主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2024年3月4日8時20分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼1日(金)の為替相場
(1):植田日銀総裁 物価目標実現に慎重な姿勢
(2):中国製造業は僅かに回復
(3):ユーロ圏CPIは鈍化
(4):ピルMPC委員「利下げはまだ先」
(5):ISM製造業景況指数は悪化
▼1日(金)の株・債券・商品市場
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:上値は重く下値も限られそう/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
1日(金)の為替相場
期間:1日(金)午前7時10分~2日(土)午前6時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):植田日銀総裁 物価目標実現に慎重な姿勢
日銀の植田総裁はG20財務相・中銀総裁会議後の記者会見で、2%の物価目標実現について「今のところまだそこまでには至っていない」と発言。その上で、賃金と物価の好循環を確認するには「春闘の動向は確認作業の中で一つの大きなポイント」とあらためて指摘した。前日に高田日銀審議委員が「物価目標の実現が見通せる状況になってきた」と述べたことで高まっていた3月のマイナス金利解除観測が後退した。
(2):中国製造業は僅かに回復
中国2月製造業PMIは49.1、同財新製造業PMIは50.9といずれも市場予想(49.0、50.7)を僅かに上回った。
(3):ユーロ圏CPIは鈍化
ユーロ圏2月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+2.6%と前月(+2.8%)から伸びが鈍化したが、市場予想(+2.5%)をやや上回った。エネルギーや食品などを除いたコアHICPも前年比+3.1%と、予想(+2.9%)ほど鈍化しなかった(前月+3.3%)。
(4):ピルMPC委員「利下げはまだ先」
英中銀(BOE)のチーフエコノミストを務めるピル金融政策委員会(MPC)委員は「利下げに賛成票を投じる前に、消費者物価指数の上昇の根底にある要素が、2%のインフレ目標の持続可能な達成に見合う水準に低下しているという一段と説得力のある証拠を確認する必要がある」とし「自分自身の基本シナリオでは、利下げはまだ先のことになる」と述べた。
(5):ISM製造業景況指数は悪化
米2月ISM製造業景況指数は47.8と市場予想(49.5)に反して前月(49.1)から低下した。仕入価格、新規受注、雇用などの主要構成指数が軒並み悪化しており、米製造業の回復力の鈍さが浮き彫りになった。
1日(金)の株・債券・商品市場
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:上値は重く下値も限られそう
1日のドル/円は約0.1%上昇して150.10円台で取引を終えた。植田日銀総裁が物価目標の達成が見通せる状況ではないと発言したことをきっかけに円売りが強まると一時150.70円台に上昇。しかし、米2月ISM製造業景況指数が予想外に悪化したことでドル売りに傾くと150.00円台へと上げ幅を縮小した。またしても年初来高値150.88円前後の上抜けに失敗した形で、市場はあらためて150円台後半の上値の重さを意識せざるを得ないだろう。
なお、週末2日に一部通信社が報じたところによると、日本政府はデフレ脱却を表明する方向で検討に入った模様だ。今月中旬に集中回答日を迎える春闘の動向などを踏まえ月内にも政府がデフレ脱却を宣言、その上で日銀が4月会合でマイナス金利を解除すると見るのが自然だろう。もっとも、日銀は仮にマイナス金利を解除してもその後の追加的な利上げにはきわめて慎重な姿勢を示していることから、日本の実質金利がマイナス圏にとどまる状況(物価上昇率より金利のほうが低い状態)に当分変化はなさそうだ。日銀のマイナス金利解除および解除観測は為替の円安基調を反転させるには明らかに力不足であろう。そうなると、ドル/円相場の当面の方向性はドルの動きがカギを握ることになる。
今週のNY市場では明日5日に米2月ISM非製造業景況指数、6日に米1月JOLTS求人件数とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言、8日に米2月雇用統計と、重要イベントが続く。本日のドル/円は先週1日の米2月ISM製造業景況指数が悪化したことによるドル売りの余韻と、日銀のマイナス金利解除観測で上値の重い展開が見込まれるものの、米国の重要イベントを前に下値も限られそうだ。
注目の経済指標:特になし
注目のイベント:フィラデルフィア連銀総裁発言
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1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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