関西電力、クラレが7月に入り、グループ会社が経営するゴルフ場の売却を相次いで発表した。いずれも事業ポートフォリオの見直しの一環で、本業とかけ離れた事業を手放す。こうした上場企業による同様の動きはコロナ禍以降じわり広がっており、日本製鉄、シキボウ、大林組などが傘下のゴルフ場を売却した。
関電、「武庫ノ台ゴルフ」を手放す
関西電力が売却するのは子会社の関電アメニックスが持つ武庫ノ台ゴルフ(神戸市)。神戸市最北端に位置し、北摂連山を望む。開業は1966年で、関西有数の上質パブリックコースとされる。ゴルフ場専業大手のパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)に10月2日付で売却する予定だ。
関電アメニックスは武庫ノ台ゴルフの売却に続き、ゴルフ練習場「尼崎テクノランド」(兵庫県尼崎市、180打席)の営業を2024年3月末に終了する。
クラレは子会社の入間カントリー倶楽部(埼玉県越生町)をホテル・ゴルフ場大手のリソルホールディングスに8月31日付で売却する。入間カントリーの開業は1977年。都心近郊の丘陵林間コースとして長年、ゴルファーの支持を得てきた。ゴルフ場業界を取り巻く事業環境が変化する中、さまざまな検討を重ねた結果、新たなオーナーに経営を託すことが将来な成長につながると判断したという。
ゴルフ場をめぐっては少子化、団塊世代の高齢化などでゴルファー人口の趨勢的な減少が続き、新型コロナ禍がメンバーの会員退会を加速した。一方、ゴルフはコロナ感染リスクが低いスポーツとして若者を中心に人気が高まるなどの好材料が見られるものの、かつてのような大人数のコンペ需要は戻っていないとされる。
ゴルフ場売却、素材産業が目立つ
シキボウは2022年12月、マーメイド福山ゴルフクラブ(現福山東ゴルフクラブ、広島県福山市)を売却した。同クラブの開業は1980年。譲渡先のバンリューゴルフ(兵庫県姫路市)は国内に15ゴルフ場を経営する専業中堅だ。
日本製鉄は2021年5月、金乃台カントリークラブ(茨城県牛久市、1964年に開業)を売却した。売却先はやはりゴルフ場専業の太平洋クラブ(東京都港区)。
2020年3月には、UBE(旧宇部興産)が宇部72カントリークラブ(山口市)を手放した。同クラブは4コースを持つ西日本最大級のゴルフ場で、1960年に開業。「宇部にもゴルフ場を」という地域の要請に本社を置く宇部興産がこたえた。
宇部72を買収したのはゴルフ場運営の市川興業(東京都練馬区)。同社は2018年、ダイワボウホールディングスから赤穂国際カントリークラブ(兵庫県赤穂市)を傘下に収めている。
傘下のゴルフ場の売却例をみると、繊維、化学、鉄鋼といった伝統的な素材産業が目立つ傾向にある。