損害保険の不正請求事件など一連の不祥事で大揺れのビッグモーター。創業の地である山口県岩国市は三井化学や日本製紙、旭化成子会社の旭化成建材といった大手企業の出先工場が経済を支えており、2022年9月期に7000億円もの売上高があるビッグモーターは地元にとっては唯一の大企業と言っていい。そんな同社に、地元の人たちはどのような印象を持っているのか?

実は「獺祭」の酒蔵と同郷のビッグモーター

「ビッグモーターが岩国の企業だと、今回の報道で初めて知った」(30代女性パート社員)。意外にもビッグモーターの地元での存在感は小さい。1976年に岩国市の郊外商業集積地である南岩国町で個人経営の「兼重オートセンター」として創業。1980年2月に現社名の「ビッグモーター」に改称した。43年にわたって同じ看板を掲げているわけだが、「全国チェーンの一営業所」の印象しかないのが現状だ。

その理由はビッグモーターが「岩国の会社」と積極的にアピールしなかったことがある。事業規模は小さいが、「獺祭」を醸造する旭酒造が岩国市の企業であることを積極的にアピールしているのと対象的だ。旭酒造は地元での雇用に積極的だったり、観光客を呼び込む「獺祭ストア 本社蔵」の開設など地域貢献策を展開したりしている。「岩国を代表する企業と言えば旭酒造」(関西から帰省した男性30代会社員)と言われるのも当然かもしれない。


不祥事発覚で「岩国の企業」と知れ渡った

一方、同社創業者の兼重宏行前社長が「故郷を捨てた」とする一部報道については、「特に地元でいざこざがあったという噂は聞いたことがない。地元に不満や恨みを持っているのなら、人口が少なく中古車が飛ぶように売れるわけでもない岩国市内に大型店舗を維持する必要はないだろう。兼重さんが故郷を捨てたというのは、面白おかしく書かれた記事ではないか」(60代会社員)との見方がもっぱら。

同社ホームページでも「岩国市で創業した」と明記されており、前社長が地元に強い悪印象を持っているわけではなさそうだ。

今回の不祥事騒動で最も多かった地元の意見は「不祥事が明らかになってから、急に岩国市の企業だと報道されるようになった。業績が急成長していた時には一言も触れられなかったのに、ブラック企業だと批判されるようになってから岩国企業と強調されるのは心外」というもの。

ビッグモーターのような非上場企業の場合、社名に本社所在地を併記するのが通例だが、同社は2016年1月に東京都港区へ本社を移転しており、今さら「岩国市の企業」をアピールするのは確かに不自然ではある。「ビッグモーターの不祥事で岩国市のイメージが悪くならないか心配だ」(同)との声も多く聞かれた。

不祥事が収拾したら、ビッグモーターは間接的に「イメージダウン」させた岩国市に何らかの地域貢献をするのか?地元も注目している。

文:M&A Online