3.長男・大輔氏「世襲報道」の放置

豊田会長の長男である豊田大輔ウーブン・バイ・トヨタ シニアバイスプレジデントをネットで検索すると、「大政奉還」に紐(ひも)づいた記事が大量に表示される。いわば「トヨタ社長の世襲」を既定路線と報じるニュースだ。

M&A Online

(画像=豊田大輔氏の社長就任を「当然視」する報道の放置は、トヨタにとってもリスクだ(同社ホームページより)、「M&A Online」より引用)

豊田大輔氏は30代半ばで、トヨタの経営陣にも名を連ねていない。経営者としての能力も未知数だ。現時点で「社長候補」という見方が広がれば、豊田会長の意向がトップ人事に多大な影響を及ぼしているとの評価になる。

トヨタの広報戦略としては、こうした「憶測報道」を完全に否定する必要がある。メディアに対しても「憶測報道」をしないように強く働きかけるべきだろう。かつて奥田碩社長(当時)が豊田家の世襲人事に否定的な発言をしていたのも、本音はともかくメディア対策としては正しかった。

豊田大輔氏への「大政奉還」や「世襲」報道を抑えることは難しくとも、こうした報道を「憶測にすぎない」と強く否定するメディア戦略がトヨタには必要だ。豊田会長がトヨタ報道に不満を持っていることはよく知られているが、「大政奉還」や「世襲」報道に対して強い否定や厳しい態度を表明したことはない。

米議決権行使助言会社の「反対」推奨は氷山の一角に過ぎず、豊田会長への「権力の集中」批判が深刻化する可能性もある。特にトヨタの業績が悪化する事態に陥れば、そうした批判が噴出するだろう。そうなる前にトヨタはメディア戦略を組み直す必要がある。

文:M&A Online