ゲーム大手の任天堂<7974>は2023年11月7日に、2024年3月期の業績予想を上方修正し、売上高を従来予想より1300億円多い1兆5800億円に引き上げた。それでも前年度との比較では1.4%のマイナスで、3期連続の減収となる。
ソニーグループ<6758>は2023年11月9日に発表した2024年3月期第2四半期決算で、2024年3月期のゲーム部門の売り上げが従来予想よりも1900億円多い4兆3600億円に達する見通しを公表した。こちらは4期連続の増収となる。
では利益はどうか。任天堂は売り上げとともに利益も上方修正しており、営業利益を500億円多い5000億円に引き上げた。それでも売り上げ同様、前年度との比較では0.9%のマイナスで3期連続の営業減益となる。
ソニーの営業利益は2700億円で従来予想を据え置いた。30%近い大幅な営業減益となった前年度からは増益に転じる。
3期連続の減収減益の任天堂に対し、4期連続の増収、営業増益のソニー。その中身を見てみると。
発売7年のスイッチに陰り
任天堂の2024年3月期第2四半期は、前年同期比21.2%の増収、27.0%の営業増益となった。ゲーム機の販売台数が2.4%増の684万台に、ソフトウェアの販売本数が1.8%増の9708万本と好調に推移したほか、円安による為替の影響も加わり、2ケタの増収増益を達成した。
こうした中間期の情勢を踏まえ業績見通しを上方修正したが、ゲーム機のニンテンドースイッチが、発売から7年近くが経ち、今後大きな伸びが見込めないことなどから、通期では減収減益が避けられない見通しだ。
買収費用などが減少
ソニーの2024年3月期のゲーム部門は、19.6%の増収、8%の営業増益を見込む。売上高は、為替の影響やゲームソフトの販売が増加するため、20%近い伸びとなる。営業利益もゲームソフトの販売増加に伴って拡大する。
2023年3月期は、ゲームソフト開発費や、米国のゲーム開発会社Bungie, Inc.nc.などの買収に伴う費用として527億円を計上したことなどから大幅な営業減益となっていた。こうしたコストが減少することから増益に転じる見込みだ。
コロナ禍後の変化は
一方2024年3月期の売上高営業利益率を見ると、ソニーの6.19%(全社では9.43%)に対し、任天堂は31.64%に達する。任天堂は2023年3月期(31.49%)、2022年3月期(34.96%)も同様の傾向で利益率は高い。一方、ソニーは2023年が6.85%、2022年が12.63%で、このところ利益率が低下していることが分かる。
ゲーム業界はコロナ禍による巣ごもり需要などで市場が大きく拡大した。コロナ禍が収まり、日常が戻る中、利益率は低下しているものの売り上げが大きく伸びているソニーと、減収減益が続くが高い利益率を維持している任天堂というゲーム大手の両社には、今後どのような変化が訪れるだろうか。
文:M&A Online