金融機関の証券口座を複数利用する3つのメリット
証券口座は、証券会社や銀行などの金融機関ごとに一人一口座しか開設できません。しかし、複数の金融機関に一つずつ口座開設することはできます。金融機関を複数利用することで、主に次の3つのメリットがあります。
さまざまな情報が手に入る
各金融機関では、お客様にもっと利用してもらうようにするために、資産運用に役立つさまざまな情報を提供しています。なかには、口座開設をするだけで有料の情報が無料で手に入るケースも。複数の口座を開設することで、情報もたくさん手に入ります。
IPOの当選確率が上がる
未上場の企業が株式市場に上場するIPO(新規公開株)。上場して最初につく価格(初値)が上昇しやすいとあって人気なのですが、投資家が殺到して抽選になることも多くあります。しかし、IPOの銘柄を扱う証券会社は銘柄ごとに異なるので、複数の金融機関に口座があれば、応募回数も増やせますし当選確率も上げられます。
万が一の事態にも対処できる
突然金融機関にシステムエラーが発生して、取引できなくなるという事態もないとはいえません。それで売買できずに、結果として利益を逃したり損失を被ったりしても、それは自分の責任になってしまいます。もし金融機関を複数利用していれば、そうした万が一のときにも対処できるでしょう。
メインの金融機関を決めて、サブの金融機関を付け加えよう
金融機関の複数利用にはメリットがあるとはいえ、あまりに多すぎるのはおすすめしません。金融機関が多すぎると、どこでどんな投資をしているのかの管理が大変です。情報もたくさん手に入るでしょうが、何が大事なのかがかえってわかりにくくなってしまいます。
各金融機関に入金するのも手間ですし、取引に必要なIDやパスワードもいっぱい覚えなければなりません。これでは大変ですね。
おすすめは、さまざまなサービスを手掛ける大手ネット証券をメインの金融機関として、そこにサブの金融機関を付け加えること。大手ネット証券では主だった投資は一通りできますし、手数料も安く設定されています。ここに、より優れた部分のある金融機関をサブで付け加えていくことで、各金融機関の長所を生かしつつ資産運用ができます。
メインの金融機関:本命は楽天証券
メインの金融機関とする大手ネット証券。そのなかで総合的におすすめできるのは楽天証券です。
楽天証券は楽天グループの証券会社。近年、急速に口座数を増やしており、2021年12月には700万口座を突破。株式投資(国内・外国)はもちろん、投資信託・債券・FX(外国為替証拠金取引)・金投資など、主だった投資は一通りできます。
手数料も安く、例えば株式投資では定額制の「いちにち定額コース」を利用すると1日の約定代金合計100万円まで無料。2,600本以上扱う投資信託の買付手数料もすべて無料になっています。
楽天グループのシナジーも
楽天証券では、楽天グループのサービスを併用するとお得になるサービスもさまざま。
例えば、楽天カードのクレジットカード決済で投資信託の積み立てを利用(毎月5万円まで)すれば、100円につき1ポイントの楽天ポイントを受け取れます。2021年12月からは、米国株の積立投資もスタート。近年話題の「FIRE」(経済的自由と早期リタイア)で人気を集める銘柄にも積立投資ができます。
さらに、楽天銀行と楽天証券の口座を連携する「マネーブリッジ」を利用すれば、証券口座にお金を移動する手間が省けるうえ、楽天銀行の預金金利が0.1%にアップします。
スマホアプリ「iSPEED」では、本来は有料の会社四季報や日本経済新聞のコンテンツを無料で読むことができます。また、投資情報サイト「トウシル」でも、投資に役立つ情報が日々更新されています。
楽天ポイントを活用も
楽天ポイントは、投資信託や株式投資の代金や手数料に充てることができます。楽天ポイントを1ポイント以上利用して1回500円以上の投資信託を購入すると、楽天市場ので買い物の際に貯まる楽天ポイントが+1倍される「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)の対象になります。
メインの金融機関:次点は、SBI証券
SBI証券はSBIグループの証券会社。こちらも口座数は600万口座を突破している、多くの方に選ばれている証券会社です。楽天証券と同様、株式投資・投資信託・債券などといった、主だった投資は一通りできます。会社四季報も無料で読むことができます。
SBI証券の株式手数料は、20歳〜25歳までであれば無料。26歳以上でも、1日定額の「アクティブプラン」ならば、1日の約定金額100万円までの手数料は無料になります。
手数料が発生する場合も、投資信託や国内株式などの取引に応じて、TポイントやPontaポイントを貯めることができます。TポイントやPontaポイントは、投資信託の買付代金としても利用できます。これらのポイントを普段から貯めている方は、使いやすいですね。
また、「SBIハイブリッド預金」によってSBI証券と住信SBI銀行の口座を連携することも可能。普通預金の金利が0.001%から0.01%に優遇され、銀行・証券間のお金の移動の手間も減らせます。
【目的別】サブの金融機関候補
メインの金融機関が決まったら、サブの金融機関も確認していきましょう。
米国株の積立投資をするなら?
