中小企業の事業承継を支援する機関として東京商工会議所に設置されている「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」は5月18日、2022年度の相談実績をまとめた。報告書によると、新規相談社数は前年度並みだったが、譲渡(売り)の相談が400社を突破して過去最多水準となった。2回目以降の相談を含めた総相談件数も同様の傾向で、事業承継に対する譲渡側のニーズの高まりが見て取れる。

東京都の支援センター 譲渡相談が過去最多

2022年度の新規相談社数は前年度比29件、2.9%減の973社だったが、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年度(908社)、2020年度(851社)を上回った。譲渡の相談件数は前年度比78社、21.1%の大幅増。一方、譲受(買い)は同105社減の506社で、2019年度(513社)と同水準で推移している。

■新規相談社数推移 単位:社

年度新規相談社数(計)うち譲渡(売り)うち譲受(買い)うちその他
2022年度
973
448
506
19
2021年度
1002
370
611
21
2020年度
851
210
575
66
2019年度
908
315
513
80

「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」各年度相談実績を基にM&A Online作成

一方で、総相談件数は前年度比148社減の1217件だった。譲渡は588件と前年度(547件)から増加し、総相談件数が1500件を超えた2019年度の589件に並んだ。コロナ禍の影響が続いた2022年度は、事業環境の停滞・悪化を懸念する企業の相談が増えたとみられる。

■相談件数推移(継続案件含む) 単位:件

年度相談件数(計)うち譲渡(売り)うち譲受(買い)うちその他
2022年度
1217
588
601
28
2021年度
1365
547
777
41
2020年度
1177
337
751
89
2019年度
1576
589
875
112

「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」各年度相談実績を基にM&A Online作成

成約件数は78件と2年連続のマイナスに

また、事業承継の成約件数は78件。2020年度(90件)並みまで持ち直した前年度(86件)から8件減少した。2019年度(75件)の水準は維持したものの、2年連続で前年度実績を下回った。

■成約件数推移 単位:件

年度相談件数(計)
2022年度
78
2021年度
86
2020年度
90
2019年度
75

「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」各年度相談実績を基にM&A Online作成

2020年度は新規相談社数、総相談件数とも譲受が譲渡の2倍を超えたが、両者の差は年々縮小している。2022年度の新規相談社数における差は58社、総相談件数は13社にとどまった。件数だけを見れば譲受と譲渡のアンバランスが解消されてきた中、2023年度はいかに成約に結び付けられるかが焦点となる。

同センターは「ポストコロナに向け、事業承継の動きはますます活発化している。連携する金融機関からの相談件数も増えている」と説明。引き続き、事業承継・M&Aの成約を目指した支援に力を入れていく姿勢を打ち出している。