専門家に聞く!共通ポイント勢力図の変化と賢いポイ活戦略とは
(画像=NET MONEY編集部)

2024年春、共通ポイントのVポイントとTポイントが統合し、新生Vポイントとして生まれ変わります。

日本における共通ポイントの開拓者であるTポイントの時代が幕を閉じ、新たな共通ポイント戦国時代に突入すると言っても過言ではありません。

今回は国内唯一のポイント/会員サービスの専門支援企業である株式会社エムズコミュニケイトの代表取締役、岡田祐子さんに取材を行い、共通ポイント市場の勢力図の変化と今後の動きについて見解をお伺いしました。

企業側の視点を知り尽くしている岡田さんだからこそわかるポイントの賢い貯め方・使い方や、今後ポイント戦略に注力していく注目の業界についても質問しました。

複雑さを増しているからこそ極めがいがあるともいえる「ポイント」と上手に付き合っていく方法を探ります。

プロフィール

なぜ企業は共通ポイントを導入するのか?

ーーかつて共通ポイントといえばTポイントだけでしたが、現在は楽天ポイント、Pontaポイント、dポイントと「共通ポイント」が増えています。そもそも共通ポイントを取り入れる企業にはどのような狙いがありますか?

岡田祐子さん

共通ポイントを展開しているポイント事業者の目的は消費者を経済圏で囲いこむことにあります。

ポイントには、買い物をすると付与されるものや、キャンペーンによって付与されるものがあり、事業者側は市場を盛り上げるために色々な取り組みを行っています。具体的には、ドコモのdポイントや楽天の楽天ポイントなどが特にキャンペーンが活発です。いずれもそれぞれ経済圏を獲得・拡大し、顧客基盤を根付かせるという目的で行われているのです。

企業がポイント制度を導入する背景にはさまざまな狙いがある!共通ポイント勢力図の変化と賢いポイ活戦略とは
企業がポイント制度を導入する背景にはさまざまな狙いがある
(画像=エムズコミュニケイト提供)

ーー消費者目線だとポイントが貯まってうれしいですが、共通ポイント事業者や加盟店にはどのようなメリットがありますか?

岡田祐子さん

ポイント事業者側は先程話したような経済圏の拡大・顧客基盤を根付かせられるメリットがあります。

一方、加盟店側は消費者がポイントを使って決済しようと考える、というメリットがあります。

消費者は、「ポイントがつくからこのお店で買い物しよう」ではなく、「持っているポイントが使えるから、このお店ポイントで払おう」という考え方をするケースが多く、一回の決済金額が多くなり加盟店の売上につながります。

そもそも、店舗で買い物をしたときに消費者に付与されるポイントの原資は加盟店が支払っているのをご存知ですか?

ーーポイント事業者ではなく、加盟店が負担していたのですね!

岡田祐子さん

そうなんです。お客様に1ポイント還元するためには、加盟店側はその他の手数料なども含めて3ポイント分程度のコストをポイント事業者に支払っています。

それでも加盟店にとっては、ポイントを提供するコストよりも、消費者がポイント利用して商品を購入する金額のほうが大きくなることを期待するのです。

例えばdポイントのように共通ポイント事業者がキャンペーンを頻繁に実施してポイントを多く供出すると、お客さんはどんどんポイントが貯まります。そして、貯まったポイントを使って加盟店で買い物をすると、そのポイントが加盟店側に売上として入ってくるわけです。

加盟店側は最終的にポイントが自分に流れてくると、払い出しよりも収入が多くなる可能性があり、、結果的に得になるというケースが生まれます。消費者と加盟店側双方にとってメリットがあるわけです。

ーーずばり、加盟店側に人気のポイントは何でしょうか?

岡田祐子さん

加盟店と共にキャンペーンを実施する共通ポイント事業者が好まれます。具体的には、dポイントのように共同キャンペーンを頻繁に行う方が人気です。

マクドナルドとのキャンペーン
(画像:共同キャンペーンの例。マクドナルドとのキャンペーンを過去に実施している。)

TポイントとVポイントの統合に見る共通ポイント業界の変化

TポイントとVポイントの統合に見る共通ポイント業界の変化
(画像=プレスリリースより)

ーーTポイントとVポイントが2024年春に新生Vポイントとして統合します。統合の背景についてどのようにお考えですか?

