ストライク<6196>は2023年6月21日、東京都内で「スタートアップ企業の成長戦略における、レガシー企業とのM&A」をテーマとする「Conference of S venture Lab.」を開いた。スタートアップによるオープンイノベーション事例を紹介するイベントで、今回が10回目の開催となる。

レガシー企業買収のShippio、わずか2ヶ月でシナジー

トークセッションでは貿易管理クラウドを手がけるShippio(シッピオ、東京都港区)の佐藤孝徳最高経営責任者(CEO)が、1960年に創業した協和海運(横浜市)を2022年に9月に買収した経緯を語った。Shippioは通関手続きで必要となる書類の作成時間を半減するクラウドサービスを展開している。

同社は現場の課題を洗い出し、より使いやすいサービスを展開するために自社で通関事業も手がけようとしたが、免許事業で新規参入が難しいことから通関事業者の買収に踏み切った。レガシー企業のPMI(買収後の経営統合作業)では苦労もあったそうだ。

買収した協和海運は業務が紙とオンプレミス(企業がサーバーやネットワーク機器などのハードウェアを所有し、自社で運用管理する)で進められており、PMIは「紙のデータをエクセルに打ち込むことから始まった」(佐藤CEO)という。しかし、買収から2カ月後には早くも事業シナジーが現れた。「長年にわたる経営で培った協和海運の知見や顧客が、Shippioの事業にプラスに働いた」のだ。

M&Aでは歴史の長い大手企業が設立したばかりのスタートアップを買収するのが「当たり前」。ShippioのM&Aは、スタートアップがレガシー企業を買収する「逆パターン」で注目される。佐藤CEOには「買収したレガシー企業をどこで、どうやって見つけたのか」との質問が多く寄せられたという。


お金があればすぐに買収できるわけではない

これに対して佐藤CEOは「先方にどうやって(買収を)納得してもらうのかが最も大事」と強調する。レガシー企業の経営者は「誰に事業を引き継ぐべきか」「どのような事業承継が従業員や顧客にとってベストなのか」を真剣に考えており、お金があればすぐに買えるわけではないのだ。

「M&Aを結婚と考えれば、求婚時に結婚後の生活を具体的に説明できるかどうかにかかっているのと同じ」と、佐藤CEOは説明する。スタートアップによるレガシー企業の買収は、自社の経営ビジョンが買収される企業の歴史や強みと合致し、共に成長できる未来を示せるかどうかにかかっていると言えそうだ。

併せてスタートアップ企業5社によるピッチ(売り込みのためのプレゼンテーション)があり、医療・介護機関向けマネジメントシステム事業やコンサルティング事業を手がけるエピグノ(東京都中央区)、ウェブ接客ツール「OPTEMO」を提供するジェイタマズ(東京都千代田区)、人材派遣のコクー(同)、デジタルコミュニティプラットフォームのテイラーワークス(東京都渋谷区)、人工知能で受発注書や見積書などのデータ入力を自動化するbatton(東京都港区)の5社が自社の製品やサービスの優位性をアピールした。

M&A Online

(画像=会場も熱気に包まれたスタートアップ5社によるピッチ、「M&A Online」より引用)

次回の「Conference of S venture Lab.」は2023年7月11日に札幌市で開催、同18日には東京で開催する。

文:M&A Online