ハンバーガーチェーンの「モスバーガー」を展開するモスフードサービス<8153>は、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長の性加害問題を受け、ジャニーズ事務所との契約を継続しない方針を表明。「マクドナルド」を展開する日本マクドナルドホールディングス<2702>は同事務所との契約について正式な発表をしていないが、モス同様の方針であると報道されている。
両社はジャニーズ事務所所属のタレント(マクドナルドは歌手で俳優の木村拓哉さんを、モスは男性アイドルグループSnow Manのラウールさんと渡辺翔太さん)をテレビCMに起用し、これらテレビCMなどを通じてブランド価値を高めてきた経緯がある。
契約を継続しないことによる業績への影響については、今のところ公表していないが、プラスに働く要因は見当たらない。両社はどのような業績見通しを立てているのか。現状を見てみると。
マクドナルドは増収増益予想
マクドナルドは中期経営計画(2022年12月期から2024年12月期)の中で、メニューや店舗の改善と並んでブランド力の向上に注力する方針を掲げており、2022年12月期決算ではテレビCMなどによって「ブランドに対する好感度や信頼度が上がっており、今後もこれまでの取り組みを継続強化する」としていた。
今回この方針の見直しが求められているもので、新たなタレントの選出やCM作成などが急務になる。同社ではこの見直しによる業績への影響については、2023年8月10日に発表した2023年12月期第2四半期決算の際に公表した業績予想を据え置いている。
その2023年12月期の売上高は3740億円(前年度比6.2%増)、営業利益350億円(同3.5%増)と増収増益の見通しだ。
モスも堅調に推移
一方、モスフードサービスは2023年9月13日に「ジャニーズ事務所所属タレントの起用方針」を発表。「今後、明確な被害者救済と再発防止の取り組みが認められない以上、ジャニーズ事務所との契約は継続しない。現在展開中のジャニーズ事務所所属タレントを起用したテレビCMや店頭広告などについてもできる限り速やかに変更する」としている。
この決定に伴う業績の影響には触れておらず、2023年8月10日に発表した2024年3月期 第1四半期決算時の2024年3月期業績予想では、売上高は900億円(前年度比5.8%増)、営業利益は27億円(同65.8倍)と堅調に推移する見通しだ。
両社は原材料価格の高騰などを理由に昨年から数度に渡って値上げを実施してきた。そうした中、実施してきたテレビCMには、ブランド価値を高め値上げによる消費者離れを防ぐ効果があった。
今後、テレビCMの見直しによるマイナスの影響をどこまで抑えることができるのか。両社の対策が業績を左右する一因になるかもしれない。