ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「G7・G20で為替は話題にならなかった2023年。米国順調もぶっ壊すのはトランプ氏か」

ドル円=140-145、ユーロ円=152-157、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(10位)、株価4位(4位)、毎年、同じ時期に同じ方向へ進む円相場。日々の仲値もそうだ」
今回リポートが2023年最終号です。楽しいクリスマス、良いお正月をお迎えください。2024年は1月8日からスタート致します。

 2022年と同様に、今年も7月、11月、12月はドル円が下落、刹那的なニュース、金利動向、経済動向いろいろあれど、根っこの実需の動きが毎年、同じ傾向を生んでいるのでしょう(日々の仲値も同じ源泉)。さて注目されている日銀金融政策決定会合では、今回は現状維持の予想だ。日銀は過去1年でYCCを2022年12月、23年7月と10月を上方修正した。一時的に円高となったが、中期的には円高を維持できなかった。

 また今週は11月消費者物価、来週は「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」も発表される。日銀の注視する「6つのインフレ指標」はいずれも2%を超えているが3つが上向き、3つが下向きで判断に迷う所だろう。7-9月期GDPはマイナス成長、実質賃金も19か月連続マイナスの伸びということも緩和解除に障害となる。ただ金融引き締めではなく、正常化という意味では、マイナス金利が解除されても不思議ではない。漸く、氷見野副総裁が、「家計は全体でみれば借入額より預金が多く、金利のある時代に戻れば、総じて収支が改善するのではないか」などと発言したことは評価したい。マイナス金利では世界と比べても消費は伸びない。

 ドル円の動向としては、貿易赤字の改善に注目で、最近のエネルギー価格の下落で、日本の貿易赤字が縮小していることは円安要因を縮小させている。今年は円買い介入もなくとも円相場がやや落ち着いてきた。原油価格、サプライチェーンの状況が円相場を決めていくだろう。12月下旬も過去のデータでは円高傾向となっている。1月初旬は円安傾向だ。


*米ドル「通貨6位(5位)、株価(NYダウ)11位(11位)、対ドル為替は話題にならなかった2023年。米国順調もぶっ壊すのはトランプ氏か」
 米ドルは今年は良い位置にある。12通貨中6位。ドルが真ん中にいることで、他の通貨も強すぎず弱すぎず平穏で、為替相場がG7、G20で話題になることがない2023年であった。ドル円は年初来8.44%高、対ドルで5%以下の変動に収まっている国が多く、突出しているのはドル・メキシコペソが11.78%安、ドルトルコリラが54.7%高。
 米国経済も、高金利による懸念された景気後退はなく、失業率は低く、インフレも低下し、利下げも示唆されている。4QのアトランタGDPナウは、2.6%、クリーブランド連銀の12月CPIナウは3.38%(11月の3.1%よりやや高い)。今後の懸念材料は大統領選挙へ向けたトランプ大統領の動向だろう。民主党の外交や経済政策も覆されるかもしれない。

 FRBは来年の利下げを示唆したが、その後の要人のイエレン財務長官を含め発言は様々、自由に発言してまとまっていくのだろう。予想は高邁なエコノミストよりも上記のGDP、CPIナウやサプライチェーンインデックス、VIX指数よりも調査対象が広い、CNNの恐怖と欲望指数を参考にするのもいいだろう。

*FOMC=利下げがいつ適切になるかという問題が視野に入ってきている
*ウィリアムズNY連銀総裁=来年3月の利下げを検討するのは時期尚早
*ポスティック・アトランタ連銀総裁=米利下げ、差し迫っていない
*グールズビー・シカゴ連銀総裁=来年3月会合で利下げの可能性を排除していない
*イエレン財務長官=インフレが鈍化すれば、金利は当然低下
*バイデン大統領=雇用、賃金が増加、人々は仕事に復帰している。過度な期待はしないが、インフレが緩和し始めている
*非農業部門雇用統計は、利上げを再開することを促すものではない
*サマーズ氏=FRBはインフレ抑制の「確かな」データを待つべきだ


*ユーロ「通貨4位(4位)、株価6位(6位)DAX)、ラガルドECB総裁と市場のギャップが拡大」
 年初来、通貨は4位、株価(独DAX)は6位とまずまず。米ドルとユーロが今年は安定推移し、G7、G20でも為替は問題とならなかった2023年。コテコテのドイツ生まれのタカ派かと思ってしまうフランス生まれのラガルドECB総裁は、マイナス成長、CPI2%台、PPIはマイナスでも、「金融政策は決して警戒を緩めるべきではない。利下げについては全く議論しなかった。議論も討論もなかった」と述べた。

 しかし、フランス中銀総裁やイタリア中銀総裁は利下げを示唆している。EU各国の10年国債利回りは年初のレベルを大きく下回っている。ドイツは2%を割りそうな水準、他国も2%台、3%台で米国の10年国債利回りよりも低い。市場は利下げを織り込み続け、景気は良くないが、エネルギー価格の下落で貿易黒字を維持していることでユーロも底堅い。ユーロ円はピークの164円から10円ほど下落したが、年初来10.39%高だ。エネルギーの海外依存度は10%台で日本の20%台の半分程度であることも為替需給面での強さとなっている。


