川崎市内を縦断するJR南武線
JR南武線(以下、南武線)は、神奈川県の川崎駅から東京都の立川駅までを結ぶ路線です。
都内から東西に伸びる路線が多い中、南武線は多摩川に沿うように南北に伸びています。そのため川崎や武蔵小杉、武蔵溝ノ口、登戸など他路線への乗換駅が多数あり、多方面にアクセスできる重要な路線となっています。
東京23区や川崎・横浜へのアクセスも良好
南武線の武蔵小杉・武蔵中原・武蔵新城・武蔵溝ノ口の4駅は南武線中央に位置し、いずれの駅も快速の停車駅。首都圏の各方面にアクセスがしやすいエリアとなります。
特に武蔵小杉の駅周辺には、JR南武線のほかJR横須賀線・湘南新宿ラインと東急東横線・目黒線の駅があり、自由が丘・渋谷・目黒、さらに横浜や埼玉・千葉へもつながっています。
武蔵溝ノ口駅からは徒歩1〜2分で東急田園都市線・大井町線の溝の口駅に乗り換えることができ、こちらも渋谷や大井町などの都心につながっています。
この両駅(武蔵小杉・武蔵溝ノ口)の周辺が特に発展しており、単身者やファミリー層にとって便利なまちです。まずはこの2駅の最新の開発状況を見ていきましょう。
武蔵小杉駅周辺の開発
もともと工業地帯であった武蔵小杉周辺では、1995年にJR武蔵小杉駅の北側に「武蔵小杉タワープレイス」が竣工したのを皮切りに、再開発がはじまりました。その後2020年に至るまで、主に駅の南側にタワーマンションが相次いで建てられ、商業施設も増加、人口が急増しています。
なお、武蔵小杉駅周辺の人口は、1995年と2020年の比較で2倍以上(RENOSY 調べ)に増えています。
学校法人日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画
JR武蔵小杉駅の北口では「小杉町1・2丁目地区地区計画」が進行中です。
計画の一環として、日本医科大学武蔵小杉病院の建て替えが行われました。もとあった病院の北側(日本医科大学グラウンド跡地)に新築移転のかたちで2021年9月にオープンしています。
病院の新設は老朽化による建て替えです。既存の病院は新病院の完成後に解体され、跡地には地上50階地下1階、高さ約180m、戸数約1,500の超高層ツインタワーマンションが建設されます(2026年に完成予定)。
最新のタワーマンション「Kosugi 3rd Avenue」
武蔵小杉で最も新しいタワーマンションは、JR武蔵小杉駅の南側に2020年6月に竣工したKosugi 3rd Avenue(コスギ サード アヴェニュー)です。
地上38階地下2階建て、住戸数519戸で、低層階には飲食店などの商業施設が入っています。
武蔵小杉駅周辺には、先述の日本医科大学武蔵小杉病院跡地にできるツインタワーのほか、2024年5月に「ドレッセタワー武蔵小杉(地上23階建)」が竣工予定です。さらに駅の北口では、地上43階地下2階建てのタワーマンションが建設される「(仮称)小杉町一丁目計画」も進みはじめています。
参照: (仮称)小杉町一丁目計画に係る条例環境影響評価方法書|川崎市
武蔵溝ノ口駅周辺
武蔵溝ノ口駅周辺の再開発計画は、1962年にさかのぼります。
当時は駅前広場がなく、駅周辺の交通渋滞の緩和や歩行者の安全確保のために、1988年に溝口駅北口地区第一種市街地再開発事業の都市計画が決定されました。
1997年9月に商業施設を中心に行政サービスも含んだ大型複合施設「NOCTY(ノクティ)」が開業し、駐車場や駐輪場も整備されました。駅とビルを結ぶキラリデッキ(ペデストリアンデッキ)もできました。
参考:溝口駅北口地区市街地再開発事業|川崎市
川崎駅周辺の再開発
南武線は、北は立川駅(東京都立川市)、南は川崎駅(神奈川県川崎市幸区)を結んでいます。川崎駅の開発状況も見ていきましょう。
川崎駅西口
ビジネス・宿泊・商業機能の大規模複合型まちづくり「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」が行われ、2021年5月に開業しました。
その中でもJR川崎タワーオフィス棟・商業棟は、1万人規模の新たなビジネス拠点として機能するようです。
オフィス棟の中には、大小さまざまな規模のイベントが開催できる「ステーションコンファレンス川崎」も誕生し、川崎エリア最大級の客室数の「ホテルメトロポリタン川崎」との連携による宿泊型研修が見込まれています。
現在の川崎駅西口
KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)と同じ川崎駅西口には、2006年に誕生したラゾーナ川崎があります。敷地面積72,000m2、店舗数約330店の大型ショッピングモールで、2019年度の売上高は928億円、三井不動産が運営する商業施設の中で第1位です。
川崎駅の魅力は利便性の高さにあり、駅前には買い物スポットが充実しています。西側だけでなく、駅東側には商店街(仲見世通商店街)や個人商店などが集結していて、昔ながらの空気も感じられます。
