主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2023年8月16日9時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼15日(火)の為替相場
(1):本邦GDP 予想を大幅に上回る
(2):予想より弱い豪賃金指数
(3):中国経済指標は予想を下回る
(4):円安けん制発言も反応薄
(5):ポンド/円 7年8カ月ぶりの高値
(6):独ZEWマイナス幅縮小
(7):予想以上に強い米小売売上高
▼15日(火)の株・債券・商品市場
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:神経質な相場展開となりそう/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
15日(火)の為替相場
期間:15日(火)午前6時10分~16日(水)午前5時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):本邦GDP 予想を大幅に上回る
日本4-6月期国内総生産(GDP)・一次速報は前期比年率+6.0%と予想(+2.9%)を大幅に上回り1-3月期(+3.7%)からプラス幅が拡大。個人消費が減少した一方、自動車などの輸出が増加したことで3四半期連続のプラス成長となった。
(2):予想より弱い豪賃金指数
豪4-6月期賃金指数は前年比+3.6%と市場予想および1-3月期の+3.7%を下回った。同時に発表された8月の豪中銀(RBA)議事録では「キャッシュレート(政策金利)を現在の水準で維持したまま、インフレを目標に戻す信頼できる道筋を確認した」との見解が示され、その上で「金利を据え置く論拠の方が(利上げよりも)強いことで見解が一致した」ことが明らかになった。これらを受けてRBAの利上げ打ち止め観測が高まると一時豪ドルは下落した。
(3):中国経済指標は予想を下回る
中国7月小売売上高は前年比+2.5%と予想(+4.0%)を下回り、同鉱工業生産も前年比+3.7%と予想(+4.0%)に届かなかった。これより前には、中国人民銀行(PBOC)が1年物の中期貸出制度(MLF)金利を2.65%から2.50%に引き下げた。中国政府は不動産不況の影響などで悪化した景気の下支えに動いている。
(4):円安けん制発言も反応薄
鈴木財務相は、足元の円安について「投機筋の動きがあればしかるべき措置をとる」「(介入は)絶対的な数字を防衛するためにやるわけではない」「為替はファンダメンタルズを反映し安定推移が重要」などと発言。これを受けてやや円買いに傾く場面もあったが、円買い介入が差し迫っていることを示す発言内容ではないと受け止められたため円買いは続かなかった。なお、その後神田財務官が「行き過ぎた動きに対して適切な対応を取る」などと述べたことも伝わったが、円相場に目立った反応はなかった。
(5):ポンド/円 7年8カ月ぶりの高値
英7月失業率は4.0%、同失業保険申請件数は2.90万件だった。英4-6月国際労働機関(ILO)基準の失業率は4.2%(予想、前回ともに4.0%)で、英4-6月週平均賃金は前年比+8.2%と予想(+7.4%)を上回り、2021年7月以来の高い伸びとなった。賞与を除いた週平均賃金は前年比+8.2%と過去最高の伸びを記録した。賃金上昇率の上ブレを受けて英中銀(BOE)の追加利上げ期待が高まるとポンド買いが優勢となった。ポンド/円はその後のNY市場で2015年12月以来7年8カ月ぶりの高値となる185.33円前後まで上値を伸ばした。
(6):独ZEWマイナス幅縮小
独8月ZEW景気期待指数は-12.3と市場予想(-14.9)に反して7月(-14.7)からマイナス幅を縮小した。ただ、ドイツの景気見通しが改善したとはいえ依然として指数の水準は低く、ユーロ相場への影響も小さかった。
(7):予想以上に強い米小売売上高
米7月小売売上高は前月比+0.7%と予想(+0.4%)を上回り、6月分も+0.2%から+0.3%へ上方修正された。変動の大きい自動車を除いた売上高も前月比+1.0%と予想(+0.4%)を大幅に上回った。これを受けてドルが買われたものの、同時に発表された米8月NY連銀製造業景気指数が-19.0と予想(-1.0)を大幅に下回ったため伸び悩んだ。その後は、米長期金利が一時低下に転じたこともあって持ち高調整と見られるドル売りが入り145円台前半へと弱含んだ。
15日(火)の株・債券・商品市場
ドル/円 外為注文情報(FX板情報・オーダー状況)
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:神経質な相場展開となりそう
昨日のドル/円は年初来高値を更新して小幅続伸。日米金利差拡大を意識したドル買い・円売りの流れが続く中、本邦財務省筋の口先介入による押し下げ効果は薄く、欧州市場で昨年11月以来の145.86円前後まで上昇した。NY市場では米7月小売売上高の発表後に利益確定と見られるドル売りが入ったものの、145.10円付近で下げ止まると145円台後半に切り返した。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の引き締め長期化観測に加え、中国人民元やロシアルーブルなどの新興国通貨安も相まってドルは本日も堅調を維持すると見られる。本日のNY市場終盤に発表されるFOMC議事録でも「データ次第で追加利上げも」「早期利下げは想定していない」との見解が示される公算が大きい。一方、円については政府・日銀による円買い介入再開の観測がくすぶっているため下落ピッチは鈍りそうだ。
昨日は財務相および財務官の円安けん制発言に切迫感がなかったとして円売りに傾く場面があったが、ドル/円は昨年9月の介入ポイントである145.90円に接近すると伸び悩んだ。本日のドル/円は高値圏で売買が交錯しやすいと見られ、神経質な相場展開となりそうだ。
注目の経済指標:英消費者物価指数
注目のイベント:FOMC議事録
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1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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