またモノレールが消える。東京都交通局が運行休止中の上野懸垂線(東京都台東区)を予定よりも7カ月繰り上げ、12月27日に廃止することになった。24年1月から解体に着手し、モノレールに代わるバリアフリー対応の移動手段を導入するという。24年4月末には中国地方唯一のモノレールである、スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線(広島市安芸区)が廃止される。モノレールは消えゆく運命なのか?

モノレール延伸構想は相次ぎ頓挫

現在、日本国内に存在するモノレールは10社12路線で、総営業キロは116km。来年5月には2社2路線が廃止となり、8社10路線となる。ただ上野懸垂線は上野動物園の敷地内を運行するわずか300mの路線で、実態は園内の遊具。来春廃止となる広島短距離交通瀬野線は最寄り駅と高台の団地を結ぶ1.3kmの住民専用輸送手段の性格が強い。廃止される路線距離は合計でも1.6kmと短く、「モノレールの消滅」につながるものではない。

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(画像=来春に廃止されるスカイレール(中国運輸局ホームページより)、「M&A Online」より引用)

現時点で新たに廃止を予定している路線はないが、安心してもいられない。各地でモノレールの延伸計画が軒並み断念されているからだ。

2路線の廃止後に国内で最も短い路線となる千葉都市モノレール1号線には県庁前から市立青葉病院前を経由して星久喜に延伸する構想もあったが、2004年3月に千葉県の財政難を理由に断念。

同2号線も穴川駅から分岐してJR稲毛駅・稲毛海岸駅方面への延伸が検討されていたが、2019年9月に千葉市が断念している。

湘南モノレール江ノ島線にも湘南江の島から観光地の江ノ島や神奈川県茅ヶ崎市まで延伸する構想もあったが、立ち消えとなった。

大阪モノレール彩都線は彩都西駅から中部駅(仮称)を経て東センター駅(仮称)への延伸に向けて国土交通省に事業申請していたが、2017年1月に採算面の懸念から断念。2019年1月には延伸事業廃止を申請して正式に中止となった。

沖縄都市モノレール ゆいレールも宜野湾市普天間を経て沖縄市までの延伸構想はあるが、採算性の懸念から具体的な動きはない。


鉄道との競争に苦しむモノレール

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(画像=延伸計画が沙汰止みになった東京モノレール(同社ホームページより)、「M&A Online」より引用)

モノレールのライバルは鉄道だ。2010年に東京モノレールは羽田空港線を浜松町駅から新橋駅、さらには東京駅へ延伸する検討に入った。

だが、2013年に親会社のJR東日本で田町駅から営業休止中の東海道貨物線を活用して羽田空港に直結する「羽田空港アクセス線」計画が浮上すると、モノレール延伸構想は沙汰止みになった。

沖縄本島中部・北部との交通アクセスではモノレールの延伸ではなく、那覇市-名護市を結ぶ鉄道路線の沖縄鉄軌道を新設する構想がある。

営業最高速度は最速の東京モノレールで時速80km、沖縄都市モノレールでは同65km。1編成当たりの車両定員は最大の東京モノレール(102人✕6両)が612人なのに対し、山手線(148人✕11両)は1628人と2.6倍以上の開きがある。

モノレールは乗客が少ない地方では採算面が問題となり、乗客が多い都市部では高速・大量輸送が可能な鉄道との競争が激しいというジレンマに直面しているのだ。

具体的な延伸計画が進んでいる多摩都市モノレール線(上北台駅-箱根ヶ崎駅、多摩センター駅-町田駅)や大阪モノレール本線(門真市駅-瓜生堂駅)は、路線予定地が丘陵地や住宅密集地を通る。新たに鉄道を敷設するよりも、アップダウンに強く河川や道路の上空でも敷設できるモノレールの方が建設費や用地取得費を抑えられるというコストメリットがある地域だ。

日本のモノレールが存続できるかどうかは、こうした都市交通の「すき間」を埋められるかどうかにかかっている。