1966年4月27日生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学法学部卒業後、博報堂香港入社。3年間の勤務を経て、米国留学。米コロンビア大学大学院でMBA取得。1997年同社グループに転じ、営業社員としてSL(シュガーレディ)関西入社。2007年代表取締役副社長、2010年代表取締役社長就任。2020年創業50年の節目に、株式会社SL Creationsへ社名変更。現在、SL Creations Group代表取締役社長。
創業から現在に至るまでの事業変遷について
―はじめに、貴社の事業の変遷について教えていただけますか?
株式会社SL Creations・佐藤 健氏(以下、社名・氏名略):当社は1970年に創業しました。「家庭の夕食を豊かにしたい」という思いから食材や味にこだわった高級冷凍食品を販売していましたが、当時、消費者の冷凍食品に対するイメージは私たちが目指す「夕食のメイン」とは程遠いものでした。現在は良いものを求めるお客様も増え、またここ20年ほどは競合他社も力を入れており商品のレベルも上がってきたため、次第に差別化が難しくなりました。
その中で、自分たちでないと作れない商品は何だろうと考え、2018年の夏頃から「Z’s MENU」シリーズの開発を進めていくことになったのです。日本最高峰の冷凍食品を目指した結果、日本一値段が高い冷凍食品になってしまい、最初は「売れるわけない」と否定的な意見も少なからずありました。しかし、コロナの影響で巣ごもり需要が急増、おうちでレストランの味を楽しめるZ’s MENUシリーズは良いスタートダッシュを切ることができたのです。
また、私たちには大規模の主婦組織があり、約10,000人が活動をしております。組織のなかで特に販売の柱となるのが「シュガーパーティ」です。無料の食事会を販売員の家やお客様の家で開催し、そこで商品を試食してもらい、納得したら購入してもらうという形です。
今でもその主婦組織は最大の力となっていますが、販売員の活動エリア外のお客様からも商品購入の要望があり、通販にも力を入れています。また、一般の方の目に商品が触れ、購入し、食べてみて、「他のものも買ってみようかな」という流れを作りたかったので、百貨店を始めとする外販も始めました。
―なるほど、大事にしてきた組織があったからこそ、やって来れたのですね。現在、事業が大きく変遷してきているタイミングだと思いますが、新型コロナの影響に関してはいかがだったでしょうか? コロナの影響でオンライン化が進み、これまでの強みが揺らぎつつも、新たな流れに乗った部分もあると感じています。その中で、どのようにして迅速な変化や大胆な改革が行われたのか、具体的に教えていただけますか?
元々私たちは非常にアナログな組織で、資料やチラシも全て紙、ミーティングも対面、商品のお届けも対面、お支払いは現金という状況であり、世の中のIT化が進む中、組織はこれまでのやり方を変えようとしてきませんでした。
しかし、コロナの影響で、状況は一気に進展したのです。対面での接客ができないという状況や、玄関先でのお勧めもできないという事態から、Webでのチラシ作成やお客様向けのオーダーサイトも作りました。さらに、クレジットカード払いも導入し、置き配や宅配便の対応も可能となりました。
また、幹部販売員にはiPadを配布し、現在、900名全員がZoomやLINEを使ってミーティングをしています。85歳の方もipadを使って会議に参加しています。コロナ5類移行後、対面での会議が増えましたが、オンライン参加と併用することで、ミーティングの参加率、業務の効率も上がっています。コロナの影響で変化を余儀なくされた部分もありますが、それが新しい働き方を生み出すきっかけとなりました。
―つまり、コロナが新たな働き方を実現するきっかけとなったということですね。
はい、そうです。コロナがきっかけで、新しい働き方を導入することができました。
SL Creationsの強みと成功実績
―そんな困難を乗り越えた、御社の事業の特徴と、実績について詳しくお伺いしたいと思います。
我が社の特色と成功の実績は、約10,000人の販売員を抱える組織力にあると言えます。 我が社の組織は、30代から80代までと幅広い年齢層をカバーしています。そして、この組織に属している販売員全員が、お客様一人ひとりの好みを理解しています。何十年もの間、一貫して商品を提供し続けてきたからこそ、お客様から厚い信頼を得られていると感じております。
このような歴史と組織力こそが、我が社の最大の強みであり、どんなに資金力のある企業でも容易には真似できない実績と言えるでしょう。
また、最近の私たちの取り組みの中で、最も成功していると言えるのが「オフィスプレミアムフローズン」という福利厚生制度です。これは、各企業様のオフィスに冷凍食品を置いて、「社員の皆様の福利厚生に役立てませんか?」という取り組みです。一万人の販売員が商品を納品しますので、新たな物流費が増えることはありません。経験豊富な販売員が直接企業様に向かい、棚卸から商品の入れ替え、さらに「満足していますか?」や「どんな商品が欲しいですか?」といった情報も仕入れてきます。これが私たちの大きな強みだと思います。
―それは非常に大きな強みですね。現在、どれくらいの企業と取引がありますか?
現時点で約1010社(2023年9月末現在)と取引があります。1ヶ月に70〜80社ほど取引が増えている状況です。既に事業として成立しており、規模は小さいながらも最も成功した事例と言えます。既存組織を活用しながら、世の中が求めている何かを提供することが、最良の策と感じています。
―素晴らしいですね、ありがとうございます。それでは、商品についてはどうでしょうか?
