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(画像=株式会社スリー・ディー・マトリックス)
永野 恵嗣(ながの けいじ)
株式会社スリー・ディー・マトリックス取締役会長
エクソン、ベイン・アンド・カンパニーを経て、ニュー・メディア・ジャパン・インコーポレイテッド日本における代表に就任。ベイン・アンド・カンパニーの東京事務所にてヴァイス・プレジデント。ベイン韓国事務所代表を4年間つとめる。ベインでは様々な業種のクライアントとのプロジェクトをリードしたが、通信、ハイテク、エンターテイメント、ヘルスケア業界での経験は特に豊富。また、複数の外資系企業の日本事業の立ち上げを支援し成功に導く。東京大学工学部卒(化学工業専攻)、コロンビア大学経営学修士(MBA)。
株式会社スリー・ディー・マトリックス
米国マサチューセッツ工科大学(MIT)発の技術「自己組織化ペプチド」をプラットフォームとして、幅広い医療製品を開発しております。外科領域においては、既に日米欧でそれぞれ複数の製品が幅広い診療科で使用されており、業界で唯一の臨床的価値を提供しております。また、難治性潰瘍、炎症性腸疾患などを対象とした創傷治癒や、がんを標的とした核酸医薬の徐放など、さらに大きなアンメットニーズに応えるべく開発を進めております。

目次

  1. 創業時からの事業変遷
  2. 過去にぶつかった壁とブレイクスルー(どう乗り越えたか)
  3. 思い描いている未来構想
  4. 次世代の経営者へメッセージ
  5. ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言 

創業時からの事業変遷

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(画像=株式会社スリー・ディー・マトリックス)

まずは創業から上場までの変遷をお話します。当社のコア技術である「自己組織化ペプチド技術」は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者により、1990年代に発明されました。 その後、2001年に米国マサチューセッツ工科大学の先生達がエンジェル投資家より資金を調達し、3-D Matrixがアメリカに設立されました。 2004年にアメリカの会社からサブライセンスを取得することで日本での事業が始まり、2007年に日本法人がアメリカ法人を吸収合併する形で日本法人が本社となり、その後、株式会社スリー・ディー・マトリックスとして2011年に日本のJASDAQ市場(現東証グロース市場)への上場を果たしました。 現在はグローバルに事業を展開し、社員の8割は日本人以外で構成されております。

当社は、外科医療・組織再生・DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)※1の3つの分野で自己組織化ペプチドというバイオマテリアルを使って事業を展開しています。 世の中のバイオマテリアルは、9割が生物由来製品で牛や豚、人間の血液など抽出した物質が使われています。これらは人体になじみやすいという利点がある反面、生物自身がもつウイルス等に感染するリスクがあります。 しかし、当社のバイオマテリアルはアミノ酸の合成物であるペプチドという物質で作られており、人体になじみやすく、かつウイルス感染のリスクも低いといった利点があるため安全性が高く、幅広い用途で使うことができます。

※1DDS(ドラッグデリバリーシステム) 必要な薬物を必要な部位で、必要な長さの時間、作用させるための技術をいう。

過去にぶつかった壁とブレイクスルー(どう乗り越えたか)

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経営者として、壁は常に想定しており、最良のシナリオと最悪のシナリオを考えて、事業を展開してきましたが、たまに想定外の事象が発生します。その中でも様々な壁にぶつかってきましたが、リーマンショックと日本国内での製造販売承認の取得はかなり苦戦しました。

特に後者において、製造販売を承認するPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)とのコミュニケーションがうまく進まず、日本で治験を行ったにもかかわらず承認が却下されてしまいました。しかし、日本で行った治験データを活用し、ヨーロッパを始めとする世界の多くの国で製品を販売できるCEマークを取得することができたのです。その後、日本でも再度販売申請のチャレンジを行い、2020年に承認を得ることができました。壁にぶつかったとしても諦めずに挑戦し続けたことで乗り越えることができたと考えています。

思い描いている未来構想

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バイオ業界はIT業界の技術の速さを例えるドッグイヤーとは異なり、長期的な視野を持たざるを得ません。製薬会社は世界的に見ても官僚型の企業が多いです。 なぜなら、結果がすぐに出ないため大きな失敗があった際に、経営責任を取ることが難しいからです。また、開発や営業活動に多額の資金が必要です。そのためアメリカや欧米では、大手製薬会社が小さな会社を買収し、集約化が進んでいます。 自社で開発を行わず、ベンチャー企業が成功したものを買収する形で事業を展開しているのです。

一方で、日本では製薬会社の中小企業が多く存在し、生き残りをかけて競争しています。ベンチャー企業が大手製薬会社に買収されることは、投資家にとっては良いことかもしれません。 しかし、買収されることで自分たちの思い通りに事業を展開できなくなります。そのため、今後もベンチャー企業として独立して事業を展開し、挑戦していきたいと考えています。

次世代の経営者へメッセージ

私がベンチャー企業の経営者として申し上げたいことは3つあります。1つ目は最初からグローバルに考えることです。日本の世界での経済の影響力は小さくなってきているため、最初からグローバルな視点を持つ必要があると考えています。 特に医療系では、欧米が最初で日本は最後という気持ちでビジネスに取り組むべきです。

2つ目は、ベンチャー企業は大企業と比較して人材が豊富でないという条件の元で事業を組み立て考えることです。優秀な人材だけでなくても、成功することができると考えています。 私はこれをプロ野球チームの楽天イーグルスから学びました。昔、阪急ブレーブスと大阪近鉄バファローズという野球チームが合併しました。これにより多くの選手が辞めさせられましたが、その選手を集めて楽天ゴールデンイーグルスが誕生しました。非常に厳しい状況でしたが、チームを率いた野村監督は基盤の構築を実現し、名将と呼ばれています。ベンチャー経営者も同様に考えるべきだと考えています。優秀な人材だけ揃えることは難しいです。打てるけど守れない、守れるけど打てないという選手を戦力として活かしていけるかが重要です。欠点を指摘するだけでなく、攻守をうまく使うことが必要だと考えています。

3つ目は、中長期的なビジョンを持つことです。独りよがりではなく客観的に期待されていることを見極め、想定内を広げるためにフレキシビリティを持つことが大切だと考えています。

ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言 

バイオベンチャーは短期で利益を出すことが難しいため、長期的な視点で投資していただける方にご支援していただきたいと考えています。 しかし当社には中長期的な競争力があると考えており、競争力があれば売上は後からついてくると考えております。このような点を加味してご判断いただけますと幸いです。

氏名
永野 恵嗣(ながの けいじ)
会社名
株式会社スリー・ディー・マトリックス
役職
取締役会長