岡田祐子さん

Tポイントは元々共通ポイントの概念を日本に導入し、新たなビジネスモデルを作り上げ、一大勢力を築きました。いわば共通ポイントの開拓者といえる存在です。

しかし、Tポイントと他の後発のポイントサービスには明らかな違いがあります。他のポイントサービスには「本業」がありますが、Tポイントにはそれが”ない”のです。

例えば、Pontaならau(KDDI)、dポイントならdocomo、新規参入のpaypayならソフトバンクグループといった携帯キャリアが母体です。楽天も同様に、楽天市場などのビジネスの母体があります。

一方、Tポイントは本業と呼べる母体がないところが特徴です。TポイントからみたTSUTAYAはTポイントの加盟店の1つであり、それを中心にビジネスモデルを組み立てている訳ではありません。かつてPontaも同じような状態でしたね。

■各共通ポイントの「母体」となる事業、対応クレジットカード一覧

共通ポイント ポイントの「母体」となる事業 会員カード / クレジットカード
Tポイント
Tポイント
-
 
※TSUTAYAはTポイントの加盟店のため「母体」とは言えない
ファミマ
Tカード
ファミマTカード
Pontaポイント
Pontaポイント
通信
au(KDDI)
au Payカード
au Payカード
dポイント
dポイント
通信
docomo
dカード
dカード
PayPay
ポイント
PayPayポイント
通信
ソフトバンク
PayPayカード
PayPayカード
楽天ポイント
楽天ポイント
EC
楽天市場
楽天カード
楽天カード
岡田祐子さん

それではTポイントは何で利益を生んでいたかというと、圧倒的な手数料ビジネスだったんです。

Tポイント vs Pontaという図式があった当時は、一業種一社のビジネスモデルでした。そのため各業界トップの企業はどちらかのポイントと提携しているので、競合他社が参入しづらい状態だったのです。

それが2018年ごろ、楽天が参入してきて、「うちは(ポイントの)あいのりは構いません」というスタンスで後発参入してきたので、一業種一社という座組がガラガラと崩れていきました。

その後、dポイントの参入や、共通ポイントをダブルでつけられる「マルチポイント」が生まれるなど、企業は顧客の取り合いの動きを見せ、競争はさらに加速します。

ーーそうしてTポイントから離脱する企業が増えていったのですね。

岡田祐子さん

そうです。前提として本業のある共通ポイント事業者は顧客基盤を持っているので、共通ポイント事業で獲得したユーザーを自分たちのビジネスにクロスセルさせられます。dポイントは全国に携帯・スマホユーザーがいますし、楽天は楽天市場、楽天ブックス、楽天トラベルなどさまざまなサービスを展開しています。

このような企業が共通ポイントに参入することで、ポイントビジネスの風景が大きく変わりました。

ーー後発の共通ポイント事業者の参入はTポイントにどのような影響を与えましたか?

岡田祐子さん

元々Tポイントは伊藤忠商事や三越といった企業がTポイントと提携して一緒にデータビジネスを行うためにパートナーシップを組んでいました。しかし、後発参入の共通ポイント事業者により最終的にはそのパートナーシップは解消してしまい、ポイント事業による手数料ビジネスがコアのTポイントとしてはそんな状況を一刻もはやく脱却する必要がありました。

Tポイントはいろいろな試みを経て、最終的に三井住友グループと戦略が合致したというわけです。

ーーポイント事業は顧客基盤の入口なんですね。

岡田祐子さん

そうですね、ポイントは企業や市場との接点となりますね。

いままではケータイ会社だけ、楽天だけ、という状態でしたが、グループの中でいろんなサービスで使えるようになったことで市場に開放されたといえるでしょう。

それによって爆発的な力が現れました。楽天やドコモなどは、自社の顧客以外にも、加盟店や他のユーザーへ市場を開放しました。その結果、楽天やドコモの影響力が爆発的に拡大したわけです。

よりお得にポイントを貯める方法は?

ーー利用者視点から見て、お得な共通ポイントは何ですか?

岡田祐子さん

常に利用するコンビニやガソリンスタンドを考慮するなど、自分のライフスタイルやキャリアに合わせてカードやポイントを選ぶことが大切です。キャッシュレスの支払い手段もこれに含まれます。これらの組み合わせを見直すことで、ポイントがお得になりますし、貯まりやすくなります。

ーーついつい複数クレジットカードやQRコード決済を利用してしまいがちですが、できるかぎり1つの経済圏に絞ったほうがよさそうですね。

岡田祐子さん

自分の生活圏内を見渡して、多く利用している企業のクレカを使用するのが一番ですね。

土の決済手段にもポイントが付与されるため、決済手段の選択においても、スマホのキャリアがドコモの方は普段の支払いもdカードやd払いを中心にする、楽天市場でのお買い物が多いなら楽天カードや楽天ペイを主な決済手段にするなど、自分のいまのライフスタイルに組み込むことが大事です。

zoomインタビューに答える岡田さん
zoomインタビューに答える岡田さん
(画像=NET MONEY編集部撮影)

