023年竣工予定)
  • 大阪公立大学(仮称)森之宮キャンパス (2025年開設予定)
  • 大阪モノレール延伸(2029年度開業予定)
  • リニア中央新幹線(2037年全線開通予定)
  • 北陸新幹線 敦賀〜大阪間開通(2046年開業予定)

主な企業

大阪市内に本社がある企業は300社以上あります。大阪市外には、パナソニック株式会社や株式会社シマノなどの本社があります。市内の代表的な企業は次の通りです。

企業名 従業員数
株式会社キーエンス 2,511人(単独)
ダイキン工業株式会社 6,891人(単独)
武田薬品工業株式会社 5,350 人(単独)
株式会社伊藤忠商事 4,343人(単独)
日本ペイントホールディングス株式会社 342人(単独)
株式会社クボタ 11,356人(単独)
大和ハウス工業株式会社 15,574人(単独)
塩野義製薬株式会社 3,596人(単独)
積水ハウス株式会社 14,041人(単独)
住友電気工業株式会社 6,020人(単独)
小野薬品工業株式会社 3,336人(単独)
日東電工株式会社 6,418人(単独)
株式会社ダイフク 3,047人(単独)
西日本旅客鉄道株式会社 25,381人(単独)
関西電力株式会社 19,744人(単独)

主な区の人口推移

開発地区を含む区の人口推移です。大阪市の中心に位置する、北区、中央区、福島区、西区、浪速区、天王寺区の6区で見てみます。

大阪市 区ごとの人口推移
(画像=大阪市の人口データをまとめRENOSYが独自作成、「RENOSY マガジン」より引用)

大阪市内の家賃相場

大阪市の区ごとの平均家賃相場は次の通りです。人口推移と同じ区を見てみます。

1K/1Rの賃料(平均値)
北区 66,543円
中央区 67,144円
福島区 67,224円
西区 66,782円
浪速区 64,749円
天王寺区 61,429円

RENOSY調べ 2021年

独自の発展が期待される大阪市

2025年の大阪・関西万博によって周辺地域の経済効果もおおいに予想される大阪市。大阪の陸の玄関口である大阪梅田駅周辺の開発が大阪市全体に、またそれぞれのまちにどのような変化をもたらしていくか、今後も注目です。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部
「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。