2023年上期(1-6月)のサーチファンド(個人が投資家からの資金援助を受けM&Aによって経営者になる仕組み)による事業承継件数が5件に達し、2022年、2020年の年間件数に並んだ。

事業承継策の一つとしてサーチファンドへの関心が高まり、サーチャー(事業承継先を探している個人)の活動が活発化しているため、2023年は通年でサーチファンドによる事業承継件数が過去最高を更新する可能性は高そう。

後継者が不在の中小企業は少なくなく、事業承継が大きな問題になる中、中小企業庁はこのままでは多くの雇用が消失するとして警戒を強めている。サーチファンドは後継者問題解決の一助となるだろうか。

Growthix Investmentが集計

サーチファンドを運営するGrowthix Investment(グロウシックス・インベストメント、東京都中央区)が公開情報を集め、まとめた。

サーチファンドによる事業承継は2015年に1件が実現した後、4年ほどは動きがなかったが、2020年に5件の案件が実現。2021年は再び動きが止まったものの2022年に5件が実現し、2023年に入って動きが加速している。

その2023年は2月に大富涼氏が玩具などの製造卸のアレスカンパニー(千葉県松戸市)の社長に就任したのを皮切りに、岡部祐太氏が住宅設計、施工、販売のフレスコ(千葉市)の、唐澤宏誌氏が農業関連の三笠産業(山口市)の経営を引き継いだ。

さらに4月に田中聡氏がゴルフシュミレーター販売代理店のディオントーキョー(東京都新宿区)の、6月に中島祐氏がエアコン部品製造の鹿島精機工業(神戸市)の社長に就任した。

M&A Online

(画像=Growthix Investment調べ、「M&A Online」より引用)

後継者難倒産が2番目の多さに

東京商工リサーチが2023年7月10日に発表した2023年上期(1-6月)の「後継者難」倒産調査によると、2023年上期に後継者が不在のため倒産(負債1000万円以上)した企業は209社だった。上期では2年ぶりに前年同期を下回ったものの、2013年以降、最多だった前年同期(225社)に次ぐ2番目の多さだったという。

要因別で見ると、代表者の「死亡」が99件で最も多く、「体調不良」の76件、「高齢」の24件と続いた。業種別では、建設業とサービス業他が最も多い50件で、次いで製造業の38件、卸売業の27件、小売業の22件の順だった。

東京商工リサーチでは、「サーチファンドが注目され始めている」としたうえで、「経済活動が平時に戻るなかで、中小企業の事業承継や後継者育成に本格的な支援が必要な時期を迎えている」分析している。

文:M&A Online