ゴルフ場の一人予約サイトなどを運営するバリューゴルフ<3931>が、5年ぶりに企業と事業の買収に踏み切った。
ゴルフ観戦ツアーを中心とした旅行事業を手がけるエスプリ・ゴルフ(東京都武蔵野市)と、エスコム(熊本市)が運営するフリーペーパー「ゴルフマガジン九州」事業がそれで、ゴルフ旅行の質とサービスの向上につなげるとともに、九州地域での事業拡大が目的だ。
同社は輸入ゴルフクラブを販売するEC(電子商取引)事業を手がけており、海外での物価高や円安の影響で、価格優位性が失われ販売が落ち込んだことから、2024年1月期の業績を当初の予想から20.8%の減収、71.7%の営業減益に下方修正した。
EC事業の本格的な回復には時間がかかると見ており、2025年1月期も厳しい状況が見込まれる。新たに傘下に収める企業と事業はEC事業の穴を埋めることができるだろうか。
マスターズの観戦ツアーなどを実施
エスプリ・ゴルフは日本国内や世界各地の名門ゴルフ場と強い結び付きを持ち、四大メジャー大会の一つであるマスターズの観戦ツアーなど付加価値の高いゴルフツアーを手がけている。海外の評価も高く、日本の優秀なゴルフツアー会社として表彰実績もあるという。2024年2月にバリューゴルフの傘下に入る。
バリューゴルフのトラベル事業は、インバウンド(訪日客)需要の取り込みや、航空券販売に力を入れており、2024年1月期第3四半期時点では前年度比3.1%の減収ながら、営業利益は5.5倍に増加した。
エスプリ・ゴルフの売上高や営業利益などの詳細は公表されていないが、バリューゴルフの2025年1月期の売上高は、エスプリ・ゴルフ分が加わるため、増加に転じることが見込まれる。
地域に根差したきめ細かなサービスを展開
一方、ゴルフマガジン九州は、九州のゴルフ場に関する情報を掲載するフリーペーパーで、直近の売上高は2400万円だった。2024年4月にバリューゴルフの傘下に入る。
ゴルフマガジン九州で培った九州地域のゴルフ場との関係を活かしたゴルフ場予約システムの売り込みが可能になるほか、トラベル事業でも新たな旅行先や新たなユーザーの獲得を目指す計画だ。
さらに九州地域に根差したきめ細かなサービス展開が可能になり、この実績をモデルケースとして北海道や東北、中部、中国、四国などの他の地域でも同様の取り組みを展開する。
60%強の営業減益に
バリューゴルフは2024年1月期の売上高を10億円低い38億円(前年度比14.5%減)に、営業利益を2億1500万円低い8500万円(同64.2%減)に引き下げた。
輸入ゴルフクラブの販売を主力にしているEC事業の売上高が、2024年1月期第3四半期時点で、前年同期の70%ほどに留まり、期初の売り上げ予想と大きな開きが生じているためで、売り上げを確保するために値下げ販売を行った結果、利益面でも悪影響が生じているという。
新たに旅行事業とフリーペーパーが加わることで、業績にはフォロー(追い風)が吹くことは間違いない。どこまで伸ばすことができるだろうか。
文:M&A Online