最近、世間をにぎわせた某大手中古車販売店の保険金不正請求と同様に、中古車販売業界で長年、問題視されてきたものが、一部の販売業者による不適切な販売方法です。これにより中古車業界全体の信用が損なわれることになり、ユーザーが中古車を敬遠する理由にもなっていました。そうしたことをうけて、2023年10月1日より中古車の価格表示が『支払総額』に変わることになりました。
中古車価格は『支払総額』で統一されます
2023年10月1日より、中古車販売店の価格表示の仕方が『支払総額』に変わります。
これまで中古車販売業界では、契約時に保証や整備などを強制的に購入させられた、納車時の洗車や室内クリーニングの費用が別途請求されたなど、店頭のプライスボードと実際に購入した金額が大きく乖離するという、いわゆる「不適切な販売方法」が問題視されてきたという歴史があります。
一方で自動車メーカーや国産・輸入車の新車・中古車・二輪車販売店が会員となっている自動車公正取引協議会(以下、公取協)が消費者アンケートを実施した結果、約90%が支払総額での表示を希望すると回答がありました。
某大手中古車販売店による保険金不正請求と同様、そういったブラックなイメージから中古車販売店を敬遠するユーザーも少なくなく、業界全体の機会損失につながっていたことも事実です。
こうした問題点や意見等に対応するため、公取協では2020年より販売価格の表示の見直しについて検討を重ね、2022年6月に中古車の販売価格(『支払総額』)の表示に関する自動車公正競争規約及び同施行規則の改正案を承認。
2023年3月27日付で消費者庁及び公正取引委員会に認定されたことを受けて、同年10月1日から中古車の広告掲載、及び掲示されるプライスボードの金額が『支払総額』に変更されることになりました。
中古車規約・同施行規則等の改正のポイント
今回の中古車規約・同施行規則等の改正のポイントは4つです。
①「車両価格」に「諸費用」を加えた価格を「支払総額」の名称を用いて表示
②「支払総額」の内訳として、「車両価格」及び「諸費用の額」を表示
③「定期点検整備」「保証」の有無を明瞭に表示
④規約違反措置基準の改正(厳格化)⇒厳重警告、社名公表、違約金
『支払総額』=車両価格+諸費用
『支払総額』とは、「車両価格」に当該車両を購入する際に必要最低限の「諸費用」をくわえた金額のことであり、内訳として車両価格と諸費用が表示されるようになります。
この「車両価格」には、これまで通り展示時点で装着済の装備等を含むほか、中古車の価格・品質に重要な影響をおよぼす「定期点検整備」および「保証」を付帯する場合は価格にそれらの費用を含めて表示しなければならなくなりました。
『車両価格』に含めなければならないもの
「納車準備費用」や「通常仕上費用」といった名目で料金が発生していた、納車前の「車内清掃」「洗車」「クリーニング」「ワックスがけ」、「点検」や「オイル、バッテリー交換」等の軽整備費用、かならず付帯する「保証費用」や「定期点検整備費用」。
また「土日祝納車費用」「利益」「販売手数料」「オークション陸送費」「広告掲載料」等は、今後、車両価格に含まれることになり別途請求されることはなくなりました。
「諸費用」に含まれるもの
「諸費用」には、「自賠責保険料(月割で算出)「自動車重量税」「自動車税種別割」「自動車税環境性能割/軽自動車税環境性能割」「法定費用」「リサイクル預託金相当額(車両価格に含まない場合)といった税金関係と、「検査登録手続代行費用」「車庫証明手続代行費用」などの登録等にともなう費用が含まれます。
車庫証明が不要な地域に住んでいるユーザーの場合は、諸費用から「車庫証明代行手数料」が減額されるので、その旨申し出る必要があります。
「車両価格」や「諸費用」に含まれないものは?
一方、「車両価格」や「諸費用」に含まれないものとしては、“遠方納車の陸送費や管轄外登録(届出)費用”“任意保険料”“希望ナンバー申請費用”“下取り諸手続き代行費用”“下取査定費用”“ETCセットアップ費用“などがあります。
罰則も強化されて業界の健全化を図る
もしも上記に違反して、表示した「支払総額」で販売しない(保証や整備費用を別途請求した)、「納車準備費用」等、本来「車両価格」に含まれるべき費用を「車両価格」に含めずに請求した場合には「不当な価格表示」とされ、販売業者には“厳重警告”、悪質な場合は“違約金”が課されるとともに事業者名を公表するなど、厳しい措置が採られることになりました。
ユーザーにはメリットでしかない今回の改正
中古車販売業者に立場からみると、総額表示に対応する時間と労力が必要になりますが、これにより中古車の価格は、全国、同じ水準で表記されることになり、中古車業界につきまとっていたグレーなイメージが払拭されて業界の活性化にもつながるのではないでしょうか。
なによりユーザーにとっては、店舗間、車両の状態による価格差がわかりやすくなり、安心して中古車を買いやすくなったことは朗報ですね。