総括
FX「9月はデータ通りドル円が強い、円安是正には原油下落しかないが難しい」
ドル円=146-151、ユーロ円=155-160、ユーロドル=1.04-1.09
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、9月はデータ通りドル円が強い。円安是正には原油下落しかないが難しい」
9月は既述通り、ドル円は上昇した。過去5年でも5回中4回がドル高であった。また過去5年の月末週はドル高である(表参照)。
新聞TVで「止まらぬ円安」の報道が多くなってきた。マスコミが騒げば政府日銀も圧力をかけられているようで焦りも出てくるだろう。介入警戒感も出てきた。ただ円安の根本の原因は貿易赤字であり、それを生み出しているのは原油高である。日本の原油などの輸入量は毎年大きくはブレない。ただ原油価格が90ドルを超えるとドル買いの金額も急増し貿易黒字から赤字となる。20世紀の原油価格は概ね20ドル前後、40ドル超えも殆どなかった。それが貿易黒字と円高を生み出していた。21世紀では2倍、3倍の価格になっている。中国など新興国の需要が増加しているからだ。2001年の原油などの輸入額は8兆円台だが、2022年は33兆円だ。25兆円増えればドルを押し上げることとなる。去年の介入額は9兆円程度だ。介入実施やマイナス金利の解除は一時的に円買いを促すが、原油高のままでは、また円安になるだろう。
今週は本日、日銀総裁・副総裁の発言がある(日銀マンデー)。今週は景気対策が打ち出される。東京の消費者物価の発表もある。月末、中間期末なので大口の特殊玉も出る。介入金額の発表がある。覆面介入で実施していれば、それは面白いのだが、財務省や日銀の人々は、真面目な方ばかりなので、そういう奇策は使わず、やはりゼロか。
*米ドル「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)14位(13位)、ドルは独歩高でないのは不安もあり。政府閉鎖ならGDP0.2%減少か、政府からデータも出てこなくなる」
ドル独歩高と言われているが、今月は3位、先週1週間では5位と独歩高でない。年間では5位。このところの株安、UAWのスト、政府閉鎖問題(閉鎖なら0.2%GDPが低下する試算、政府からデータが出てこない不安あり)、大統領弾劾調査など不安要因もある。ただ原油価格上昇や長期化するウクライナ問題という有事で基軸通貨のドルが買われている部分もある。
FOMCでは予想通りFF金利は据え置きとなったが、年内の政策金利引き上げを示唆するFRBの見通しもあり、米長期金利も上昇しドル買いも出た。ただフェッドウオッチではまだ年内は据え置きの確率が高いというチグハグな状態だ。原油価格が上がってもコアが落ち着いていればいいと言う考えもあるのだろう。
パウエル議長は、9月28日午後4時(翌日の日本時間午前1時)に教育者とのタウンホールミーティングで発言する。FRB当局者でも利上げか据え置き継続で意見が分かれている。またイエレン財務長官は「米国の労働市場における需給の不均衡は緩和している。インフレ期待が安定していれば、エネルギー価格には影響はない」とハト派的な発言をしている。
一方、サマーズ元米財務長官は、「FRBの最新の経済予測は楽観的すぎ、インフレを加速させ、経済成長が予想よりも鈍化するリスクが二重にある、スタグフレーションの可能性もある」と述べた。
アトランタ連銀GDPナウは4.9%と強く、クリーブランド連銀のCPIナウは3.69%で上に跳ねているわけでもない。ただ株式市場に影響する「恐怖と欲望指数」は36とかなり弱い。爆弾を抱えながらの展開となる。
*ユーロ「通貨6位(6位)、株価7位(7位)DAX)、対ドルで10週連続陰線が示すもの(ただ円より強い)」
ついに、ユーロドルは10週連続週足陰線となるほど弱い。年間でもドルとカナダに抜かれ6位に後退している。ただ対円では先週も陽線、月足もここまで陽線となっているのは、如何に円が弱いということだ。
ECB当局者の中には独連銀のナーゲル総裁やウンシュ・ベルギー中銀総裁のように「インフレ上振れリスクを踏まえると、一段の金融引き締めを実施しなければならない可能性がある」との考えを示すものもあれば、南欧、フランスやオランダ中銀総裁からは、現行の金利がピークで維持すべきとの意見もある。仏のル・メール財務相は「ECBはこれ以上金利を引き上げるべきではない。政策金利は妥当な水準にあり、 この水準の金利に固執する必要がある」と語った。ただやはり景気減速は否めない。OECDはユーロ圏の2023年の成長見通しを0.3%下方修正し0.6%増、独を0.2%下方修正して0.2%減とした。
