9月22日(金)の朝日新聞の第1面は、「ヤフー優越的地位の可能性/対メディア記事の使用料」と題する記事。一体何のことだ?と記事を読むと、前日9月21日に公取引委員会がヤフーなどのニュースプラットフォーム(PF)事業者と記事を提供(販売)する新聞などメディア各社の取引実態の調査報告書を公表したのを受けた記事である。
朝日新聞の第一面を飾るほどの記事なのか?という思いがあるし、なぜPFの中から「ヤフー」(ヤフーニュース)だけをタイトルでピックアップしたのか?公正取引委員会の資料では、ヤフーニュースがNPFの最大手ということらしいが、朝日新聞は何かウラミでもあるのか。しかし、記事を精読すると、これは朝日新聞にとっては、存続に関わる一大事なのだ。第1面に載せる気持ちはよく分かった。
記事を簡単にまとめると、消費者は新聞などでニュースを読まなくなったが、代わりにNPFでニュースを読むようになった。NPFは新聞などからニュースを買っているがその価格は記事1本1000回読まれたら(1000PV=ページビュー)49~251円というのが公正取引委員会の今回の調査だった。その結果、NPF側がニュース価格設定の主導権を握り、またPVを稼ぐためにセンセーショナルなニュース選定が多くなり、広告が注目されるようなレイアウトの変更や抜粋表示などがPFサイド主導で行われているのも問題だとしている。
新聞などのいわゆる報道機関の収益力が低下する中で、「質の高いニュースの提供は民主主義に不可欠」(読売新聞記者やヤフー・トピックス編集長を務めた奥村倫弘・東京都市大学教授)といった意見も掲載をしている。民主主義まで持ち出すの朝日新聞らしい。
これは読者に強く認識してほしいが、こうしたニュースPFは、新聞がなくなったら存在し得ないのだ。新聞が存在しているから、ニュースPFは存在しているのだ。新聞の危機が言われるが、「新聞は無くなってはならないのだ」ということをベースにいろいろなことを考えて欲しい。
今のニュース販売料が10倍になったところで状況は大きく変わるとは思えないが、完全にNPF主導でその奴隷のように安価にニュースを提供しているメディア側にも誇りを取り戻してもらいたいものだ。公正取引員会は、「著しい低価格なら独禁法上、問題だ」とまで言い、「メディア側が共同交渉することも独占禁止法上問題とならない」とまで明言している。果たして今後、「質の高いニュース」のために、メディア側がどう奮起するのか見ものである。
しかし、わずか30年で第4の権力とまで言われた新聞を頂点にしたメディアがGAFAなどのIT企業の下僕にまでなってしまったという歴史に改めて嘆息する。