この記事は2023年7月26日に「CAR and DRIVER」で公開された「ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開」を一部編集し、転載したものです。


ランボルギーニが2024年シーズンのFIA世界耐久選手権ハイパーカークラスと、IMSAスポーツカー選手権GTPクラスに参戦するハイブリッドレーシングプロトタイプ車両の「SC63」を披露。カーボンファイバー製シャシーモノコックはフランスのレーシングコンストラクターのリジェとタッグを組んで開発。パワートレインには最高出力680psを発生する新開発の3.8リットルV8ツインターボエンジン+モーターを搭載

伊ランボルギーニは2023年7月13日(現地時間)、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023において、LMDh規定のハイブリッドレーシングプロトタイプ車両「SC63」を初公開した。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲ランボルギーニがLMDh規定のハイブリッドレーシングプロトタイプ車両「SC63」をグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023において初披露

LMDh規定はエンジンの最高出力が680ps以下(既存のLMH規定はハイブリッドが650ps以下、非ハイブリッドが680ps以下)、モーター最高出力が68ps以下(LMH規定は272ps以下)のパワートレインを搭載して後輪を駆動し(LMH規定はハイブリッドが前輪モーター/後輪エンジンで駆動、非ハイブリッドは後輪駆動)、モーターはボッシュ、ギアボックスはエクストラック(7速XTRAC)、バッテリーはウィリアムズアドバンスドエンジニアリング(LMH規定はいずれも自社開発)を使用すると定められている。シャシーはリジェ、オレカ、ダラーラ、マルチマチックから選択が可能だが、ランボルギーはLMDhプロジェクトの当初からリジェを選択。リジェとしてもLMDhでタッグを組む初の自動車メーカーであったため、プッシュロッド式フロントサスペンションのデザイン開発や全体的な重量配分、車両主要パーツの整備のしやすさなど、ランボルギーニの要求を着実に具現化したカーボンファイバーモノコックシャシーに仕立てた。とくに、エンジン後方とギアボックスの前方とのギャップを埋めるベルハウジングは、ねじり剛性に多大な影響を与えることから、パワートレインを包み込むように設計している。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲ランボルギーはLMDhプロジェクトの当初からシャシー開発のパートナーとしてリジェを選択。リジェとしてもLMDhでタッグを組んだ初の自動車メーカーであったため、プッシュロッド式フロントサスペンションのデザイン開発や全体的な重量配分、車両主要パーツの整備のしやすさなど、ランボルギーニの要求を着実に具現化したカーボンファイバーモノコックシャシーに仕立てる

ちなみに、ランボルギーニのLMDhプロジェクトは2021年に同社が発表したコル・タウリ(Direzione Cor Tauri:持続可能な開発)戦略に沿ったもので、ドライブの感動とパフォーマンスを高めると同時に、2024年末までに全モデルをハイブリッド化させるための電動化へ向けたロードマップを示唆。このアプローチはSC63の完成によってモータースポーツプログラムにも適用され、ランボルギーニの新コンセプト「Driving Humans Beyond」を象徴することになるという。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲ボディのマテリアルにはカーボンファイバーをメインに採用。ボディサイズおよび車重はLMDh規定(全長5100×全幅2000×全高1150mm/ホイールベース3150mm/最低重量1030kg)内に設定する

エンジン自体は、LMDh車両向けに新開発したボア91×ストローク73mmの3800cc・V型8気筒ツインターボユニットを搭載。機構には“コールドV”構造を採用し、エンジンのVアングル外側にターボを取り付けて冷却や整備を容易にする。また、ターボには電子制御式ウェストゲートを組み込み、さらにバルブトレインにはギア駆動を、オイル潤滑システムにはドライサンプを導入。最高出力はLMDh規定に合わせて680ps(500kW)としている。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲LMDh車両向けに新開発した3800cc・V型8気筒ツインターボエンジンを搭載。最高出力はLMDh規定に合わせて680ps(500kW)とする
ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲新V8エンジンに最高出力68ps以下のボッシュ製モーターを組み合わせて後輪を駆動。足回りは前後アジャスタブルダブルウィッシュボーンで構成し、シューズには前29/71-18/後34/71-18タイヤを装着する

ボディワークに関しては、ランボルギーニのデザイン部門であるチェントロスティーレ が、モータースポーツ部門のスクアドラコルセと連携しながら担当。エアロダイナミクス要素として機能するカーボンファイバー製のボディとアンダーボディ、リアウィングとのコンビネーションは、風洞試験を経て最大のパフォーマンスを発揮できるように設計する。また、ブランドのスタイリング要素を明確に表現した特徴的なY字型LEDヘッドライトおよびリアランプは、ボディのシャープなラインに沿ってその形状がハイライトされ、レーザーモジュールによって夜間のレース中にも理想的な光を放つ。カラーリングはアイコニックなVerde Mantis(グリーン)、Nero Noctis(ブラック)、Bianco Alpi(ホワイト)、Rosso Sangue(レッド)の4色でアレンジした。チェントロスティーレを率いるミィティア・ボルケルト氏は、「私が最初からデザインチームに伝えていたのは、機能性の高いモデルでありながらも、ランボルギーニのクルマであるとすぐに分かるモデルを造りたいということでした。象徴的なY 字型ライトによって、SC63のフロントとリアであることがはっきりと認識できます。キャビンサイズとモデルの主な特徴はスポーティングルールによって決まりますが、このモデル全体に当社独自のブランドスタイルを示すエレメントを採用しました。ボディのサイドパネルには、カウンタックのエアインテークにインスピレーションを受けたNACAダクトを組み込んでいます。また、リアのホイールアーチは前方への加速を印象づける設計にしており、これはレヴエルトと共通するランボルギーニのホイールアーチ・デザインランゲージです」とコメントする。ボディサイズおよび車重はLMDh規定(全長5100×全幅2000×全高1150mm/ホイールベース3150mm/最低重量1030kg)内に設定した。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲エアロダイナミクス要素として機能するカーボンファイバー製のボディとアンダーボディ、リアウィングとのコンビネーションは、風洞試験を経て最大のパフォーマンスを発揮できるように設計
ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲ランボルギーニブランドのスタイリング要素を明確に表現した特徴的なY字型LEDリアランプを装備

なお、SC63は2024年シーズンのFIA世界耐久選手権ハイパーカークラスと、IMSAスポーツカー選手権GTPクラスにエントリーする予定。また、参戦に際してはイタリアのアイアン・リンクス・チームとパートナーを組み、ドライバーのラインアップにはミルコ・ボルトロッティ選手、アンドレア・カルダレッリ選手、ロマン・グロージャン選手、ダニール・クビアト選手が加わり、他のドライバーは本年後半に決定するという。

ランボルギーニ初のハイブリッドレーシングプロトタイプマシンが初公開
▲SC63は2024年シーズンのFIA世界耐久選手権ハイパーカークラスとIMSAスポーツカー選手権GTPクラスに参戦する予定
Writer:大貫直次郎

(提供:CAR and DRIVER