9月のユーロ圏の総合PMIは47.1で3Qのユーロ圏経済はマイナス成長となる可能性が高く、近い時期のプラス成長は見込めないという。主な足かせは引き続き製造業で、受注状況がさらに悪化している。
ユーロ圏のリセッションが鮮明になっている。景気が弱いのはドイツだけでない。ECBのこれまでの4.5%の利上げが域内全ての国の経済を減速させているとの見方が強い。
今週はユーロ圏と独の9月消費差物価の発表がある。どちらも4%台に低下する予想だ。
今週もラガルドECB総裁ら当局者の講演がある。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価11位(16位)、政策金利据え置きでポンド下落。ただ指標はユーロ圏よりマシ」
英中銀が利上げを見送ったことで、先週はポンドが最弱通貨となった。年間では依然3位を維持。一方、FT株価指数は先週の多くの国が大きく下したが、僅かの下げにとどまり年間順位を16位から11位へ上げた。英中銀は、政策金利を5.25%に据え置いた。据え置きは2021年12月以来。英経済の減速とインフレ鈍化を受けた。「金融引き締めがより広く労働市場や実体経済の勢いに一定の影響を与える兆候が強まっている」と中銀は指摘した。 3Qの経済成長見通しを、8月時点の0.4%から0.1%に下方修正し、住宅市場低迷の明確な兆候を挙げた。その上で、年内の経済成長率は以前の予想よりも弱くなる可能性が高いとした。
ベイリー中銀総裁は、インフレ率は10月に顕著に低下すると予想していると述べた。8月の消費者物価の上昇率は6.7%と7月の6.8%から鈍化し、2022年2月以来の低水準だった。
ただユーロ圏よりは良い指標が出ることもあり、それがポンドを支えている。8月の小売売上は前月比0.4%増だった。消費者が総じて生活費の高騰に対応できている。
小売売上高が前月比で増加したのは今年6回目。個人消費の底堅さが示された。一方、9月の消費者信頼感指数は昨年1月以来の高水準だった。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価17位(15位)、RBAは利上げも検討。今週はCPI。財政は健全でAAA維持」
対円ではボリバン2σ上限、95円台でしかりしているが、対ドルでは漸くボリバン中位に戻ってきたところ。今月はNZドルよりもやや弱い。前回、4.1%で据え置きとなったRBA理事会の議事録では、インフレ率はピークを過ぎたが、依然として高すぎる水準であり、しばらくはその状態が続くだろうと述べた。中銀は、妥当な期間内にインフレ率を2-3%の目標範囲に戻すには、さらなる金融引き締めが必要になる可能性があると改めて表明し、金利調整は経済と物価の動向次第だと付け加えた。その物価だが今週は8月消費者物価の発表がある。予想は5.1%上昇で7月の4.9%上昇を上回る。
今月は雇用やGDPも改善していることから、消費者物価も5%を超えると、10月3日の政策決定会合では利上げも議論されることとなる。
RBAは、インフレ率が2024年末までに約3.25%となり、2025年後半には目標に戻ると予想している。一方、経済はトレンドを下回る成長期間を経験しており、これはしばらく続くと予想されている。そして失業率は来年後半に約4.5%まで徐々に上昇すると予想されている。今週は8月小売売上も発表される。財政は健全だ。S&PはAAAの格付けを確認した。2022/23年度の財政収支が221億豪ドルの黒字と、15年ぶりに黒字を確保したこともある。堅調な雇用の伸びや鉱業利益の増加が歳入を押し上げ、黒字幅は5月時点の予想の5倍となった。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、リセッションから回復。いやリセッションではなかった。利上げ観測も出てきたが、回復感はない」
年間9位と強いわけでもないが、今月はここまで4位で3位のドルを追う。先週に限れば2位であった。それは22年4Qと23年1Qでリセッションに陥っていたが、2Q・GDPの力強さと、22年4Qの上方修正でリセッションも消し去ったからだ。2Q・GDPは、前期比で0.9%増加し、予想の0.5%増を上回った。1Qの成長率は0.1%減から0%増に上方修正されたことでリセッションに陥っていなかったことになる。サービス部門が主に成長をけん引した。1Qにサイクロンの影響を受けた製造業でも一定の改善が見られた。
