焼酎大手の宝ホールディングス<2531>とオエノンホールディングス<2533>の業績見通しに強弱が表れてきた。宝が2期連続の営業減益を余儀なくされるのに対し、オエノンは2期ぶりの黒字転換を見込んでいるのだ。
営業利益率はオエノン(2.82%)よりも宝(7.40%)の方が5ポイント近く高いが、宝が「コストアップに加え安全、安心のための投資やブランド育成費用の増額などで減益になる」との見通しに対し、オエノンは「業務用市場に回復の兆しが表れており、PB(プライベートブランド)商品も好調に推移している。コスト削減も進んでいる」として営業利益を上方修正した。
オエノンは通期の営業利益予想に対し、上半期の時点ですでに80 %を超えるところにまで迫っており、さらなる上方修正の可能性が高そう。両社の営業利益率は一段と縮まるだろうか。
宝、コロナ需要が減少
宝は「一刻者」のほかに「知心剣」や「宝焼酎 純」などを生産しており、2023年8月8日に公表した2024年3月期第1四半期では、焼酎などの国内酒類事業は2.7%の増収、134.2%の営業増益となった。海外でも酒類事業は好調で、27.4%の増収、39.4%の営業増益だった。
ただ、バイオ事業を手がける子会社が、新型コロナウイルスの検査試薬などの販売が振るわず大幅な減収減益となったことから、2024年3月期第1四半期は4.8%の増収にとどまり、20.2%の営業減益となった。通期ではさらに伸び悩む予想で、1.2%の増収、30.7%営業減益を見込む。
オエノン、進むコスト削減
一方、オエノンは「鍛高譚」のほかに「博多の華」や「ビッグマン」などを生産しており、2023年8月4日に発表した2023年12月期第2四半期決算では、11.2%の増収、20億2900万円(前年同期は1億4700万円の赤字)営業利益を確保した。通期では売上高850億円(前年度比4.8%増)、営業利益24億円(前年度は7億700万円の赤字)を見込む。
売上高は当初880億円を見込んでいたが、加工用でんぷん事業を手がける子会社の株式の一部を売却し、持分法適用関連会社化したことから30億円下方修正した。一方、当初10億円だった営業利益は酒類の売り上げアップに加え、原料購入単価が抑制されたことや販管費などのコスト削減が進んだことから、2.4倍に引き上げた。
第2四半期の20億2900万円の営業利益は、通期予想24億円の84.5%に達するため、さらなる上方修正の可能性は高く、下期が上期並みに推移すれば、計算上、営業利益率は4.77%となり、宝の7.40%に迫ってくる。
原材料高やコロナ需要の減少などで酒類事業、バイオ事業で減益を見込む宝と、物価高の中、割安感のあるPB商品などによる増収とコスト削減が進むオエノン。コロナ禍の影響が薄らぐにつれ、両社の違いが目立つようになってきた。
文:M&A Online