この記事は2023年6月7日に「CAR and DRIVER」で公開された「【最新モデル試乗】気持ちいいハンドリング!トヨタ・アクアGRスポーツをクルマ好きに勧める理由」を一部編集し、転載したものです。
トヨタ・アクアGRスポーツ 価格/THS 259万5000円 試乗記
気持ちのいいハンドリングを目指し各部を調律
「ちょっとスポーティなアクア」。先ごろ登場したアクアGRスポーツは、そんな表現がしっくりくるコンパクトカーだ。
トヨタの「GR車両」には2タイプある。足回りの強化や内外装だけではなく、パワートレーンにもふんだんに手を加えてサーキット走行を射程に収めたのが、トヨタGAZOOレーシングが誇るGRモデル。一方のGRスポーツは、ややマイルドな設定で、快適性をあまり犠牲にしていないのが特徴。GRモデルとは異なり、パワートレーンが基本的にスタンダードモデルと共通な点もGRスポーツの個性といえる。
2代目となるアクアGRスポーツは、前後オーバーハングを標準比20〜25mm延長して伸びやかなスタイリングを実現。さらに床下ブレースやリアバンパーリインフォースでボディ剛性を向上させたほか、フロントスプリング、前後ダンパー、フロントスタビライザー、各種ブッシュを強化して走りのしっかり感を高め、「旋回性能重視のハンドリングに仕上げた」とメーカーは説明する。
ワインディングロードを試してみると、コーナリング時のロール量はベース車とほぼ同等。とはいえブレーキング時のノーズダイブが確実に抑えられ、ステアリングを切り込んでからクルマが曲がり始めるまでの「待ち時間」が少ない。素早くレスポンスしてくれる点が好ましい。
同じタイミングで試乗したヤリスクロスGRスポーツに比べると、アクアGRスポーツは全高が低い(=重心が低い)。このため、ヤリスクロスほどはっきりと足回りを固めなくても、同程度のコーナリング性能を実現しているように思えた。
適度な硬さが快適な乗り心地に貢献しているのは間違いないところ。このためヤリスクロスで気になったゴツゴツ感がほぼ一掃されており、質感の高いコンパクトスポーツに仕上がっていた。
内容を考えるとリーズナブル。走り好きに最適なHV
アクアGRスポーツは価格設定もなかなか巧妙だ。上から2番目のGグレードをベース車とすることで、最上級のZグレードとの価格差を19万5000円に抑えている。内容を考えると、非常にお買い得といっていい。GRスポーツはアクア全体の5〜10%程度を占めると予想される重要グレード。ユーザーが買いやすいと感じる配慮も大切である。
ちょっと気になったのは、同じGRスポーツでもアクアとヤリスクロスでは、乗り味がやや異なっていたこと。ヤリスクロスのほうが1段階か2段階、足回りを硬く感じた。「これではGRスポーツの立ち位置があいまいになってしまうのではないか?」 そう担当者に質問すると、「いまはベースモデルでは飽き足らないスポーティ志向のお客さまがGRスポーツを購入してくれています。GRスポーツの統一感よりもベースモデルとの差分を揃えるほうを重要と考えている」との答えが返ってきた。この回答はしっくりと腑に落ちた。新型アクアGRスポーツは、安心感が高く、しかも走りが軽快なトヨタ車として、これまで以上に多くの支持を集めることだろう。
アクアGRスポーツ主要諸元
グレード=GRスポーツ
価格=THS 259万5000円
全長×全幅×全高=4095×1695×1485mm
ホイールベース=2600mm
トレッド=フロント:1470/リア:1465mm
車重=1150kg
エンジン=1490cc直3DOHC12V(レギュラー仕様)
最高出力=67kW(91ps)/5500rpm
最大トルク=120Nm(12.2kgm)/3800〜4800rpm
モーター最高出力=59kW(80ps)
モーター最大トルク=141Nm(14.4kgm)
WLTCモード燃費=29.3km/リッター(燃料タンク容量36リッター)
(市街地/郊外/高速道路:31.0/30.9/27.7 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=205/45R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m
フォトギャラリー
(提供:CAR and DRIVER)