早くも10月4日(水)の政策金利決定会合では5.5%から0.25%引き上げて5.75%とする予想も出てきている。現在、消費者物価(2Q)は6%で3Qの予想は5.8%で昨年2Qのピークの7.3%から、ゆっくりと低下している。10月3日のRBAの政策金利決定も気になるところだ。
ただ他の3Qの経済指標は弱い。3QWESTPAC消費者信頼感指数は2Qの83.1から2.9ポイント低下し80.2となった。経済情勢について悲観的な世帯の数が楽観的な世帯の数を大幅に上回っていることを示している。過去数カ月間、生活費の大幅な上昇が続いており、それに関連して借入コストも上昇している。こうした状況が家計の購買力を圧迫している。多くの家庭が外食などの活動への出費を減らしている。
需給的にも、貿易・経常収支の赤字が続いている。少し期待できるのは最大貿易相手国の中国の8月の小売売上や鉱工業生産が持ち直したことだが、まだ安心できない。
今週は9月ANZ企業信頼感やANZ消費者信頼感の発表がある。
テクニカル分析
*ドル円「例年通り9月は陽線か、9月最終週も陽線が過去多い」
日足、ボリバン上位で推移。9月21日-22日の上昇ラインがサポート。22年10月21日-9月22日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線上向き。
週足、ボリバン上限。9月4日週、11日週のダブルトップを上抜け3週連続陽線。9月11日週-18日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-23年9月18日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。雲の上。
月足、7月は4か月ぶり陰線も長い下ヒゲで8月の陽線を誘導。9月も陽線に終わりそうだ。5か月線、20か月線は上向き。7月-8月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年8月の下降ラインが上値抵抗だが上抜く。
年足、2023年はここまで陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上る。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「10週連続週足陰線、日足はボリバン下位で推移」
日足、一時ボリバン下位で推移。9月20日は反発も短命。9月20日-22日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、10週連続陰線。8月28日週の長い上ヒゲが下押す。ボリバン下限近い。5週線、20週線下向き。22年10月31日週-23年9月18日週の上昇ラインがサポート。9月11日週-18日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、7月の長い上ヒゲで8月は下落。9月もここまで陰線。7月-8月の下降ラインが上値抵抗。23年6月-7月の上昇ラインを下抜く。22年10月-11月の上昇ラインがサポートだが瀬戸際。5か月線、20か月線下向き。
年足、陰転。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発していたが先週陰転。22年の下ヒゲが長く反発力あり上昇したが元に戻る。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインを上抜くも元に戻る。
*ユーロ円「3年連続陽線も日足はボリバン下位で推移」
日足、ボリバン下位推移。 9月21日-22日の上昇ラインがサポート。9月20日-22日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、20日線下向き。
週足、ボリバン上位で高原上に推移。9月11日週-18日週の上昇ラインがサポート。8月28日週-9月18日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、スピード緩めるも年初来高値圏にあり。7月は陰転も下ヒゲを出し8月の上昇へ。6月-7月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年8月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き
年足、3年連続陽線。今年はさらに大陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。