毎日新聞社は、「第41回毎日ファッション大賞」の授賞式をを10月16日に行った。大賞を受賞したのは「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」デザイナーの黒河内真衣子だ(既報)。
最近では、「ユニクロ(UNIQLO)」とのコラボで一気に全国的な知名度を上げた印象のある「マメ クロゴウチ」だが、一体何がここまで評価されているのだろうか。
デザイナーである黒河内真衣子は、1985年に長野県で生まれた。文化服装学院卒業後、三宅一生による三宅デザイン事務所での勤務を経て、2010年に黒河内デザイン事務所を設立。「マメ クロゴウチ」の前身である「マメ(mame)」をスタートさせた。シーズンを重ねるごとに支持を伸ばし、2014年には毎日ファッション大賞の新人賞・資生堂奨励賞を受賞した。2017年には、東京都と繊維ファッション産学協議会が国内のデザイナーの海外進出を支援するため設立した「ファッション・プライズ・オブ・トーキョー(FPT)」の第1回受賞者となり、その支援を受けて、2018年に初めてパリコレの舞台を踏んだ。この時からブランド名を「マメ クロゴウチ」に変更。2021年からスタートした「ユニクロ」とのコラボコレクション、「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI)」がヒットし、惜しまれつつ2023年9月にラストコレクションを発表した。
そんな「マメ クロゴウチ」の特徴は、「現代の女性のための戦闘服」というコンセプト、美しい曲線が描くシルエット、繊細で立体的な刺繍、自然からインスピレーションを受けた優しい色使いなど様々だが、特に注目すべきは日本の伝統技術および素材との親密な関係性だ。
2023年秋冬のコレクションは、春夏に引き続き20世紀初頭の日本の竹工芸とその周辺文化に着想を得ている。大正から昭和にかけて活躍した竹工芸の名工である飯塚琅玕(いいづかろうかんさい)らの造形表現を黒河内の手でファブリックに落とし込んだ。竹籠の網目を表現したトーションレースや絞りなどの技術が生かされたプリーツ、モデルの身体を花籠に見立てたルックなど、日本の伝統文化への強い関心と敬意が服に表れている。
制作の過程でも、デザイナーである黒河内自身が全国の工場に出向き、職人と直接連絡を取り合うことが多い。また、「マメ クロゴウチ」のアイテムの生産は全て日本国内で行われている。あくなきまで追求された「本物」が使われた服だからこそ、これほどの人を惹きつける魅力があるのだ。また、そのように全国を回る中で新たに地方の文化や自然に出会い、そこから次のコレクションの着想を得ることもある。また、2019年には株式会社TARO HORIUCHIと共に縫製会社を設立。日本の高い技術力を継承していくと共により高品質なコレクションを製作していくことを目指している。
「マメ クロゴウチ」成功の背景にあるのは、こうした「ものづくり」へのリスペクトと伝統に対する真摯な姿勢なのだろう。