弊社の商品部の力は非常に大きいと思います。大手ではないため、安く大量に生産する規模はありませんが、逆に言えば、希少価値のある素材や良いメーカーを見つけて、弊社の規模で数万個程度の商品を継続的に提供することができます。スーパーなどで見かけないような商品を作ることが可能です。
地域で愛されるための秘訣や取り組み
―それは素晴らしいですね。 近くのスーパーでもみられないような商品を作るためには、地域の方々に愛される商品を作ることも必要かと思うのですが、地域への取り組みに関する秘策はありますか?
その地域で暮らすお客様にも共感を得られるような志を持つことが大切です。そして、販売員のみなさんにその思想に共感してもらい、一緒に取り組むことが重要です。
私たちは、販売員にノルマを設けていません。お客様に何かしらの価値を提供できる方は是非取り組みに参加いただき、販売員としても活動いただきたいと思っています。
販売活動以外でも、地域の保育園などから依頼を受けて、食育セミナーを開催するなど、様々な活動も行っています。商品を直接手渡しし、顔を見て話すことも地域の健康作りやコミュニティ作りにも大いに貢献していると思います。
また、当社の顧客層は多岐にわたりますが、特に高齢者の割合が増えてきています。高齢のお客様が元気でいるかを週に1回確認できるというのは、高齢化社会への貢献にもつながると感じています。さらに、若い販売員と親世代の人々との繋がりが生まれることで、人間関係の重要性が際立つこの時代に、私たちはプラスの影響を与えられると考えています。
数多くの困難への直面とそれを乗り越えた経験
―それは素晴らしいですね。そんな中、これまでに直面した困難や、それをどのように乗り越えたかについて教えていただけますか?
困難は数多くありましたが、一番大変だったのは、それを乗り越えるための改革が組織になかなか受け入れられなかったことにあります。 誰もが何十年も続けてきたことを変えることに対しては抵抗を感じるものですが、これまでのやり方が事業の発展に繋がってきたこともあり、とても大きな抵抗を受けました。 例えばユニフォームの導入や販売マニュアルの作成といった、一見当たり前に思えることも、大きな反対を受け、通販導入やデパート・スーパーマーケットでの外販の際も同様に反対が多くありました。
―そんな困難を乗り越えることができた要因は何だと思いますか?
一番大きな要素は、弊社の幹部陣や支店長達だと思います。
お互い散々議論を交わした後ではありますが、一度理解・納得してくれた後は全幹部が私の考えを支持してくれました。また、18人の支店長は全力で販売員を説得してくれたおかげで、現在があると思っています。
私が最初に営業からキャリアをスタートし、初期の10年間を現場で過ごした経験も大きいと思います。その時の上司や同僚、部下たちが今組織の幹部となっていることが組織の強固さに繋がっています。
思い描く未来構想やビジョン
―素晴らしい方が上司にいたからこそ、組織力の強さが今の強みとなっているんですね。佐藤代表が思い描いている未来構想や目指す世界観について教えていただけますか?
引き続き弊社の組織力と商品力を活用し、新たなサービスを複数展開していく予定です。
1つめは料理教室の開催や親子・男性を対象にしたイベントの開催です。実は男性の販売員も増えています。全国各地の地域の特色を生かし、地元の方々が関われるようなサービスも展開していきたいと思っています。
2つめは、健康サポートになります。具体的には、がん治療や腎臓疾患などで病院から食事に気をつけるよう指示された方々へのサポートを、弊社の管理栄養士と弊社商品で行っていきたいと考えています。
また、「美しい国から」のプロジェクトもさらに広げていきたいと思っています。 北海道のオホーツク地区と石垣島で、大手が扱えるほどの量はないものの、素晴らしい原材料を見出し、それを加工して冷凍食品として全国で販売し、その売上げの一部を両地区の自治体に還元するという活動を行っています。
―そのような活動が地域の人々との関係を深めることにつながったのですね。
はい、その通りです。その結果、商売上の取引も増えました。実は、その活動が評価されて、去年、知事から感謝状をいただきました。私達の活動を通して、この地域がこんなに素晴らしいところであることを、全国のお客様にももっと知ってもらいたいと思っています。
私たちの使命は、一人でも多くの人に「幸せになっていただくお手伝いをする」ことです。そして、幸せの前提は健康だと私は考えています。健康でなければ幸せを感じることはできません。
健康であるためには、食事、睡眠、適度な運動、そしてストレスの軽減が必要だと思っています。特に食事に関しては、私たちの会社が重要な役割を果たしていきたいと考えています。
読者へのメッセージ
―それでは、最後に私たちのメディアを見ている経営者の皆さんに、どのように意識を持つべきか、どのように改革を進めるべきかメッセージをいただけますか?
弊社も全てがスムーズに進行しているわけではありませんが、問題が何であるか、その問題を解決するために何をすべきなのか、という意識を持つことは重要です。それは急に生まれるものではなく、常に心に留めておくべきです。そして、チャンスが訪れたときに、迅速に行動を起こすことが重要です。ただし、それは一人で行うものではなく、組織全体で取り組まなくてはなりません。だからこそ大変なのですが。
私たち経営陣は、常に「いつかはこうしたい」というビジョンを持ち続けなくてはならないと思っています。そのビジョンが具体的な行動に変わるのは、チャンスが訪れたときです。それは得てして、一見ピンチに見える状況であることが多いように感じています。
プロフィール
- 氏名
- 佐藤 健(さとう けん)
- 会社名
- 株式会社SL Creations
- 役職
- 代表取締役社長