楽天証券より前から、SBI証券・マネックス証券・PayPay証券といった証券会社では、米国株の積立投資サービスを手掛けています。
マネックス証券の「配当金再投資サービス」を利用すると、米国株で得られた配当金で自動的に同じ銘柄を買い付けることができるので、複利効果を生かしながらお金を増やすことが可能。
PayPay証券では、1,000円から米国株に投資できます。より少額から米国株に投資ができますし、もちろん積立投資もできます。
IPO投資をするなら?
楽天証券が少々弱いのはIPO投資。IPO銘柄を扱う「幹事証券会社」になる機会がそれほど多くありません。この点、SBI証券やマネックス証券では多くの幹事証券会社を務めているため、IPOに申し込む機会も増えます。
SBI証券はIPO銘柄をメインで取り扱う「主幹事証券会社」を手掛けることもあります。主幹事証券会社は、販売する株数も多いので、当選確率が高まるでしょう。そのうえ、SBI証券ではIPOの抽選に外れたときにもらえる「IPOチャレンジポイント」を貯めると、次回以降の当選確率をアップさせることも可能です。
スマホだけで投資するなら?
近年、スマホだけで口座開設から売買まですべて完結する「スマホ証券」が人気です。楽天証券やSBI証券といったネット証券でもスマホアプリを利用した売買ができますが、スマホ証券ではより少額から、わかりやすいインターフェースで売買ができます。
スマホ証券のおすすめはLINEで投資できるLINE証券です。株式や投資信託がスマホひとつで取引できます。「いちかぶ」では、1,500銘柄以上を1株単位で購入可能。100株単位なら投資に数万円、数十万円と必要になりますが、1株単位なら数百円、数千円で購入できます。ときどき開催される「株のタイムセール」では、指定の銘柄を最大7%引きで購入できます。
つみたてNISA・iDeCoを利用するなら?
つみたてNISAは年間40万円までの投資の利益を非課税にする制度、iDeCoは節税しながら60歳以降に受け取る「じぶん年金」を作る制度です。
これらの制度は、メインの金融機関で一緒にスタートするのがおすすめ。楽天証券・SBI証券・マネックス証券といった大手ネット証券では、つみたてNISAの対象投資信託のほとんどを取り扱っていますし、iDeCoの商品ラインナップにも、手数料の安いものが充実しています。
窓口で相談したいなら?
ネット証券のサービスは充実していますが、実店舗の窓口がないので、相談したいことがあるときに直接相談できません。イオン銀行やろうきん(労働金庫)などでは、投資信託やつみたてNISA・iDeCoのサービスが充実。株式投資はできませんが、不明点があるときに気軽に相談しやすいでしょう。なかでもイオン銀行は、土日も営業しています。
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