M&Aで調剤店舗網を拡大

調剤薬局業界で現在、クオールホールディングスはアインホールディングス、日本調剤に次ぐ3位につける。ただ、2位の日本調剤とは売上高で1400億円超の開きがあり、事実上、2強状態ともいえる状況にある。

クオールHDは1992年に東京・日本橋兜町で現会長の中村勝氏が創業したことに始まる。自社出店とM&Aを組み合わせ、店舗数を拡大してきた。3月末の店舗数は892。コロナ禍前の2019年に800店舗を達成したが、その後、M&Aの遅れもあり、出店ペースが鈍った。

調剤薬局を対象とするM&Aが活発化し始めたのは2010年代以降。主な案件をみると、2013年にアルファーム(水戸市、33店舗)、14年にセントフォローカンパニー(同、35店舗)、16年に共栄堂(新潟市、85店舗)を相次いで子会社化した。2019年にセラ・メディック(堺市、10店舗)、21年に勝原薬局(兵庫県姫路市、11店舗)、ケーアイ調剤薬局(鹿児島県姶良市、8店舗)などと続いた。

今年1月には久々の大型案件として栃木県を中心に38店舗を展開するパワーファーマシー(宇都宮市)を子会社化。これを弾みに早期に1000店舗体制を整える構えだ。

もう一方の医療関連事業はどうか。今日、医療関連事業の屋台骨を担うのが2012年に子会社化したアポプラスステーション(東京都千代田区)だ。

アポプラスは1993年に創業以来、薬剤師、看護師、保健師などの医療系人材紹介・派遣事業を手がけ、2000年には国内企業として初めてCSO(医薬品販売業務受託機関)事業に乗り出した。

CSOはMRを自社で採用・養成し、派遣先の製薬会社で営業やマーケティングに携わる業務。アポプラスはMRについて業界最多の600人以上を抱える。

健康・介護関連の取り込みは?

クオールHDは2022年10月に創業30周年の節目を迎えた。しかし、足元の市場環境は同業間にとどまらず、調剤薬局を併設したドラッグストアとの競争が激しさを増している。業界全体の店舗数は約6万とコンビニを上回る。

また、超高齢社会の到来で国民医療費の削減が大きな課題となる中、薬価・調剤報酬引き下げが薬局経営を圧迫している。今年1月には電子処方箋の運用がスタートし、薬局運営におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)対応も待ったなしだ。

2024年3月業績予想は売上高5.9%増の1800億円、営業利益5.3%増の100億円。売上高は中期目標とする3000億円のようやく6割、営業利益は4割にとどまる。

「総合ヘルスケアカンパニー」への道程では健康関連、介護関連といった新たな領域を取り込む可能性も十分に考えられる。どんなM&Aが繰り出されることになるのか、要ウオッチといえそうだ。

◎クオールHDの歩み

主な出来事
1992 調剤薬局のクオールを設立
2003 治験関連事業を開始
2006 大証ヘラクレス市場に上場
2007 医療・医薬系出版の第一メディカル(現メディカルクオール)を子会社化
2008 労働者紹介・派遣事業を開始
2011 東証2部上場(2012年東証1部、2022年から東証プライム)
2012 医療・医薬専門職業紹介・派遣のアポプラスステーション(東京都千代田区)を子会社化
2013 アルファーム(水戸市)を子会社化
2014 セントフォローカンパニー(水戸市)を子会社化
2016 共栄堂(新潟市)を子会社化
2018 持ち株会社制への移行に伴い、クオールホールディングスを発足
2019 藤永製薬(東京都千代田区)を子会社化
セラ・メディック(堺市)を子会社化
2021 勝原薬局(兵庫県姫路市)を子会社化
ケーアイ調剤薬局(鹿児島県姶良市)を子会社化
2023 1月、パワーファーマシー(宇都宮市)を子会社化
5月、第一三共エスファ(東京都中央区)を2024年4月に子会社化すると発表

、文:M&A Online