南武線の特徴
JR南武線沿線には、大手電気機器メーカーの事業所や研究施設などが集まっています。
沿線の企業
企業名 | 従業員数 |
---|---|
キヤノン株式会社 | 180,775人(2022年12月31日現在) |
富士通株式会社 | 124,000人(グローバル、2023年3月末現在) |
東京応化工業株式会社 | 1,950人(連結、2022年12月31日現在) |
株式会社アルファシステムズ | 2,944人(2023年3月31日現在) |
南武線沿いは東芝、富士通、NEC、キヤノン、日立など有名企業の研究所や事業所が集まる、オフィス集積地となっています。なお、キヤノンは南武線沿いに3つの事業所があります。
ちなみに2017年には、トヨタ自動車がITエンジニアの人材確保のため、大手電機メーカーの拠点が集まる南武線沿いの10駅に求人広告を展開。インパクトのあるキャッチコピーのポスターがネット上で話題になりました。
川崎市は大手からベンチャー企業まで、規模を問わず積極的に企業誘致を行ったことで、駅周辺の発展に伴って今後も多くの人が川崎に集まっていくことでしょう。
人口推移
2005年から2020年にかけて、いずれの駅でも人口が増加しているのがわかります。
特に武蔵小杉駅は人口増加率179%と飛躍的に伸びており、今後もさらなる増加が見込まれます。
現在のまちの様子(2021年2月時点)
次に、現在のまちの様子を紹介します。
駅周辺のまち並み
- 武蔵小杉
- 武蔵中原
- 武蔵新城
- 武蔵溝ノ口
武蔵小杉
武蔵小杉駅は、ホームが離れているJR南武線と湘南新宿ライン・横須賀線の2路線と、東急電鉄の2つの鉄道会社が通っています。
JR2路線間は駅構内でつながっていますが、改札を出るとその間にタワーマンションが立ち、生活に必要なショッピングモールやスーパーが点在しています。
武蔵小杉駅周辺は、再開発によって建てられたタワーマンションや商業施設だけではなく、コンビニや個人商店など、生活に必要なお店も駅前にも揃っています。
川崎フロンターレのオフィシャルグッズショップなど、地元の人にはもちろん、遠方のファンの方に愛されるお店もあります。
武蔵中原
武蔵中原は、商店街が多い武蔵新城と、再開発でビッグターミナル駅になった武蔵小杉にも自転車でアクセスできます。
改札を出てすぐ目の前にはスーパーがあります。
駅から徒歩圏内の等々力緑地は、東京ドーム9個分以上(435,914m2)と圧倒的な広さを誇る公園です。陸上競技場はサッカーJリーグ川崎フロンターレのホームスタジアムです。
陸上競技場のほか、体育館、野球場、プール、テニスコートなどのスポーツ施設、博物館も設置されています。
等々力緑地と反対側、南口改札から徒歩5分ほどのところには、富士通株式会社 本店・川崎工場があります。
駅前以外にもスーパーや飲食店が点在しています。
武蔵新城
武蔵新城駅には、あいもーる商店街、サンモール商店街、マイロードゆうゆう、新城北口はってん会、北口一番街商店会など、駅北口と南口、東西に7つの商店街が広がっており、生活用品店をはじめ飲食環境が充実しています。
参考:中原区商店街連合会|一般社団法人 川崎市商店街連合会
武蔵新城駅北口徒歩3分の西友は4階建てで、食料品だけでなく、日用品からくすりのフロアまで充
実した品揃えになっています。武蔵溝ノ口
武蔵溝ノ口駅周辺は南武線の中でも主要な商業地域の一つになっています。先に挙げたNOCTYのほか、大型の商業施設が存在し、多くの人の行き来を目にすることができます。
駅の東側には、数百メートル続く通り沿いにポレポレタウンという商店街もあります。100店舗以上の専門店が立ち並び、フリーマーケットなどのイベントも開催され、多くの人でにぎわっています。
武蔵溝ノ口駅北口徒歩5分の場所には「溝口神社」があり、地元の人たちの参拝の場所となっています。お正月には初詣で大勢の参拝客でにぎわいます。
また神社から近い旧大山街道(県道14号)沿いの商店街を東に進んでいくと、多摩川の河川敷、二子玉川へも歩いていくことができます。
南に10分ほど歩いたところには洗足学園音楽大学もあります(学生数約2,500人 2022年度データ)。
2017年には駅南口広場も完成し、住みやすい環境が整備されています。
生活に便利で親しみやすいまち
武蔵小杉、武蔵中原、武蔵新城、武蔵溝ノ口は、それぞれにカラーがあり、新旧の商店街で地元の人や文化に触れることもでき、一人暮らしからファミリー層まで暮らしやすい、長く住みたくなる「活気」と「落ち着き」が共存するまちです。
再開発が進められているエリアも多く、川崎市は道路整備の計画なども進んでいるため、今後さらに快適に住みやすくなるでしょう。
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