*ポンド「通貨3位(3位)、株価17位(16位)、歴史的に弱いポンドが今年は3位に」
 2023年、英ポンドは3位を維持している。かつては基軸通貨であったが、ピークの1ポンド=10ドルからは下落するのみ、ただ1ポンド1.0ドルは割らない。戦後のポンドは9通貨中8位と弱い。今年は堅調だった。短期だった前トラス政権の放漫財政を反省し財政改革を行ったことは市場から評価が高まった。政策金利、長期金利もEUより高い。経済指標もEUより強い。12月総合PMIはユーロ圏が47で前回の47.6から低下、英国は51.7と前回の50.7から上昇した。消費者物価はユーロ圏が2.4%、英国が4.6%である。

 英中銀は、政策金利を5.25%で据え置いたが「長期にわたり」高止まりする必要があるとの認識を改めて示した。 据え置きは3会合連続で6対3で決定。グリーン委員、ハスケル委員、マン委員の3人が0.25%引き上げを主張した。 利下げが議論されることはなく、インフレが米国やユーロ圏よりも粘着性が高い可能性を引き続き懸念した。「インフレ圧力がさらに持続する証拠があれば一段の引き締めが必要になる」と表明した。 ベイリー総裁は「連続利上げにより、インフレ率は1月の10%超から10月には4.6%に低下した。しかし、まだ下がる必要がある。インフレ率22%に戻すために必要な決定を下す」と述べた。
また、「利下げを考え始めるのは時期尚早との認識を示し、借入コストがピークに達したと保証はできない」とした。


*豪ドル「通貨7位(7位)、株価13位(15位)、雇用改善で上昇、ただ4Q・GDPは実質マイナス成長予想もあり」
 先週の豪ドルは対ドルで陽線、対円でも3週ぶりに陽線となった。FRBの来年の利下げ示唆と豪の11月雇用統計の改善が押し上げた。11月の雇用統計は、就業者数の伸びが2カ月連続で予想を大幅に上回った。ただ、求職者が増加したため失業率は1年半ぶりの水準に上昇した。

就業者数は前月比6.15万人増加。予想は約1.1万人増、10月(改定値)は4.27万人増だった。フルタイムの就業者数が5.7万人増加。失業率は3.9%と、上方改定された10月の3.8%から上昇し、昨年5月以来の水準となった。労働参加率は過去最高の67.2%に上昇した。チャーマーズ財務相は、労働市場の底堅さを指摘。労働市場は想定通りに軟化しているが、11月の失業率の数字は素晴らしいと評価した。

ブロックRBA総裁は、政策当局者は金融政策を巡り慎重姿勢を維持しており、今後発表されるデータを引き続き注視すると表明した。世界的なインフレとの戦いで後れは取っていないとも述べた。

一方、3Q・GDPは、前期比0.2%増と1年ぶりの低い伸びにとどまり、予想の0.4%増を下回った。4Qに実質GDPがマイナス成長に転じるリスクがあると指摘されている。金利はピークに達し、緩和サイクルが来年3Qに始まると予想されている。

*NZドル「通貨8位(8位)、株価18位(18位)、弱いGDP、インフレ低下だが、FRBも利下げ示唆で上昇」
 今月は6位、年間では8位。いずれも、豪ドルの後塵を拝している。
3Q・GDPは前期比で0.3%縮小した。前年比では0.6%減少した。予想はそれぞれ0.2%増、0.5%増で失望を誘った。製造業や建設業などが低調だったほか、家計支出も鈍化し、予想外のマイナスとなった。
中銀はインフレとインフレ期待を抑制するためには経済成長の鈍化が必要との考えを示しているが、3Q・GDPは予想よりも弱い数字となった。3Qの消費者物価上昇率は5.6%増と2Qの6.0%から低下した。中銀は水準的にまだ高いとしている。

 市場では、リスクは、すでに進行中の引き締めがより高い実効住宅ローン金利と純移民の正常化を通じて経済全体に作用し続けるため、経済がここから減速し続けることになると見られている。技術的に景気後退に陥るかどうかに関係なく、今後数カ月は非常に低迷する。

テクニカル分析

*ドル円「5か月線も下向く」
日足、一時ボリバン3σ下限下抜く、現在2σ下限。雲の下。12月14日-15日の上昇ラインがサポート。12月14日-15日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線下向き。
週足、一時ボリバン2σ下限下抜く。現在もボリバン2σ下限。7月10日週-12月11日週の上昇ラインがサポート。11月27日週-12月11週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、9月-10月、5月-7月の上昇ラインを下抜く。3月-4月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線は上向き。
年足、2023年はここまで大陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上る。ただ22年の高値を上抜けず。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。


*ユーロドル「ボリバン2σ上限から中位、5日線上向き、20日線下向きと気迷い」
日足、ボリバン2σ上限から中位へ下落、5日線下向く。12月13日-15日の上昇ラインがサポート。12月14日-15日の下降ラインが上値抵抗。
5日線上向き、20日線下向く。
週足、2週連続陰線から切り返し雲の上に上昇。12月4日週-11日週の上昇ラインがサポート。11月27日週-12月11日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、11月は9月-10月の下降ラインを上抜いてスタートで大陽線。10月-11月の上昇ラインがサポート。7月-11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向き、20か月線上向き。
年足、陽転。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインを上抜くも元に戻る。


*ユーロ円「ボリバン下限で推移」
日足、2σ上限から3σ下限へ下落。雲の下。12月14日-15日の上昇ラインがサポート。12月13日-15日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向く。
週足、ボリバン3σ上限から2σ下限へ下落。12月4日週-11日週の上昇ラインがサポート。12月4日週-11日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、年初来高値から反落。7月-10月の上昇ラインを下抜く。22年3月-23年3月の上昇ラインがサポート。11月-12月の下降ラインが上値抵抗。5か月下向く、20か月線は上向き。
年足、3年連続陽線。今年はさらに大陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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