白地に青の矢印の標識を見かけたことはありますか。一方通行の標識と似ていますが、一方通行ではなく「左折可」を表しています。この左折可の標識は、かつて奈良県の名物のひとつとも言われていました。しかし、事情があり、取り外しされているところも増えてきています。
「左折可」を表す、白地に青の矢印。
同じ関西でも、大阪府や京都府に住む方は見慣れておらず、「何これ?分からへん」という方も少なくありません。
しかし、奈良県に住む方に尋ねてみると「そんなん知ってるわ。左折可やろ」という回答が多くなります。
実際、奈良県の道路を走ってみると、左折可の標識をたびたび見かけます。赤信号でも左折するクルマ。なかには、朝の7時から9時までに限定されいるものもあります。
左折可の標識がなぜあるの?
左折可の標識は、左折するクルマをスムーズに流して渋滞を緩和させるためにつくられました。
NHKの取材によると、2023年3月末時点で左折可の標識の設置数は以下の通りです。
・奈良県:26か所
・京都府と兵庫県:11か所
・大阪府:5か所
・滋賀県と和歌山県:0か所
ただし、奈良県警交通規制課の担当者に、奈良県の設置数が多い理由について尋ねても、「渋滞緩和のために設置しているが、奈良県が他府県より多い理由は実はよく分からない」とのこと。
(参考:NHK「安心してください 曲がれます」)
一説によると、1988年に奈良県でおこなわれた「なら・シルクロード博覧会」が左折可の標識が設置されるきっかけになったのではないかと考えられています。渋滞がひどくなることを懸念した当時の奈良県警察幹部が左折可の標識の導入に踏み切ったとされています。
その後、全国に左折可の標識が広がったものの、いつしか次々に姿を消していきました。しかし、奈良県には残り続けるものが多かったとされています。
その理由は、奈良県は平城京に代表される遺跡の町で道路を掘れば何かが出てくる「文化財の宝庫」と呼ばれるほど、道路を広げるのが簡単ではなく、左折可の標識を設置することで渋滞を緩和させるほうが現実的だったからです。
奈良県の名物「左折可」が消えていく?
左折可の標識が多く残っている奈良県ですが、2023年3月奈良県の名物ともされてきた「県庁東交差点」の左折可の標識が撤去されました。
この県庁東交差点は、奈良公園や東大寺、春日大社といった奈良県の観光名所を訪れるクルマが頻繁に通るところです。
しかし、左折可の標識は「分かりにくい」「戸惑った」という声も少なくなく、さらに矢印信号や信号制御などによって左折可の標識がなくても渋滞を防ぐ環境が整いつつあるため、撤去に踏み切られています。
今回は、奈良県の左折可の標識について紹介しましたが、他の地域にも名物となっている特有の標識があるかもしれませんね。