米国のエージェント会社は巨大M&Aの仲介も
米国ではタレント・エージェント(talent agent)として、主に映画業界で俳優や監督、脚本家、プロデューサー、撮影監督らと代理人契約を結んでいる。
「映画の都」ハリウッドには、ICMパートナーズやクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)、ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)の4大エージェンシーが存在する。
こうした巨大エージェンシーは芸能人との「エージェント契約」だけではなく、エンタテインメント業界のM&Aも手がけている。CAAは1989年にソニーの代理人としてコロムビア映画の買収を、1991年には松下電器産業(現パナソニック)によるユニバーサル映画の買収をそれぞれ成功させ、巨額の手数料を得た。WMEは2016年に総合格闘技団体のUFCを40億2500万ドル(約4400億円=当時)で買収した。日本の芸能事務所とは事業のスケールが違う。
韓国では2009年7月に同国の公正取引委員会が「芸能人標準契約書」を発表。専属契約の期間は最長7年とされ、芸能人のプライバシーや人格権を保護するなどの条項も盛り込まれている。
同年に人気アイドルグループの「東方神起」の所属事務所が、彼らの出演料からグループのプロモーション費用を差し引き、さらに残額の60%を事務所に配分する不公平な契約を結んでいたことが明らかになり、世論の激しい批判を受けた。その結果、芸能人に有利な「エージェント契約」を結ぶケースが増えている。
日本でジャニーズの新エージェント会社が立ち上がっても、複数の大手エージェント会社が登場しないと競争にならない。そうなるとエージェントの手数料率が高止まりし、芸能人の最終的な報酬が「マネジメント契約」と変わらないという事態も起こりうる。
さらには人気のない芸能人がプロモーションやマネジメント費用などの経費削減のため、芸能事務所から「エージェント契約」を強いられる懸念もありそうだ。芸能人の権利を保護し、芸能ビジネスの公正・公平化を実現するためには、日本においても公正取引委員会などによる継続的な監視と関連法の整備が待たれる。
文:M&A Online