ポイントは浮気せず一途に使い倒すべし

ーー企業側の視点を知り尽くしている岡田さんだからこそわかる、ポイントの賢い貯め方・使い方を教えてください。

岡田祐子さん

一番大事にしてほしいのは、「浮気をしない」ことです。色々なサービスを組み合わせるのもいいですが、一途に一つの経済圏を使い込むことが、お得への近道と言えます。

これまで話にでてきたdカードのドコモ経済圏や、楽天カードの楽天経済圏、あとはJREなどの電鉄系グループなどもそうですが、この経済圏と決めたらそこを使い込むようにしましょう。各経済圏ごとの決済手段となるクレカやスマホ決済、その他サービスを使うことが、結局のところ一番お得な使い方なのです。

というのも、同じ経済圏内やグループ会社のサービスを使ったほうが、ポイント還元率が特別に高くなったり、キャンペーンで追加のポイントをもらえたりという機会が多い。それは、「複数事業を使ってもらいたい」という企業の意図があるからなのです。

もう一つ大切なのは、ポイントを使って忘れないことです。

ーー確かに、せっかくポイントが貯まっても使わなければ意味がありません。

岡田祐子さん

エムズコミュニケイトでは生活調査を実施していて、多くの日本人は度合いの違いはあれ、ポイントが好きという傾向がでています。一方で、ポイントを貯めることは好きでも、何ポイント貯めているかは把握していない人が多いです。

これは中国人と比べて大きな違いです。中国人はポイントを好きであるだけでなく、保有しているポイントをきっちり把握して目標も立てて使っています。日本人はポイントが好きである一方、自分が何ポイント持っているかやその発生源を忘れがちです。自分のライフスタイルに合った使用法を決めていくことをおすすめします。

ーー国によってポイント制度の関心度や活用度が異なるということですね。

岡田祐子さん

正確な比較は難しいですが、私たちが長年観察してきた結果、ポイントとクーポンに対する好みに違いがあります。

日本人はポイントの貯蓄性に惹かれ、大きく使うことに価値を見いだします。しかし、韓国やアメリカなど他の国では、その場で利用できるクーポンの方が人気です。国民性の違いがあると思います。

ポイント制度を導入する企業が気になるあれこれ

ーークライアント企業はどのような視点でポイント制度を導入しているのでしょうか?

岡田祐子さん

各社は、これだけポイントサービスがいろんな形である状況を踏まえて、自社ポイントにするか共通ポイントかという点を吟味しています。

値引きやクーポンとの違いについてもよくご質問いただきます。これに関しては、人間は得した喜びの方が大きくなるという性質をもっているので、プラスでもらえるポイント制度のほうが満足度が高いです。

大きいグループ企業なら、メール会員やアプリ会員という形で自社で一つの顧客IDを管理したり、会社で発行しているクレジットカードによって管理したりという手法で顧客の一元化ができるのもメリットの一つです。

ーーそんなポイント戦略を取り入れているうち、今後注目の業界はありますか?

岡田祐子さん

意外な組み合わせの例としては不動産×ポイント戦略があります。マンション、戸建ての不動産オーナー向けや、不動産投資を行っている人向けのポイントサービスが増えているのです。不動産を長く保有すればするほど貯まるなど、ポイントの貯め方がさまざまだったり、アフターフォローで差別化する企業なんかもあるようです。

世に出る前なのであまり詳しくはお話しできませんが、不動産業界は注目して見ています。

また、投資業界も挙げられます。生活者はいろいろなものに投資していますが、各企業はできるだけ長く同じ投資先に投資して維持してもらいたい、乗り換えたりされたくないと思っています。そんな思いを叶えるのにポイント制度は有効です。

これらも今後世の中にでてくるので注目してみてください。

ポイント戦略はこのようにさまざまな業界に影響を与えています。ビジネス現象としてポイント戦略の広まりやその背景に注目してみてはいかがでしょうか。

ーーありがとうございました。

dカードの紹介

dカード

お申し込みはこちら

楽天カードの紹介

楽天カード

お申し込みはこちら

三井住友カード(NL)の紹介

三井住友カード(NL)

お申し込みはこちら

Tカードの紹介

Tカード

お申し込みはこちら