桑田佳祐さんら多くのアーティストが所属する芸能プロダクション大手のアミューズ<4301>は「世界の果てまでイッテQ!」や「月曜から夜ふかし」などのテレビ番組の制作を手がける極東電視台(東京都港区)を子会社化する。
2019年にスポーツ選手のエージェント事業を展開する米Ortus Vaux Holdings(ロスアンゼルス)を子会社化して以来、およそ4年ぶりの企業買収となる。
所属アーティストとの相乗効果を生み出すことで業容の拡大に取り組む計画で、「中長期的に業績の向上に資する」とし、コロナ禍で落ち込んだ業績の回復を目指す考えだ。
2024年3月期の業績に与える影響は算定中としているものの、アーティストと映像制作の相性は良さそうなだけに、上振れの可能性はありそうだ。
2ケタの増収増益に
アミューズは2023年10月1日に、極東電視台の株式66%を取得する。取得価格は公表していない。
極東電視台の業績も明らかにしていないが、民間の信用調査会社によると2022年8月期の売上高は前年度比14.8%増の33億7400万円で、当期利益は同62.1%増の1億700万円と2ケタの増収増益を達成している。
極東電視台は1999年の設立で、日本テレビやテレビ朝日などの全国ネットワークの中心となる放送局を中心に映像制作事業を展開しており、「モヤモヤさまぁ~ず2」や「マツコ会議」などの番組も同社が手がけている。2013年にはロサンゼルスに、2016年には台北市に子会社を設立し、海外での事業展開にも力を入れている。
反動減で減収減益に
一方、アミューズは、桑田佳祐さんのほか福山雅治さんやSEKAI NO OWARI、Perfume、ポルノグラフィティ、BEGINなどの著名なタレントやグループが所属しているものの、コロナ禍でコンサートやイベントが開催できなかったことから業績が低迷。
2023年3月期は3期ぶりに増収増益を達成したが、2024年3月期は反動減で再び減収減益を避けられない状況にある。
そうした中、多彩なアーティストを抱える同社と、番組作成で豊富な実績と制作能力を持つ極東電視台の両社の強みを活かすことで、オリジナルコンテンツの質と量を高め、業績を好転できると判断した。
アーティストの活躍の場が広がるチャンス
アミューズは2024年3月期に売上高470億円(前年同度比10.5%減)、営業利益27億円(同14.4%減)を見込む。
近年、映像業界はテレビに加え、ネットフリックスやフールなどのサービスが拡大しており、視聴の形態が多様化している。
アミューズが映像コンテンツ制作能力を強化することで、所属アーティストの活躍の場が広がる可能性が大きく高まる。2024年3月期の業績への影響は少なくはなさそうだ。
文:M&A Online